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「憐 -Ren-」

2008.8.1

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公開中の「憐 -Ren-」を鑑賞(試写)。


監督:堀禎一 原作:水口敬文著「憐 Ren」(角川スニーカー文庫・刊) 出演:岡本玲、馬場徹、中山麻聖ほか 上映時間:101分 配給:2008日/ベドラム


人間を“有用”と“不要”に分ける500年後の未来から、“不要”であるために「過去流しの刑」で現代に送られてきた少女、憐(れん)。憐は学校と自宅以外では誰にも認識されない「孤独の刑」も与えられていた。しかしクラスメイトの鳴瀬玲人だけは、なぜか憐を認識していた……。


バリバリのB級SFかと思いきや、SFはあくまでも物語の設置・背景にすぎず、どちらかというと、高校生たちの日常を淡々と描いた群像青春記的な作品だ。


秘密を持つ主人公の憐と、憐に思いを寄せる男友達と、秘密のカギを握る同級生。彼らは、未来仕様の異星人やエイリアンに変貌することも、逆に異星人やエイリアンから侵略を受けることもなく(笑)、現代に生きる高校生として、笑い、悩み、葛藤する。学園ものにありがちな対立軸などを作らずに、ほのぼのとした友情にフォーカスしたあたりは、本作「憐 -Ren-」の良さといえるだろう。


ただし、残念ながら本作「憐 -Ren-」は、SFとしての面白さを求める観客の期待には、ほとんど応えられていない。憐のセリフで語られる話以外に、500年後の未来や主人公が置かれた境遇を理解する手だてがないことが大きな原因だが、そもそも「過去流しの刑」や「孤独の刑」の意図が漠然としすぎているし、その重さを伝えきれていないことも問題だろう。


せめて、<人間を“有用”と“不要”に分ける><“不要”な人を「過去流しの刑」にする>といった肝要な背景については、もう少し観客のイメージを刺激する工夫が必要だったように思う。具体的な映像にしないまでも。


一方、堀監督の演出と映像には、非凡さが感じられる。なかでも、折につけ挟まれるクラスの仲間でバスケットボールを楽しむのシーンは、ボールという(どこに転がるか分からないという)不確定要素を十分に生かした絵作りが、なかなかおもしろい。全編に漂う叙情的な雰囲気も、この監督ならではのものだろう。


また、ラスト間近の10分以上ににおよぶ長回しは、映画の醍醐味を体現させるほか、観客の感情を切らないという意味での効果も挙げている。この長回しのシーンで、観客の胸をすくような「謎の解明」や「秘密の暴露」があったなら、あるいは、この作品に対する評価はもう少し高まったかもしれないが。


テーマもドラマもトーンもおしなべて地味なうえに、思わせぶりなSFが背景に広がる作品につき、万人にはオススメできないが、原作やキャストの熱狂的なファンにとっては、一見の価値はあるだろう。ちなみに、キャストのキーマン鳴瀬玲人役の馬場徹だ。存在感と魅力に欠ける主人公を絶妙にサポートしながら、クールなルックスと演技で物語を引き締めている。


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