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「新宿インシデント」

2009.5.11

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公開中の「新宿インシデント」。


監督・脚本:イー・トンシン 製作総指揮:ジャッキー・チェン 脚本:チュン・ティンナム 撮影:北信康 出演:ジャッキー・チェン、竹中直人、ダニエル・ウー、シュー・ジンレイ、加藤雅也、ファン・ビンビン、峰岸徹ほか 上映時間:119分・R-15 配給:2009香/ショウゲート


ゆくえが分からなくなった恋人シュシュ(シュー・ジンレイ)を探すために、日本へ密入国した中国人の鉄頭(ャッキー・チェン)は、新宿歌舞伎町で同じく不法滞在する同胞たちと一緒にアジト暮らしを始める。不法滞在者ゆえに精神的にも経済的にも苦しい状況を強いらるが、ある日、ヤクザの江口(加藤雅也)の横にいた美女に目を奪われる。なんと、その美女は鉄頭が探していたシュシュだった……。


密入国してきた中国人たちが、新宿歌舞伎町の裏社会で台頭していく様子を描いた物語。日本が舞台にもかかわらず、セリフの半分が中国語という異様さが、この映画を独特な雰囲気に染め上げている。


下水道の「どぶさらい」から始まった彼らの日本での生活は、主人公の鉄頭がヒットマンとして大きな仕事を成し遂げて以降、大きく変化する。ただし、裏社会における「順調」は、「破滅への序章」にほかならない。事実、あれほど団結していた同胞のコミュニティにも、内部抗争という魔の手が忍び寄る。この映画は、優しく仲間思いの鉄頭でさえ裏切りの憂き目にあう、そうした姿を通じて、「権力」というものの素顔を浮き彫りにする。


群像ノワールではなく、鉄頭というひとりの男の物語でもある。誰よりも実直に生きてきた鉄頭が、なにゆえ裏社会で暗躍しなければならなかったのか? そこから見えてくるのは、不法滞在者ゆえの物悲しい運命だ。


もう一点見逃せないのが、鉄頭の弟分の阿傑の波瀾万丈の物語だ。もともと肝っ玉の小さい優男が、あるむごたらしい事件に巻き込まれてからというもの、悪に心を売り飛ばすようになる。ふり幅の広い役どころを存在感たっぷりに乗りこなしたダニエル・ウーの怪演は、ある意味、“悪キャラのジャッキー”を食ってしまっている。


肝心のジャッキーはというと、自身のお家芸であるユーモアを封印。ほとんど笑いを挟むことなく、寡黙な人柄の鉄頭をシリアスに好演。ところが、ジャッキーが好演すればするほど、いつもの「彼らしさ」が恋しくなるから不思議だ。この作品を通じて、彼の人なつっこさとユーモアの偉大さを改めて思い知らされた、と書いては、皮肉がすぎるだろうか。アクションひとつをとっても、そのなかに常にユーモアを忍ばせるのがジャッキー流。この映画では、そうした彼の十八番芸が見られず、どこか物足りなさを感じる。 


歌舞伎町の裏社会で中国人がのし上がるというドラマ設定こそ興味深いものの、裏社会の抗争劇としても、鉄頭の悲運の物語としても、ひとりの女性を追い続けるロマンスとしても、本作「新宿インシデント」は、おしなべて新鮮味に欠ける。終盤にけっこうなボリュームのアクションもあるが、それすらパっとしないのは、ジャッキーいわく「撮影現場でのアクション指導でいえば、(普段は)少なくとも半分は自分の考えを入れる。ところが『新宿インシデント』では多分15%くらい。ひょっとしたら10%くらいかもしれない」ということが影響しているのかもしれない。


新境地を開拓しようというジャッキーの気概は買うが、その気概が作品的には裏目に出たと言わざるを得ない。



お気に入り点数:55点/100点満点中

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