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「華麗なる恋の舞台で」

2006.12.26

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渋谷Bunkamura ル・シネマで2007年正月第2弾として公開予定の「華麗なる恋の舞台で」の試写。


2005年ゴールデン・グローブ賞主演女優賞受賞作品。


原作:サマセット・モーム 監督・製作:イシュトヴァン・サボー 脚本:ロナルド・ハーウッド 出演:アネット・ベニング、ジュレミー・アイアンズ、ブルース・グリーンウッドほか 上映時間:104分 配給:2004カナダ・米.ハンガリー・英/アルシネテラン


美しく、颯爽と、味わいがあり、そして痛快!


主役のジュリアを演じたアネット・ベニングのすばらしい演技に酔いしれた。


キュートで華やかな大人の女性の魅力。だけど、ちょっぴり嫉妬深く、傷つきやすく、意地悪。それでも許せるのは、彼女の魅力であふれてるから。あふれすぎてスクリーンからはみ出てしまっている。そのはみ出た空気のなんと軽やかで心地よいことよ。


舞台は1938年のロンドン。家族を持ち幸せに暮らす人気舞台女優のジュリアは、同じような日常のくり返しに少々うんざりしていた。そんな折、親子ほど年の違う米国青年トムと知り合い、恋に落ちる。が、その至福のときもつかの間、トムは若い女優と恋仲に。しかもジュリアはトムの勝手な頼みを聞き入れて、その若い女優を自身の舞台に大抜擢したのである。さあ、初日の舞台が幕を開けた……!


山あり谷ありの物語のなかで変化するジュリアの表情。104分間、ひたすらにそれを楽しんだ。


人間の表情は、神が人間に与えた魔法のようである。七変化どころか、百変化も千変化もある。その、まさしく「豊かな」表情を見せてくれるのが、ジュリアなのだ。


惰性で舞台をこなす憂うつさ。スポットライトを浴びたときの抜群の輝き。恋に落ちるときのうぶな少女のごとき恥じらい。浮かれまくりの恋情。タチの悪い嫉妬心。恋人を失うことに対する恐れ。そして、失意のなかで練り上げる再生への台本——。


喜びと葛藤のジェットコースター。翻弄されているというよりは、ジュリアみずからがジェットコースターの運転手を務めているかのよう。


人生のあらゆる出来事に一喜一憂するジュリアには、ある種の自由ささえ感じる。それは彼女が女優という“感性の仕事”をしているせいなのかもしれないが、彼女には、多くの大人が備えている躊躇というものがほとんどない。


自分の恋や感情に素直に生きている。それだけにトラブルやエピソードも後を絶たないのだが、経験を積むにつれてすっかり用心深くなってしまった大多数の大人たちと比べれば、その立ち居ふるまいから放たれる輝きは、磨き抜かれたダイヤのそれに等しい。


「単純」で「複雑」。「純粋」で「したたか」。「大人」で「子供」。「天真爛漫」で「悲観的」。そんな相反するモノたちが、もともとはひとつの卵から生まれたものであることを、ジュリアの表情は教えてくれる。


人間はそう単純に割り切れるものではない、ということを。


本作の成功はアネット・ベニングの繊細かつエモーショナルな演技抜きには語ることはできないが、ジュリアの夫役を演じたジュレミー・アイアンズをはじめ、脇を固める陣容も遜色なく巧者ぞろい。そんな脇役たちも、それぞれに、人間の複雑な機微を表現している。


一人ひとりが隠しもっている本音や打算、人間同士のかけ引き、運命の綾などを軸に、ユーモアとペーソスを絡めながら紡ぎ上げた脚本にも拍手を送るべきだろう(原作はサンセット・モームの『劇場』)。


なかでも、舞台女優という設定を最大限に活かし、現実と虚構の世界を見ごとにシンクロさせたクライマックスは、スクリーンにクギづけになる人たちの溜飲を下げさせ、さらにご褒美として、無類の爽快感を与えてくれる。


——してやったり!


気持ちはスタンディングオベーションである。


華やかな衣装を含め、1938年当時のロンドンの上流気分が味わえるのもこの作品ならではの魅力だろう。


目尻のしわが愛らしいアネット・ベニング。中年女優の魅力、さく裂である。


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