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No.32「パッション」

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 銀幕をさまよう名言集!  No.32  2008.9.4発行 

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2004年/アメリカ 「パッション」より


弟子のユダに裏切られ、
大司祭の兵に捕らえられたイエス・キリスト。
自らを救世主と主張するイエスは、
「神の冒涜者」として司祭や民衆から非難を浴び、
ローマ提督に引き渡された。


ローマ提督は、イエスの罪の有無が
はっきりしていないにもかかわらず、
司祭や群衆の怒りに配慮して、
イエスを十字架にかけるよう命を下す。


ムチで全身を打たれ、
傷だらけのカラダで十字架を背負い、
イエスはゴルゴダの丘へと歩を進める。


十字架にはりつけにされたイエスは、
やがて最期を迎える……。


一体彼は、何度殴られ、蹴られ、
ムチでたたかれたことだろう?
「ここまでやるか?」というほどむごたらしい仕打ちを、
「ここまで描くか?」というくらい容赦なく、
この作品は描く。


なぜ、執拗なまでにイエスの受難を描く必要があるのか、
はじめは、その意味が分からなかった。
ところが、イエスが最後に口にした言葉を耳にしたとき
なるほど、と腑に落ちた。


十字架にはりつけにされる際、
ぶっとい杭が
イエスの両手両足を打ち抜く。


痛みに顔を歪めながら、
イエスは思わずこう言ったのだ——


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    「父よ、どうか彼らをお赦し下さい。
     彼らはしていることが分かっていないのです」


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数百回、数千回とたたかれ、
ひん死状態に追い込まれながら、
イエスが父なる神に言った言葉は、
彼ら(イエスを拷問する連中)を赦してあげてほしい、
というものだった。


チキショー! でも、
私が何をしたんだ! でも、
オマエらは罰当たりだ! でも、
オマエらは地獄に堕ちろ! でもなく、
神に彼らの赦しを請うたのだ。


細かい解説は必要あるまい。


イエスにとって憎むべき相手であるにもかかわらず、
憎むはおろか、彼らを批判することもなかった。


それどころか、
彼らの幼く罪深い魂に、同情を寄せたのだ。
そして、そんな彼らの魂が救われるよう、
父なる神に祈りを捧げたのだ。


多くの罪深き人の身代わりとなって
死んだと言われているイエス・キリスト。
彼の教えが今もなお
世界中の人々の心の支えになっているのもうなずける。


    「父よ、どうか彼らをお赦し下さい。
     彼らはしていることが分かっていないのです」


日々、憎しみや敵対心を抱え、
ケンカに、競争に、闘争に、戦争に
明け暮れている現代の人々に、
この言葉はどう聞こえるだろうか。


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●編集後記             
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

皮膚が割け、血や肉が飛び、
イエスはどんどん破壊されていきます。
顔は原形をとどめないほど腫れ上がり、
全身には赤くただれた傷が……。


メル・ギブソン監督入魂の本作「パッション」では、
全体の7〜8割が、
イエスの拷問シーンに費やされています。


歴史考証の正確性ウンヌンではなく、
イエスがどういう人格の持ち主だったのかを、
端的に示したかったのでしょう。


肉体的な苦痛を不屈の精神力で
耐え抜くイエス・キリスト。
その姿は、神の子を自負する彼が、
この世に生きる万人を愛していたことの証左ともとれます。


私はキリスト教信者ではありませんが、
キリスト教にまつわるさまざまなエピソードには、
不思議と興味を引かれます。


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■銀幕をさまよう名言集! No. 32「パッション」


マガジンID:0000255028
発行者  :山口拓朗


●公式サイト「フリーライター・山口拓朗の音吐朗々NOTE」
http://yamaguchi-takuro.com/


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