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「敵こそ、我が友 ~戦犯クラウス・バルビーの3つの人生~」

2008.7.22

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7月26日より公開される「敵こそ、我が友 ~戦犯クラウス・バルビーの3つの人生~」の試写。


監督:ケヴィン・マクドナルド ナレーション:アンドレ・デュソリエ プロデューサー:リタ・ダゲール 上映時間:90分 配給:2007仏、英/バップ、ロングライド


ナチス・ドイツの元親衛隊保安部(ゲシュポタ)に所属し、占領下のフランスにおいて、ユダヤ人やレジスタンスの虐殺、殺戮、強制収容所への移送などの蛮行に手を染めた人物、クラウス・バルビーについてのドキュメンタリーだ。


バルビーを知る人、あるいは研究者たちのインタビューをもとに構成された本作は、圧倒的な量の証言をもともに、バルビーという人物像を多面的に浮かび上がらせることで、ドキュメンタリーとして一定の成果を得ている。


“リヨンの精肉業者(ブッチャー)”と呼ばれた史上まれに見る非情な虐殺者は、一方で、娘から「とても優しくて思いやりがあった」と言われる人物でもある。その両者の乖離が突きつけるものは何なのか? じわじわとフィルムのなかに引き込まれる。


最大の目玉は、怪物・バルビーが、第二次世界大戦後も生き延び、その手腕を発揮した点にある。戦後、反共産主義の工作員としてCIC(アメリカ陸軍情報部隊)に雇われ、南米のボリビアに逃亡したのちは、ボリビアの軍事政権誕生の立役者として暗躍。さらに、チェ・ゲバラの暗殺計画をも立案したという。


立派な戦犯でありながら、彼は大戦後になぜ裁きを免れたのか? 大きな疑問が頭をもたげる。


しだいに見えてくるのが、CICが、西側諸国における左派政権の誕生を阻止すべく、バルビーに諜報活動させていたという事実だ。この事実が浮き彫りにするものは、「国家」や「軍」と呼ばれる枠組みが死守してやまない利己主義と傲慢さにほかならない。人道やモラルを無視した、まさしく政治的謀略である。


かつての敵国の戦犯を歩兵に仕立て上げ、国家間の主導権争いでの優位を勝ち取ろうという魂胆。そのヘドが出そうなほどしたたかな戦略からは、人間を“屁”とも思わない国家の実体が垣間見られる。そしてまた、「敵こそ、我が友」という矛盾に満ちた、皮肉に満ちた、批判に満ちたこのタイトルの巧さに思わずひざを打ちそうになる。


ドキュメンタリーには、知られざる事実を浮き彫りにする一方で、“フィクションではない”というスタンスに立脚している点において、多分に危うさやプロパガンダを秘めている可能性もあり、その読み取りには十分に注意する必要がある。


本作ももちろんその例外ではないが、たとえば、バルビーの手で殺められた被害者家族のインタビューなどは、その一言一句に計り知れない重みがあり、そこには読み取る読み取らないを超えた、記録しておくべき歴史証言の重要性を感じる。


ただし、バルビーをどれだけ怪物視し、人間離れした残虐性を呪おうとも、その怪物を作り出した戦争や、その戦争を生み出し、あるいは怪物を都合良く利用した巨大な組織があるということは、知っておくべきなのかもしれない。そのことは、バルビーという人間の残虐性について知ることとはまた別に、本作「敵こそ、我が友」が力強くメッセージを送っている点である。


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