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「春のめざめ」

2009.7.4

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劇団四季のミュージカル「春のめざめ」を観劇。


【オリジナルスタッフ】台本・歌詞:スティーヴン・セイター、音楽:ダンカン・シーク、原作:フランク・ヴェデキント 【日本スタッフ】日本語版歌詞・台本:劇団四季文芸部 演出協力:浅利慶太 演出補:横山清崇 演出助手:由水南、宇垣あかね 音楽スーパーバイザー:鎮守めぐみ


19世紀末のドイツ。教師が生徒を理不尽に抑圧していた。多感な思春期をすごす生徒たちはフラストレーションを溜めていた。ある日、詰め込みの授業に異議を唱えたメルヒオールは、教師から体罰を受けてしまう。また「赤ちゃんはどうしたらできるの?」とたずねたベンドラは、母親にその答えをはぐらかされてしまう。一方、気弱なモリッソは、毎晩、性的な夢に悩まされていた……。


ミュージカルとしては異色の、そして衝撃的な作品である。テーマは「抑圧された10代の心の叫び」。妊娠、虐待、恋愛、いじめ、体罰、同性愛……など、少年少女が抱えるさまざまな悩みが、物語のなかに盛り込まれている。彼らは心と体の変化に悩み、さまざまな壁にぶつかる。にもかかわらず、大人は、都合よく歪曲した情報と画一的な価値観ばかりを子供に押しつける。傲慢でステレオタイプな自分たちのふるまいが、どれほど彼らを傷つけているかも知らないで。


舞台設定より100年以上が経過した現在ではどうだろう? たしかに情報の扉は開かれ、子供たちは理不尽な抑圧からずいぶん解放されたようにも思える。だが一方で、子供の素顔が見えにくくなった。いじめ問題はますます陰湿化し、今やネット社会にさえ蔓延している。増加傾向にあるという子供に対する親の虐待はどうだ。地域のコミュニティが衰退し、核家族化が進んだ昨今、虐待の事実は、極めて表沙汰になりにくい。


そう考えると、本作「春のめざめ」は、現代社会でも十分にリアルな物語として受け止められていいはずだ。大人にはささいなことでも、子供には大問題で、知らぬ間に深い傷を負っているというケースも少なくない。そして、昔も今も、彼らはいつだって叫び声を上げ、SOSを発信している。受信してもらえるかどうか分からないSOSを。


冒頭、男子学生が、不満を爆発させて反逆のロックナンバーを歌う。教室内を所狭しと駆け回り、ロックスターよろしくジャンプをくり返しながら。伝統的なミュージカルとは趣を異にする大胆な演出だが、ここで重要なのは、うっとりするような美声や、折り目正しいバレー仕込みのダンスではなく、彼らの心の叫びの切実さだ。多少音が外れていようと、多少ダンスの動きが間違っていようと、瑣末な問題にすぎない。大事なのはエモーションであり、エッジであり、ハートである。


男子学生の自慰シーンにも驚かされたが、ベンドルとメルヒオールが結ばれるシーンでは、ベンドラの胸もとの服は大胆にはだけ、メルヒオールのおしりは丸見えだ。こうした赤裸々な演出は、本作にかけるスタッフとキャストの意気込みの表れにほかならない。舞台後方にバンドを従えてのリアルなライブ演奏も、感情をストレートに表現した楽曲が多い本作にはふさわしい。何より今回は、まだまだ将来性が未知数な若手の役者をオーディションで獲得したことが“吉”と出ている。舞台上が若さゆえの青くささと不慣れさで満たされたことにより、「中年が少年を演じる」というミュージカルにありがちなウソくささを回避している。


派手な舞台チェンジもなければ、軽妙なユーモアも少なめ。全般的にまじめでストイックな印象を受ける演目だ。しかしながら、数々の問題提起を含んだメッセージ性の高さこそが、凡百のエンターテインメント作品と一線を画す「春のめざめ」の真価にほかならない。もしも同世代の子供たちが観劇したなら、気恥ずかしさを感じながらも、多くのエピソードに共感を寄せることだろう。いや、本当にこの演目を見るべきは、思春期の子供たちが発するSOSに思いのほか鈍感な大人たちのほうかもしれない。

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