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「ディパーテッド」

2007.2.21

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公開中の映画「ディパーテッド」を観賞。


監督はマーティン・スコセッシ。出演はレオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン、ジャック・ニコルソンほか。


香港映画の名作「インファナル・アフェア」のリメイクである。脚本の基盤はほぼそのままに、表向きの装いをアメリカナイズドさせている。


単刀直入に言ってしまえば、香港映画はアメリカではヒットしない、ということなのだろう。香港映画だけでなく、日本映画とて同じである。周防監督の「Shall We ダンス?」も、脚本をほぼそのままにリメイクされた経緯がある。


つまり、アメリカ人はハリウッドで製作した作品でなければ映画を見たがらない、ということ。


それがアメリカ人の傲慢さとみるべきなのか、ハリウッドの商才の豊かさというべきなのか、単にオリジナルのパワー不足というべきなのか、そのあたりは推し量りかねるが。


いずれにせよ、「ディパーテッド」は、「Shall we dance」同様、オリジナル以上に魅力があるものではなかった。


巧いことアメリカナイズドさせたな、というくらいなものである。


少し前まで日本人は「模倣は巧いが独創性がない」と言われていたが、今やその言葉はアメリカの創造の発信地であるハリウッドにも言えることなのかもしれない。


そうした前置きはさておき、「ディパーテッド」である。


「インファナル・アフェア」を何度か見直していることもあり、今回は、筋を知っているミュージカルを見るような気分でスクリーンを見つめていた。


それでもなお、この作品のプロットにはうならされる。警察がマフィアに放った潜入捜査官と、マフィアが警察に放ったスパイ。その両者が複雑にからみ合うプロットは、登場人物と観客の両者を大いに翻弄し、疑心暗鬼に陥らせる。


ただし、決定的にスクリーンの色彩(雰囲気)が違う。「インファナル・アフェア」がモノトーンだとしたら、「ディパーテッド」には色がついている。いかにもアメリカ人好みしそうなカラフルな色が。それは単にアジアとアメリカの違いでありながらも、(善し悪しは別にせよ)アメリカでアジア映画が受け入れられない理由のひとつなのかもしれない。


「インファナル・アフェア」よりも、登場人物のキャラクターを強めに打ち出している点も、本作とオリジナルの相違点。なかでもマフィアの親玉(コイツが悪いんだなあ)を演じるジャック・ニコルソンは、主人公のふたりを凌駕するほど強烈なオーラを放ち、スクリーンに一種独特な緊張感を与えている。


思うに、ジャックの役どころは、マフィアと警察の双方につながる唯一の接点。その重要なセクションに存在感のあるベテランを配したことは、主人公ふたりの演技力(気迫?)を引き出す意味においても、有益だったのではないだろうか?


とはいえ、作品の出来栄えとしては、やはりオリジナルに軍配を上げたい。


「インファナル・アフェア」の冒頭15分というのは、何がなんだかワケが分からない話になっている。誰が敵で誰が味方なのか? そして一体何が行われているのか? “?”の連続である。一方の「ディパーテッド」は、冒頭からストーリーがスッキリと整理されていて、理解しやすいようにまとめられている。


つまり、キャラクターにしろストーリーにしろ、リメイク作品のほうが分かりやすくなっているのである。それが逆に、渾沌とした複雑なプロットを武器とするオリジナルの魅力を弱めている気がした。


また、重要な局面で携帯電話(メールを含む)を多用して味方と連絡取りをするなど、「ディパーテッド」では、主人公ふたりの潜入に生ぬるさが感じられた。「インファナル・アフェア」で採用されていた“モールス信号”が、証拠を残さない最高のスパイツールだったのに対し、本作で活躍する“携帯電話”は、自分が潜入者であるという証拠を記録し続ける、あまりにリスキーかつ安易なツールに思えた。


分かりやすさを追求するのは一向に構わないが、それがオリジナルの魅力をどう変容させてしまうかについては、もう一考……どころか、熟考してもらいたかった。


結論を言うならば、本作「ディパーテッド」は、そこそこ楽しめる内容をキープしてはいるものの、「インファナル・アフェア」を観たことのある人ならば、あえて劇場まで足を運ぶ必要はない、という作品に落ち着いている。


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