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キャスター界のイチローに期待!

2005.2.12


「ニュースステーション」はあまり見ていなかったが、「報道ステーション」は毎日のように見ている。久米宏という人にはまったく興味がなかったが、古舘伊知郎には以前から興味があった。「ザ・ベストテン」で黒柳徹子と絡む久米宏より、「夜のヒットスタジオ」で加賀まりこに絡む古舘伊知郎のほうが好き。ただその程度の差にすぎないが。


いや、そもそも古舘伊知郎には「話術」という芸があり、昔からその芸を心底すごいと思っていたから、気になって仕方がなかっただけかもしれない。


「報道ステーション」がスタートして1年になるだろうか? 思えば、最初の2ヶ月くらいまでは、古舘の空回りが激しく、本当に見ていられなかった。


ニュースキャスター初挑戦(しかもポスト久米)ということで、本人も相当苦労しただろうし、周囲も古舘のキャラクターの落としどころに悩んだと思うが、そうした試行錯誤が画面からモロににじみ出ていた。


ひと言で言うと、当時の古舘は視聴者に「気を使わせる」ニュースキャスターであった。古舘びいきの私でさえそう感じていたのだから、久米ファンは相当イラついたのではないだろうか。


当初の古舘伊知郎にはキャスターとしての致命傷があった。それは、実に単純なことなのだが、私自身も「これを直さない限りキャスターとしては大成はしないだろうな」と感じていた。


古舘は一つのニュースで沸き上がった感情を、次のニュースに引きずったのである。当時はイラクで日本人誘拐事件などがあったころで、世界中から陰惨なニュースが次々と配信されてきていた。古舘は怒りに顔を歪ませたまま、次のニュースに移ることが多かった。それはとても人間的なことかも知れないけど、何か違う、と思った。


古舘には報道に新しい風を吹き込もうという気負いがあった。無理もない。それまでの「ニュースステーション」は、高視聴率を誇るテレビ朝日の看板番組だったわけだから。前述の致命傷にしても、古舘本人はそうした「引きずり」をあえて人間味として見せようとしていたキライがある。次から次へと垂れ流されていくニュース、紋切り型のニュースキャスター、セオリー重視の報道番組に対する、ある種のアンチテーゼ。新しいキャスター像への挑戦。


古舘の気持ちは分からないではなかったが、結局、その試みはうまくはいかなかった。私ももちろん応援はしていたが、一方では高みの見物ゆえに、そのハードルの高さに気づいていた。人間味だけではニュースキャスターは務まらないのだろう。


それは決して古舘のせいではなく、むしろニュース番組という特性のせいである。解説者やコメンテータとは違い、ニュースキャスターは、膨大な量のニュースを処理し、なおかつ司会進行係を兼任しなければならない。いくら毒舌でも、実直でも、正義でも、ウェットな感情だけでは務まらない。リセットボタンを上手に押せる人でなければならない。


ところが、番組スタートから2ヶ月が過ぎると、驚いたことに、古舘の致命傷はきれいに治っていた。自分で気づいたのか、それとも誰かが助言したのか分からないが(たぶん後者だと思う)、古舘は前のニュースを引きずらなくなった。「はい! それでは次の〜」と、自分で区切りをつけるようにリズムを取るようになった。「引きずり」がなくなると、とたんに歯切れよくなり、彼本来の話術が復調の兆しを見せ始めた。


今では見ていられないことも、気を使うことも(思わずチャンネルを変えてしまうことも)なくなった。


正直、現段階ではニュースキャスターが古舘の天職とも思えないのだが、あの伝家の宝刀とも言うべき「話術」が、いつか報道という舞台で大化けしそうな、そんな予感だけはある。


致命傷を修正したのは、素晴らしかったと思う。あれほど実績のある人だと、人間なかなか素直になれないものである。客観性をもって自分を変えた古舘の英断に拍手を送りたい。勉強家でもある。多少の独りよがりは彼ならではの長所と割り切って、応援していきたいと思う。

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