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「ウエストサイド物語」

2008.3.13

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劇団四季のミュージカル「ウエストサイド物語」を観劇。


1957年初演のアメリカのミュージカル。日本では1964年にブロードウェイ・チームを招いたほか、1974年には劇団四季が初演。以来、現在に至るまで完成度の高い公演を続けている。


舞台は1950年代のニューヨークのスラム街。それぞれ白人とプエルトリコ移民で構成される非行グループ同士の抗争と、その狭間で恋に落ちる男女の姿を描いた物語。『ロミオとジュリエット』に着想を得たヒューマンドラマだ。


最大の見どころは、スピード感のある乱闘シーンを筆頭にした、切れ味鋭く、躍動感あふれるダンスだろう。単に優雅な“踊り”とは一線を画し、肉体的にも技術的にも高度であろうそのパフォーマンスに、冒頭からクギづけにされる。


脚本は、当時のアメリカのスラム社会をリアルに写し取ったブロードウェイの原作に忠実で、ヒリヒリするようなヒューマニズムをはらんでいる。人種差別(というより人種間の対立)をはじめ、社会のインモラルやタブーをまっすぐ睨みつけるような展開からは、路地裏に押し込められイラ立つ若者たちの“息づかい”と、彼らが心の底で実は渇望してやまない“何か”が透けて見える。


ただし、そうした他国の若者の繊細なメンタリティを、原作から半世紀以上が経った現代の日本人が感得することは容易ではなく、事前に時代背景を頭に入れておくか、何らかの問題意識を持ちながら観劇しないことには、単なる不良たちの抗争ドラマ&ロマンスに終わってしまう可能性は否めない。


とはいえ、この物語のテーマが、単に、ある一時代のとあるスラム街で起きたドラマとしてだけでなく、その先の世界に無数にちらばる、未だに絶えない抗争とその火種にシンクロする普遍性を内包していることに疑いの余地はなく、その片鱗はカクジツに観劇者、いやこの世界の住人の心をノックする。


「なぜいがみ合って生きるんだ!」「いつまでやれば気が済むんだ!」——と。


本作が長きにわたり公演され続けているのは、その鮮度の落ちないメッセージがあればこそだろう。


強いて欠点を挙げるとしたら、すばらしい完成度を誇るダンスや歌唱の一方で、演技力が与えるインパクトがひ弱な点だろう。とくに最愛の恋人が殺された(実はデマだったのだが……)という報告を受けたときの主人公トニー。この重要なシーンにおいて、彼の悲しみの表現に、どこか“芝居じみたもの”を感じてしまったのは残念だ。愛する人を失う哀しみとはなんぞや——。


劇団四季が、キャストではなく、作品のそのものを第一義的に考えていることは間違いないだろう。ただし、個々のキャストのパフォーマンスは、作品の価値と完全に切り離すことはできないし、そのことが招く作品のクオリティ低下のリスクについては、もっと考える必要があるような気がする。もちろん、良くも悪くも、その(生身の人間が行う)ライブ感こそが舞台芸術の面白さにほかならず、新たな発見や感動を求めて、ファンは幾度となく足を運ぶ、ということなのだとうは思うが…。


しかしながら、(劇中の設定年齢と比べて)ひと回り以上も違うと思われる劇団員をキャスティングするような苦肉の策に気づかないほど観劇者も鈍感ではないだろう。作品のためにも、劇団四季という価値ある集団のためにも、せめて、基本的な違和感については早急に修正すべきではないだろうか。


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