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No. 20「あるスキャンダルの覚え書き」

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 銀幕をさまよう名言集!  No.20  2008.5.4発行 

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2006年/イギリス 「あるスキャンダルの覚え書き」より


学校で孤立するベテラン女教師のバーバラ。
彼女は、屈折した心をもつ女性だった。
気に入った女性を見つけると、
是が非でも自分のモノにしようとする——。
偏執狂的で、なんとも薄気味悪い。


そんなバーバラは、ある日、
若い女教師のシーバに目をつける。


バーバラは計画的に彼女に近付き、
思惑通り親しくなっていく。
が、あるとき、シーバと15歳の生徒との情事を目撃してしまう……。


バーバラは激怒し、
そのハレンチな行為を学校に報告しようとするが、
ふと、ある考えが頭に浮かぶ——


      それまで怒りに流されていた私はハッと気づいた。
      これはシーバともっと親しくなる絶好のチャンスだ。
      相手の秘密を守ることで、彼女を手に入れられるかもしれない。
      私に永遠の借りを作らせるのだ。


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      何もしないことで、何もかもが私のものになる。         
        

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バーバラは学校への報告をやめた。
シーバの弱みを握ることで、
彼女を支配しようと考えたのだ。


もちろん、シーバには決して手のうちは見せない。
ゆするわけでも、どう喝するわけでもない。
自分のことを“秘密を守ってくれる優しい友人”と思わせておくだけだ。


バーバラは、それで本当に友情が手に入れられると思っている。
哀れな人間である。


もちろん、テクニックの一部として、
誰か他人を支配するようなことも、
世の中には少なくないのかもしれない。
人間関係を築くステップとして、
そのテクニックを活用する程度であれば、
大きな問題はないだろう。


ただし、相手を支配することで
真の“友情”や“愛情”が手に入れられると思ったら、
それは大間違いだ。


なぜなら、支配とは束縛であり、
束縛とは、嫉妬や憎悪の母だから。
支配した気になっているうちはまだいいが、
やがて、必ず、ぶちあたるだろう。
相手の感情までは支配できないという事実に。
そのときに、大きな嫉妬や憎悪が生まれ、
物事は取り返しのつかない方向へと転がっていくのである。


      何もしないことで、何もかもが私のものになる。


そんなウマイ話は、ほぼこの世には存在しない。
もし存在するとしたら、その手にしたモノをよく見るといい。
それはカタチだけのハリボテで、
決して本物ではないはずだから。


例えば、宝くじで1億円当たったとしよう。
これで幸せが約束されたのだろうか?
答えはノーだ。
手もとにあるのは、1億円の札束であり、
そこに“幸せ”はセットになっていない。
あたり前だ。
当たったのは、お金であり、幸せではないのだから。


同じことがバーバラにもいえる。
彼女はシーバを支配することで、
ホントに何もかもを手に入れたのだろうか?
答えはノーだ。
手に入れたものは、せいぜいハリボテの友情くらいなものだろう。


支配や束縛のある土壌に、
真の意味での“友情”や“愛情”は芽生えない。
そう断言していいだろう。


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●編集後記             
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「あるスキャンダルの覚え書き」は、
支配というテーマと同時に、
嫉妬、誘惑、強欲、妄想……など
人間の負の心理をまざまざと描いた物語です。
設定と演出が、かなり大胆というか……乱暴ですが(笑)、
パワーバランスの崩れに着目した人間ドラマは
何はともあれ興味深いものです。
ストーカーじみたバーバラを演じたジュディ・デンチと
情緒不安定なシーバを演じたケイト・ブランシェットが、
とにかくスゴイ演技を見せてくれます。
幸せな家庭を築きながらも
道を踏み外していくシーバの心理も、
解釈のしがいがあります。


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■銀幕をさまよう名言集! No. 20「あるスキャンダルの覚え書き」


マガジンID:0000255028
発行者  :山口拓朗


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