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No.12「マルサの女」

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 銀幕をさまよう名言集!  No.12  2008. 3. 6発行 

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1987年/日本 「マルサの女」より


伊丹十三監督の代表的作品。
国税局査察部(通称マルサ)に抜てきされた女性査察官と
巧妙に脱税を行う脱税者の攻防を、
皮肉を込めながらコミカルに描いた社会派ドラマ。


権藤という経営者が仕組む巧妙な脱税。
なかなかシッポをつかめないでいたマルサだったが、
地道な捜査を重ねて、いよいよ権藤を追いつめる。


マルサの統括官(津川雅彦)が権藤に詰め寄る。


     「あなたは偉い人だ。ボクは本当に尊敬する。
      私よりも金も稼いでおられるし、
      大勢の人も使っておられる。
      社会的地位もあれば信用もある。
      すべてにおいて我々より上です。尊敬します。
      ただね、権藤さん、
      私はただ1点、あなたを尊敬できねえところがあるんだな。


そして、言葉を続ける——


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      所得を正しく申告しておられないということ            
      

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      これだけは尊敬できない」


脱税は立派な犯罪である。
だけど、だ。
窃盗、傷害、殺人……それらの犯罪と比べて、
どこか質が違うように思う。


窃盗、傷害、殺人……それらの犯罪の動機は千差万別だろう。
困窮、怨恨、激情、利欲、憂さ晴らし……。
10件の犯罪があれば、
容疑者10人それぞれの動機が隠れている。


ところが、脱税という犯罪を透かして見えてくるものは、
ほぼ人間の「いやしさ」や「せこさ」に集約される。
もちろん、困窮、怨恨、激情、利欲、憂さ晴らし……
そんな動機のほうがマシというワケではないが、
「いやしさ」や「せこさ」に起因する脱税とは、
なんと“人間の不完全さ”という本質を見透かした犯罪なのだろう、と思う。


脱税をする人のなかには、
社会的地位のある人や、エリートも少なくなかろう。
そういう人たちが、
自分のなかにある「いやしさ」や「せこさ」に負けて脱税をする。


と、まるで善人ヅラした物言いをしているが、
では自分はどうだろう? と考える。
すると、たとえば脱税とはいかないまでも、
節税には万策を尽くしていたりもする(笑)。
もっと言えば、10円や100円に「せこさ」を発揮することもあれば、
金とはまた違った分野で、「いやしさ」や「せこさ」を発揮することも。
いやはや、日々、「いやしさ」や「せこさ」のオンパレードではないか……、
と気付かされる(苦笑)。


おそらく根っこの部分は一緒なのだろう。
脱税の罪で捕まる人も、自分も。
もしかすると、たまたま自分が高額所得者でないゆえに、
犯罪者にならなくて済んでいるだけかもしれない。


ただし、脱税は犯罪で、
節税や日々の「いやしさ」や「せこさ」は犯罪ではない。
根っこには、たとえ同じ「いやしさ」や「せこさ」があったとしても、
犯罪という垣根は決して超えてはいけない。
それが、不完全な人間という生き物が、
守らなければいけないせめてもの義務なのかもしれない。


      私はただ1点、あなたを尊敬できねえところがあるんだな。


      所得を正しく申告しておられないということ。


      これだけは尊敬できない。


せっかくの、価値ある人格を
「いやしさ」や「せこさ」のために失墜させないように
気をつけなければいけない。
自戒を込めて……。


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●編集後記             
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国税局と脱税者の見ごたえのある攻防戦に加え、
脱税という犯罪が見透かすモノ(人間の不完全さ)を、
「マルサの女」という作品は突き付けてきます。
伊丹監督の作品には、
「監督は一体どちらの立場なんだろう?」と思うものが少なくありませんが、
一貫して鳥瞰図的な視点から
グレーな社会問題をテーマを取り上げてきたのが、
伊丹十三という人なのかもしれません。
しかもそうしたリスキーなテーマを、
エンターテインメント性のあるドラマへと昇華させてしまう、
そうした芸当のできる希有なクリエーターだったように思います。


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■銀幕をさまよう名言集! No.12「マルサの女」


マガジンID:0000255028
発行者  :山口拓朗


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