「ふたりのロッテ」
2007.9.21

劇団四季のミュージカル「
原作:エーリッヒ・ケストナー 演出:浅利慶太 作曲:いずみたく 振付:加藤敬二
劇団四季による「ふたりのロッテ」の初演は1971年。今年(2007年)は7年ぶりの全国公演が行われている。子供から大人まで楽しめるファミリー・ミュージカルだ。
夏期休暇中に、「こどもの家」があるザルツブルグで、ミュンヘンから来た心やさしい少女ロッテと、ウィーンから来たおてんば娘ルイーゼが出会う。ふたりは自分たちの顏が瓜二つであることにビックリ! やがてふたりは自分たちが離れ離れになった双子であることを知る。両親を含めた4人で暮らしたいと考えたロッテとルイーゼは、お互いに入れ替わる計画を思いつき、それぞれの家に帰っていくが……。
特筆すべきは、ロッテとルイーゼの思いの強さである。お互いになりすまして、まだ見ぬ親のもとへと行くくだりは、この物語の最大の見どころだが、そうした行動の原動力が、「まだ見ぬ親に会いたい!」「家族4人で一緒に暮したい!」というふたりの強い気持ちにあることが何より素晴らしい。
現実的なことを言うならば、いちど離婚した両親が再び一緒に暮らすこと自体が、必ずしも幸せを生み出すとは限らないと思うし、両親が言うところの“大人の事情”も、少なからずこの世には存在する。
ゆえに、この物語の結末(両親の再婚)が、完ぺきなハッピーエンドだとは思わない。
ただ、それは物語のひとつの落としどころにすぎず、むしろ「ふたりのロッテ」の価値は、この世の中に、大人の事情によって胸を痛めている子供たちがどれだけ多くいるか、そしてまた、そうした子供たちに、逆境をはねのける能力が潜在的にどれほど備わっているか——といった本質を掘り下げている点にある。
欲を言えば、たとえ両親が再婚に至らなくても、ロッテとルイーゼの取った行動が決してムダではないことにまで言及してもらいたかったが、子供向けの作品であることを考えると、いたずらに物語を複雑にするのは得策ではないのかもしれない。
子供の心は、大人が思う以上に傷つきやすく、とても繊細だ。がしかし、その心を理解している大人は(親を含め)なかなか多くはいない。「ふたりのロッテ」は、そうした大人たちの代りに、子供たちの複雑な心を理解し、あるいは、代弁する役割を担っている。
客席から舞台を見つめる多くの子供たちは、主人公のロッテとルイーゼに、自分が置かれている境遇やモノの感じ方を照らし合わせて、大きなシンパシーを感じることだろう。一方、大人たちは、繊細で、傷つきやすく、けなげで、まっすぐな子供たちの純真さを目の当たりにし、ハっとさせられることだろう。
もちろん、そうした大まじめなテーマを、エンターテインメントという土台を踏み外すことなく、明るくユーモアをもって描いているところが「ふたりのロッテ」の魅力であり、全編を通じて、深みのある歌声とバイタリティあふれるダンス、それに快活な演技で観客を魅了する。とりわけ、お互いになりすましたふたりが、それぞれの自宅で四苦八苦するシーンは、ほほえましくもあり、また、ひそかに胸を打つ。
人生の喜怒哀楽や人情の機微を、歌とダンスで表現するミュージカルは、子供たちにとって、ワクワクとドキドキがつまった宝箱のようなものだろう。歌声は“感性と想像力の畑”を耕し、ダンスは“勇気の泉”にパワーを注ぎ込む——。子供たちに希望を与える良質の作品につき、機会があれば、ぜひ親子でご観賞のほど。
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