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「告発のとき」

2008.6.27

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明日より公開される「告発のとき」の試写。


監督・製作・脚本:ポール・ハギス 出演:トミー・リー・ジョーンズ、シャーリーズ・セロン、スーザン・サランドン、ジェームズ・フランコ、ジョシュ・ブローリンほか 上映時間:121分・PG-12 配給:2007米/ムービーアイ


戦地のイラクから帰還した若き兵士マイクが行方不明となる。その知らせを受けた元軍人であるマイクの父は、地元の女刑事エミリーの協力を得ながら、みずから息子の足取りをたどる。が、調査を進めるに連れて、彼は、残酷な真実を知ることになる……。


「ミリオンダラー・ベイビー」(脚本)や「クラッシュ」(監督・脚本)で、人間の内面に深く切り込んだポール・ハギスの待望の新作だ。


事実をもとにして作られたというこの作品は、さすがにポール・ハギスらしく、多面的な構造と示唆を見る者に与えてくれる。表向きは謎解きの形態を取っているものの、謎めいた犯人探しは、この作品がもつ魅力のひとつにすぎない。


マイクがイラクで撮影した映像を挟みながら徐々に明らかにされていくのは、人間という生き物のどうしようもない弱さともろさだ。もちろん、その弱さやもろさを引き出したのは、戦争という現実にほかならないのだろうが、その原因自体をポール・ハギスという辣腕監督は、決して真正面から批判しようとはしない。映像とドラマが喚起させるもの以上のメッセージは、確信犯的に伏せられている。


はじめは息子を擁護していた父が、後半、激高して然りの場面で黙り込むくだりは、この映画の最重要シーンといえる。この心理状態に至るまでに、彼が息子について、何を知り、何を感じたのか、それを読み取ることが、この作品の醍醐味である。そこには、どうにもすることのできない戦争の現実があり、人間という生き物に隠された憐れむべき悪意がある。


戦争に対する大義名分がいかに主観的正義であれ、戦争はもろくも(一見頑健そうな)兵士たちの魂を撃ち抜く。それも、二度と再生不能なまでに。そんな戦争を、太平洋戦争以降も断続的に続けているアメリカにとって、この作品がもつ意味はとてつもなく大きいはずだ。と同時に、昨今、自国の恥部をさらすような作品がアメリカ内部で作られ続けていることは、アメリカという国が活発な新陳代謝をのぞんでいる証左といえよう。


息子に対する気持ちの微妙な移ろいを好演したトミー・リー・ジョーンズはもちろんのこと、一見正常そうで異常な兵士を演じた俳優たちの好演ぶりも見逃せない。そして、物語としては、差別的な扱いを受けながらも正義感を貫き続ける女性刑事を演じたシャーリーズ・セロンが、全編にメリハリとスポード感を与えている。


この謎解きに解決は訪れる。だが、本質的なことは何一つ解決されずじまいだ。このジレンマは、現在のアメリカはもちろんのこと、あまたの戦争や紛争を抱える現代社会の問題点と直結している。


反戦映画かといえば、もちろんその要素は含まれているが、それだけにとどまらず、親子愛や人間のとらえどころのない心理までをも深く見つめた本作「告発のとき」。この作品から聴こえてくるのは、ダレの叫び声だろうか? 劇中における象徴的なエピソードである“捕虜の傷口”にまつわる罪とは、ダレがかぶるべきものなのだろうか? 本作に対する思索は、鑑賞後も断続的に続く。着地点を用意しないポール・ハギスらしさがよく出た傑作だ。


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