映画批評「Dr.パルナサスの鏡」
2010.1.26 映画批評

監督・製作・脚本:テリー・ギリアム 出演:ヒース・レジャー、クリストファー・プラマー リリー・コール、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレル、トム・ウェイツほか 上映時間/124分・PG12 2009英・カナダ/ショウゲート
ヒース・レジャーの遺作になったことに加え、撮影途中で急逝したヒースの代りに、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルという3人の人気俳優が撮影に参加。誰もが予期しないところで注目を集めてしまったテリー・ギリアム監督の最新作。ヒースの急逝で万事休すかと思いきや、幸いにも「Dr.パルナサスの鏡」は、「現実世界」と「鏡の向こうの異世界」というふたつの世界をもつ物語で、ヒースが亡くなったのは「現実世界」の撮影を終えた直後だったという。
何が幸いかというと、ギリアム監督が、「鏡の向こうの異世界」ではヒース扮する男の容姿が毎回変化するというアイデアを思いついたのだ。かくして先に挙げた3人がヒースの代役として抜擢された。代役を探す際にギリアム監督がこだわったのは、「ヒースのことを心から理解している彼の親友を選ぶ」という点。トム・クルーズの申し出を断るという恐るべきエピソードが残っているのは、そのためだ。
2007年のロンドン。パルナサス博士(クリストファー・ブラマー)率いる旅芸人の一座は、舞台にも形を変えるオンボロの馬車に寝泊まりしていた。一座の出し物「イマジナリウム」の目玉は、舞台上に置かれた鏡をくぐり抜けると、その人の欲望や願望を形にした幻想世界味わえるというもの。
ある日一座は、橋で宙吊りになっていた謎の男トニー(ヒース・レジャー)を助ける。一座に加わったトニーに、博士の娘ヴァレンティナ(リリー・コール)は思いを寄せ始める。一方で、博士にはある秘密があった。自身の「不死」と引き換えに、悪魔(トム・ウェイツ)に娘を差し出す約束をしていたのだ。約束の期日となるヴァレンティナの16歳の誕生日まであと3日に迫っていた……。
博士の「不死」の秘密。トニーの過去の秘密。大きなふたつの秘密に加え、トニーとヴァレンティナにまつわる三角関係、博士とヴァレンティナの親子関係など、エピソードを幾重にも盛り込んだごった煮の物語は、鏡をくぐり抜けた人たちが遭遇する幻想世界の描写が極め付けだ。鏡の向こう側に広がるのは、「善」も「悪」も先鋭化されたデフォルメの世界。ユーモアと皮肉、それにバカバカしさの混在したおもちゃ箱からは、何が飛び出してくるのか予測不能。そこにこの映画のおもしろさがある。
中盤以降は、現実と幻想がオーバーラップし、それぞれのエピソードが風雲急を告げる。浮き沈みの激しいドラマと奇想天外なビジュアルが次々と押し寄せてくるため、エンドロールを迎えるころには、いくつもの奇妙な夢を見た翌朝のような気だるさに包まれた。めくるめく夢の世界も長居をすればそれが現実……ということか。そうそう、ヒースにデップにジュードにコリンもいいが、ギミックを満載した見世物小屋風の巨大馬車もこの映画では主演級の存在。一度見たら忘れられないアイキャッチである。
ギリアム監督の変態的な想像力に改めて脱帽させられる本作「Dr.パルナサスの鏡」は、やんわりと忍ばせた「似て非なる“欲望”と“願望”」というテーマ性もなかなかに深みがある。論理性微量の不合理ファンタジーにつき、万人にはオススメできないが、ギリアム監督やヒースのファンは必見だろう。「不死」はもとより「長寿」とも取り引きをせずに、限りある人生を全うした故人の冥福を祈りたい。
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2010年02月11日 19:50
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2010年02月20日 08:59
>> <&MTPingTitle$> [よしなしごと]
ヒース・レジャーが亡くなって完成が危ぶまれていたDr.パルナサスの鏡を観てきました。
2010年03月09日 01:08
