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「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」

2009.2.9

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公開中の「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」。


監督:デヴィッド・フィンチャー 脚本:エリック・ロス 原作:フランシス・スコット・フィッツジェラルド 撮影:クラウディオ・ミランダ プロダクションデザイン:ドナルド・グレアム・バート 音楽:アレクサンドル・デプラ 衣装デザイン:ジャクリーン・ウェスト 出演:ブラッド・ピット 、ケイト・ブランシェット、タラジ・P・ヘンソン 、ティルダ・スウィントンほか 上映時間:167分 配給/2008米/ワーナー・ブラザース映画


老人として生を受け、年月の経過とともに若返っていく。そんな摩訶不思議な運命のもとに生まれたベンジャミン・バトン(ブラッド・ピット)。彼は老人施設で育てられたのちに家を出て、さまざまな人々と出会いながら人生経験を積む。顔中にあったシワがなくなったころ、ようやく愛する幼なじみのデイジー(ケイト・ブランシェット)と一緒になるが……。


巻き戻しの人生を宿命づけられた男の生涯を、抑制を利かせた筆致でていねいに描いた作品だ。ベンジャミンが残した手記をひも解く形態で進む物語は、インパクトのある設定に加え、主人公のモノローグ(独白)と、「年老いた赤ん坊」に代表される高度な映像技術も功を奏し、観客の興味と関心をまたたく間にスクリーンに惹き付ける。


ベンジャミンが抱える孤独やコンプレクッスは計り知れない。がしかし、彼はそうした気持ちをおくびにも出さない。ベンジャミンが人生において常に人々から愛され続けたのは、必要以上に現実を悲観しない彼の前向きな性格と、生来の平和主義のおかげだろう。


見かけや体(機能)の巻き戻しとは別に、精神だけは通常の人間と同じように成長していくベンジャミン。派手さはないが、人並みに好奇心や冒険心を持ち、人を愛し、労り、慈しみ、謙虚かつ誠実に人生を歩む。他人に媚びへつらうことも、あるいは自分を大きく見せることもない。そんな素直なベンジャミンの人間性に、多くの観客は共感を寄せるだろう。


終盤、自分の家族にまつわるエピソードのなかで彼が下した選択(それを黙認したデイジーの選択)には納得しがたいものがあるが、その「納得しがたさ」こそが、凡人が推察する「想像上の孤独」とベンジャミンやデイジーにしか分からない「真の孤独」との乖離であり、その距離感を最後まで保ち続けたことが、本作「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」の価値ではないだろうか。


映画的な構造が「フォレスト・ガンプ/一期一会」(94年)に似ているのは、脚本を「フォレスト・ガンプ/一期一会」の脚本家エリック・ロスが手がけているためだ。モノローグ、人生の一大絵巻、誠実な人生、現在と過去の往復……等々、類似点は少なくない。もちろん、だからといってこの作品の評価が下がるわけではない。むしろ氏のお家芸として評価するべきだろう。


監督は「セブン」(95年)や「ファイト・クラブ」(99年)で知られるデヴィッド・フィンチャー。本作「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」は、氏のこれまでの作品とは世界観を異にするものの、純度100%のファンタジーをリアリスティックに描写した手腕はお見事。彼の作品リストにまた新たな代表作が加わったことになる。


映像のすばらしさも忘れてはなるまい。VFXの技術を駆使した革新的な映像は、奇抜な原作の映画化を可能とし、“大人になった俳優が子供を演じる”という従来あり得なかったケースをブラッド・ピットに与えた。この映像に触れられるだけでも、劇場に足を運ぶ価値はある。


興味深い設定と人生を深く洞察する物語、それに革新的な映像……それらを堪能しているうちに167分はあっという間にすぎる。鑑賞後の余韻は、長く、静かだ。ベンジャミンのせつなくも豊かな人生に、自分自身の人生を重ね合わせたときに見えてくるものを大切にしたい。



お気に入り点数:90点/100点満点中

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コメントをどうぞ!

こんばんは♪

高得点ですね!
今までになかった作風で、フィンチャーっぽくないけど
代表作になりましたね。
アカデミー賞の結果が楽しみです♪

投稿者mig:2009年02月10日 22:01

>migさん

こんにちはー。
こういう作品も撮れるんだと、
フィンチャーの多才さを感じました。
ブラピとケイトもよかったですねー。
アカデミー賞受けしそうな作品ですよね(笑

投稿者やまたく:2009年02月11日 11:56

はじめまして!

すごく共感できるいい批評だと思いました。
最初はフィンチャーがファンタジックな作品を作るということに戸惑いがあったのですが。。。見終わってみたら、もう超満足でした。フィンチャーの映像に対する美学は保ったまま、さらに成熟した人生観をみせられたような。。。

確かに類似点は少なくないものの、個人的にフォレスト・ガンプとは全く違った良さを持った作品でした :)

投稿者Chappy:2009年02月22日 23:54

>Chappyさま

はじめまして。
コメントありがとうございます!

フィンチャーがこれまでとは異なるアプローチで、
じつに深みのある映画を撮りましたね。
映像の素晴らしさは言うまでもなく。
才能のある監督と脚本家が組むと、
さすがにいいモノができますね。
フィンチャーの次回作がまた楽しみになりました★

投稿者やまたく:2009年02月23日 23:13

やまたくさま

監督がどっかのインタビューで
「観客に誰にとっても人生はむずかしいものだ」
っていうのを感じて欲しいみたいなことを言ってましたけど、
もっとメッセージあるだろっ!て思いましたw
そうですね!次はアニメーションらしいですね。楽しみです。
ただ、2001年宇宙の旅のアーサー・C・クラーク原作の
映画の企画が流れたようなのは本当に残念です。。。
だらだらと長く書いてしまいすいません 汗
これからもちょくちょくのぞかせてもらいます :)

投稿者Chappy:2009年02月24日 02:06

>Chappyさま

こんにちはー。
アカデミー賞で作品賞や監督賞は取れませんでしたが、
まあ、それはそれ、ですね(笑。

アーサー・C・クラーク原作というのも、
見たいところでしたね。。。
なるほど、次回はアニメですか。
新境地にグングン突き進みますねー。
楽しみにしたいと思います。

つたないブログですが、
またぜひ遊びに来てくたさい★

投稿者やまたく:2009年02月25日 21:32

今晩は。初めまして。
この作品、拝見しました。

面白かったですね。
特殊メークもなかなか見所がありました。

ところで、味のある論評ですね。
「フォレスト・ガンプ/一期一会」なども見たくなってしまし、監督の事も知りたくなってきました。

これからも楽しみにしています。

投稿者WATA:2009年03月08日 21:00

>WATAさま

はじめまして。
コメントありがとうございます★

そうですね。VFXだけでなく、特殊メイクも、
すばらしかったと思います。
アカデミー賞での「メイクアップ賞」受賞は、
誰も文句のないところでしょうね。

「フォレスト・ガンプ」もオススメですし、
フィンチャー監督のほかの作品も、
ぜひご覧になってみてください。

投稿者やまたく:2009年03月09日 02:08




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