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No.4「ブロークン・フラワーズ」

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 銀幕をさまよう名言集!  No.4  2008. 1. 20発行 

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2005年/アメリカ 「ブロークン・フラワーズ」より


COOLな映像美と音楽と間合いで、
独自の世界を作り上げるジム・ジャームッシュ監督の
小さなロードムービー。


主人公は、かつて多くの美女と浮世を流した中年男のドン。
ある日、突然送られてきた差出人不明の手紙で、
19歳になる自分の息子が存在することを知ったドンは、
手紙の差出人とまだ見ぬ息子の情報を得ようと、
かつての恋人たちに会うための旅に出る。


ドンの突然の来訪に、女性たちの反応はさまざまであった。
歓迎する者、すっかり変わってしまった者、怒りをあらわにする者……
ドンは複雑な思いを抱えたまま旅を終える。


そんな物語のラストシーン。


地元に戻ってきたドンは、ある若い男の旅人に声をかけて、
サンドイッチをごちそうする。
ドンは彼のことを、自分を捜しに来た息子に違いないと思ったのである。


若い旅人はドンにたずねる。


      「(ボクのような)旅する男に、
       何か哲学的な助言みたいなものはある?」


ドンは少し思索したのちに、口を開いた。


     「そうだな……
      過去はもう終わってしまった。
      未来はまだこれからどうにでもなる。
      だから、大事なのは——
      つまり……


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      現在だ。                  

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それは、ドンが旅を終えて得たひとつの答えだったのだろう。
過去の良き日に会えるかもと淡い期待を寄せながら
かつての恋人たちのもとを訪れたが、
結果、そこで目にしたものは、恋の残片のようなものばかりであった。
人は過去には戻れない……。
そんな気持ちが彼に、“現在”の大切さを言わしめたのだろう。


加えて言うなら、
その若い旅人がもし本当にドンの息子であるならば、
生涯独身を貫いてきたドンにとっては、
実に感慨深いことである(とその顔に書いてある)。
わが子に、せめてひと言、父親として、
何か大切なことを伝えなければ、と思ったとしても不思議ではない。


      大事なのは——つまり……現在だ。 


この言葉を、ドンの思いに重ね合わせて訳すならば、
「振り返ったときに“むなしい”と感じるような過去を作るんじゃないぞ」
というメッセージである。
「オレみたいにさ」と。


プレイボーイに身を任せて、“現在”をないがしろにしてきたドンが、
過去の良き日を失った末に、大事にしろと語った“現在”。
そのギャップに込められたアイロニーが、物悲しさを誘う。


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●編集後記             
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セリフ(言葉)ではなく、
間合いで、空気で、仕草で、態度で、人間を表現する。
ジム・ジャームッシュという映画作家は、
そういうことに長けています。
言葉は、ときに気まぐれで、ウソもつくけど、
間合いや、空気や、仕草や、態度というのは、
なかなかごまかせないもの。
間合いで、空気で、仕草で、態度で、人間を表現する、というのは、
ある意味、理にかなった演出方法なのかもしれません。


彼の作品に「コーヒー&シガレッツ」(03年)という
会話にフォーカスした異色の短編集があります。
会話のやり取りはもちろんおもしろいのですが、
実はこの映画でも、間合いや、空気や、仕草や、態度が、
セリフ(言葉)以上に重要な役割を果たしています。
実験的な作品なので、万人にオススメはできませんが、
ジャームッシュらしさがよく出ている1本だと思います。


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■銀幕をさまよう名言集! No. 4「ブロークン・フラワーズ」
 
マガジンID:0000255028
発行者  :山口拓朗

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