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「プライスレス 素敵な恋の見つけ方」

2008.2.8

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3月8日より公開される「プライスレス 素敵な恋の見つけ方」の試写。


監督:ピエール・サルヴァドーリ 脚本:ピエール・サルヴァドーリ、ブノワ・グラファン 出演:オドレイ・トトゥ、ガド・エルマレ、マリー=クリスティーヌ・アダムほか 上映時間:105分 配給:2006仏/シネカノン


ジャンは高級ホテルで働くお人よしのウェイター。ある夜、彼を億万長者と勘違いした美女イレーヌに誘惑されて夢のような一夜をすごすが、ジャンの正体を知った彼女は姿を消す。イレーヌのことが忘れられないジャンは、彼女のことを追いかけるが……。


物事の価値をお金でしか計れない哀しい(イタイ?)女と、そんな女に惚れる男のラブコメディ。男はひとまず置いておくとして、女の打算極まりない玉の輿狙いは、見ていて“楽しい”or“不愉快”の賛否が分かれそうだ(私がどちらの立場かは……読んでいただければ分かる)。


金持ち男のもとを渡り歩くイレーヌ。彼女はたしかに若くて美人だが、お金以外に何ら価値基準を持ち合わせていない哀しい女だ。だがもっと哀しいのは、そんな玉の輿狙いに、まんまと引っかかる男たちだ。物語だから? いやいや、現実だってそんなものなのかもしれない。女にとって美貌は武器であり、男にとっては魔力のようなものだから……。


もちろん、だとしても、打算だけの関係、愛情の欠如した関係は、いつしかメッキがはがれ、本人がその代償を支払うことになる。それが世の宿命というものだろう。


ところが、本作『プライスレス』はイレーヌに寛容だ。彼女の無節操さにたいしたお灸も据えなければ、そんな女の“哀しさ”や“せつなさ”、あるいは“イタさ”も十分に表現しきれていない。かといって、イレーヌに小悪魔として圧倒的なインパクトやカリスマ性があるわけでもなく、どうにも“ふざけた女”にしか見えない。ましてやそんな女に惹かれ続ける男(ジャン)には、シンパシーすら感じない。


第一、彼女のように「信じられるのはお金だけ!」という考えに基づいて生きることは、この作品に描かれているより、もっと切実で、もっと自虐的で、もっとリスキーなことだと思う。ジャンにしても同じである。彼のイレーヌに対する寛容さや現実感の欠如は、本人にもっと重大で深刻な問題を突きつけるのではないだろうか? そういう意味でも、この作品は掘り下げが甘く、主人公ふたりに与える試練がどうにも手ぬるすぎる(オチの方向性を含めて)。


もちろん、彼らのキャラクターがうまく「笑い」に変換されていればいいのだが、間合いや歯切れを含め、コメディやユーモアのセンスも常時低空飛行。そのうえ、世界があまりに都合のいい自己中心的なエリアで完結しすぎており、そこから普遍や本質へとつながる示唆も見あたらない。せめて階級社会に対してたっぷりと風刺をきかせるとか、あるいは逆に、おバカなドタバタ劇に持ち込むとか、確固たる方向性を示してくれていたら、少しは救われたかもしれないが、何もかもが生煮え状態。そのクセ軽妙洒脱を気取っているからタチが悪い。


唯一の見どころといえば、高級ホテルのスイートや、ゴージャスなドレス&ジュエリー……等のビジュアル面だが、そんな小ワザが生きてくるのも、魅力ある登場人物を良質のシナリオのなかに放り込んでこそだろう。「気軽に楽しめるフレンチ・ラブコメディ!」と口に出すのさえ怖いくらい、何も残らない作品。少なくとも“プライスレス(値段が付けられないほど価値のあるモノ、の意)”という言葉は、自身の作品の評価としては適切ではないだろう。


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