「おくりびと」
2008.9.16

公開中の「
監督:滝田洋二郎 製作総指揮:間瀬泰宏 脚本:小山薫堂 撮影:浜田毅 音楽:久石譲 編集:川島章正 出演:本木雅弘、広末涼子、山崎努、余貴美子、吉行和子、笹野高史ほか 上映時間:130分 配給:2008日/松竹
所属していた楽団が解散することになり、妻と故郷の山形に戻ったチェロ弾きの大悟(本木雅弘)。旅行代理店かと思って面接に足を運んだ会社に採用されるも、実際の仕事は、遺体を棺に納めるというものだった。しかも初仕事が、腐敗が進んだ老人の遺体だったため……。
着眼点がすばらしい。「納棺師(のうかんし)」。日本には昔からある職業なのだろうが、その実態を知る人はほとんどいない。そうした影の薄い職業にスポットライトを当て、なおかつ、のっけからその仕事ぶりを詳細に描く本作に、観客の多くは一瞬にしてのめり込むことだろう。
納棺のやり方は、地域によって大きく異なるだろうし、現代社会において、その手法はより多様化・簡略化されているはず。それだけに、本作で描かれる納棺の儀式は見物である。なかでも、その所作の一つひとつに、日本人の——死生観ともまた違った——死者に対する“愛情”が感じられるところに心惹かれる。こうした納棺の儀式が、世界でどのような感慨をもって受け止められるのか、たいへん興味深いところだ。
遺族の気持ちをくみ取ることが求められる難しい仕事であるにもかかわらず、「人の死を扱う職業(ビジネス)=いかがわしい・けがらわしい」というイメージが日本の風土には根付いており、主人公の大悟は、周囲の冷ややかな視線にさらされる。とりわけ、妻が夫(大悟)の職業を知った際に放った罵声は、ただでさえジレンマを抱える「納棺師」にとって、まさしく“泣きっ面に蜂”だ。
ただし、そうした冷ややかな視線とは別に、スクリーンを見つめる観客は、「納棺師」という仕事にある種の崇高さを感じることだろう。遺体の全身を清め、装束を着付けし、化粧を施し、表情を整える……。死んだ人間を美しくよみがえらせてからあの世に送り出す。その行為のなんと尊いことよ。納棺後に遺族の口をついて出る感謝の言葉は、「納棺師」にとって冥利にほかならない。
後半にきてグンと重みを増す“石文(いしぶみ)”をキーワードにした大悟と父の物語は、あまりにベタなお涙ちょうだいドラマである。がしがし、その行き着く先を、しかとテーマの「納棺師」に結びつけたことにより、観客は“深い余韻”を手にすることになる。
“死”に対する静ひつな感慨を呼び起こしながらも、随所にユーモアを添加したことにより、本作「おくりびと」は、取り扱う題材からイメージされる辛気くささを回避し、要所要所で、客席にリラックスした笑いを届ける。 その一方で、チェロの旋律が心地よいBGMや、厳しくも美しい東北の風景を織り交ぜながら表現される世界は、日本的な情緒にあふれ、静かな感動を誘う。
知られざる「納棺師」の世界を正攻法な演出で紡いだ滝田監督の手腕、脇役にまで演技派をズラリと揃えたキャスティング、そして、観る者の琴線に触れる久石譲の音楽。それらがシルクのように滑らかに絡み合ったこの秀作は、モントリオール映画祭でグランプリを獲得。日本を代表してアカデミー賞の最優秀外国語映画賞部門へ出品されるという。
トラックバック
トラックバックURL:
http://yamaguchi-takuro.com/mt/mt-tb.cgi/429
このエントリーへのトラックバック:
>> <&MTPingTitle$> [MESCALINE DRIVE]
最盛期が嘘だったかのように一時期はその消息がつかめなかった広末涼子だが、最近はドラマに映画にCMにと、活動の場を広く求めているようだ。女性は離婚後に仕事に...
2008年09月17日 15:25
>> <&MTPingTitle$> [京の昼寝〜♪]
□作品オフィシャルサイト 「おくりびと」□監督 滝田洋二郎 □脚本 小山薫堂 □キャスト 本木雅弘、広末涼子、山崎努、余貴美子、杉本哲太、吉行和子、笹野高...
2008年09月22日 21:26
>> <&MTPingTitle$> [読書・映画・ドラマetc覚書(アメブロ版)]
モントリオール国際映画祭グランプリのこの作品、予告編を見て、見たいと思い、見に行ってきた。 結論から言うと…見てよかった。すごく良い映画だったと...
2008年10月15日 19:50
>> <&MTPingTitle$> [新!やさぐれ日記]
▼動機 連れてってと言われたので ▼感想 美しき日本の様式美 ▼満足度 ★★★★★☆☆ なかなか ▼あらすじ 楽団の解散でチェロ奏者の夢...
2008年10月24日 22:11
>> <&MTPingTitle$> [よしなしごと]
Goo映画では88点(記事作成時)という、高評価な映画、おくりびとを観てきました。
2008年11月19日 03:29
>> <&MTPingTitle$> [京都・先斗町から芸能人、有名人を占う]
おくりびと アカデミーショー受賞 おくりびと」はオーケストラをリストラされた チェロ奏者(本木雅弘)が、妻とともに田舎に帰り、 遺体を棺に納める「納棺師...
2009年02月25日 10:48
>> <&MTPingTitle$> [にき☆ろぐ]
こちらずっと気になっていた作品なかなか見ることが出来なかったんですがやっと映画館で見ることができました予備知識はアカデミーをとったことと納棺師のお話という...
2009年03月02日 20:22
>> <&MTPingTitle$> [サーカスな日々]
ひょんなことから遺体を棺に納める“納棺師”となった男が、仕事を通して触れた人間模様や上司の影響を受けながら成長していく姿を描いた感動作。監督には『壬生義士...
2009年04月05日 13:58
>> <&MTPingTitle$> [別館ヒガシ日記]
2010年01月10日 10:06
コメントをどうぞ!
納棺師、初めて知りました。
葬儀屋さんとひとくくりにしてましたから…。
人間の死を仕事としてしていくことの難しさってありますね。
勉強になったのと同時に家族と一緒に見たくなった記事でした。
ありがとうございます。
投稿者ruto:2008年09月16日 23:10
rutoさん、こんにちはー。
納棺師という仕事はボクも初めて知りました。
主人公がもっくんなのですが、
彼の遺体を扱う所作がとても美しくて、
スクリーンに引き込まれます。
笑えて、せつなくて、余韻が残る、
とてもいい映画なので、
ぜひ身内の方といかれるといいと思います!
投稿者やまたく:2008年09月17日 09:11
ごぶさたです。いつも読んでまっせー。
これおもろそーですね、久しぶりに見にいこーかなあ。
余貴美子も好きやし。
投稿者つちだ:2008年09月18日 23:45
>つちださん、ごぶさたしてます!
この作品、実にいい味出してますので、
自信をもってオススメしますよー。
余貴美子、いい女優さんですよね。
クセのある役どころが、とくに。
記事には名前載せませんでしたが、
山田辰夫がめっちゃいい演技してます。
ぜひ注目してみてください★
投稿者やまたく:2008年09月19日 15:05
拓郎さんお久しぶりです。
今日「おくりびと」観てきたのでいろいろ読んでたらココを発見しました。
僕、地元なんですよ。ロケ地の庄内。
なんか平日にかかわらず年配の方で満員でした。
後半はみんなススリ泣いてましたけど。
僕も都会でしていた仕事を辞め、嫁さん連れて山形帰って全く違う仕事ついたりと設定かぶりまくりでなんか人ごととは思えない映画でした。
投稿者カズ:2008年09月26日 01:10
>カズさま……って、カズかいな!
元気してる?
たしかにカズの境遇とダブる映画だね。
こっちのアスファルトジャングル(言い回し古いね)からすると、
庄内の風景とか人とか、なんだかいいなあ、
とか思っちゃうんだけど、
映画の主人公同様、
住んだら住んだで、いろいろとあるんだろうね。
いいことも悪いことも……。
まあ、家族で仲良く暮らせて、
そのうえ仕事に誇りがもてたら、
それにこしたことないよねー。
まさかこんなカタチで再会するとは思ってなかったよ!
書き込んでくれてあんがとね。
お互いカラダだけは気をつけていきましょう。
山形は酒がうまいだろうけど。。。(笑
投稿者やまたく:2008年09月26日 02:26
あーい!
ちなみに僕は「旅立ちのお手伝い」ではなく
「旅のお出迎え」産婦人科病院に勤めてます。
今日「鶴乃湯」の前通ってみました。
いつかこっち方面きたらいっしょにフロ入って一杯やりましょうね。
投稿者カズ:2008年09月26日 17:54
ういーす!
へえー、まさに旅のお出迎えだ!
すばらしい仕事じゃないの。
それはそれで映画になりそうだし(笑
山形で一杯。。。いい感じやねー、それ。
そのときは遠慮なく連絡させてもらうよ!
鶴乃湯→日本酒コースでお願いね★
投稿者やまたく:2008年09月27日 00:17
なかなか見に行けなかったんですが、やっとこさ見てきたよ。
良い味出してる言い映画でした、山形の景色も役者も、よかったよかった。チェロのBGMも効果的でしたね。
投稿者つちだ:2008年10月16日 13:31
>つちださん
こんにちはー。
目のつけ所がいい映画ですよね。
ユーモアもきいてますし。
山形あたりの風景&四季は美しいですよねー。
投稿者やまたく:2008年10月17日 09:27
