モノ作りのカクニン作業
2005.5.17
ミュージシャンがよく最終的に出来上がった音源を、ボロボロのラジカセやクルマの純正デッキなどで鳴らして、最終チェックをするという話をよく耳にする。これには最終的にCDを買った人たちが実際に聴くかもしれない状況での音を確認しておきたいという意図がある。
録音スタジオの整った環境のなかで聴く音源はたしかに素晴らしいはずだが、リスナーの多くは、そうした恵まれた音楽環境をもっていない。むしろ、安価なデッキとスピーカーで聴いている人のほうが大半だろう。そうした大多数を想定するというやり方は、モノを作る人間としてとてもよく理解できる。
私も仕事で似たようなことをしている。書いた原稿は必ず、実際の雑誌などに載る体裁でたしかめる。たとえば、タテ組み(タテ方向に流れる文章のこと)の文章で1行に15文字入る文章であれば、必ず同様のフォーマットで印刷を行い、推敲・校正を行うのである。ヨコ組み(ヨコ方向に流れる文章のこと)で1行30文字×15行の原稿であれば、当然、同様の条件で印刷し、推敲・校正を行う。
間違ってもタテ組みを横組みで印刷したり、ヨコ組みを縦組みで印刷したりはしないし、ましてやパソコンの画面上だけでチェックを終えるということははありえない。1行の文字数はもちろん、できることならば級数(文字の大きさ)や書体も、実際の掲載と同じ設定で印刷したい。究極的にはページのどの位置にその原稿が入るかまでを再現するのがのぞましい。
理由はたぶんミュージシャンがボロデッキで聴くのと同じである。最終的にそれを読む読者(その前にその校正をとる編集者)の視点で、確認しておくことは最低限の礼儀だと思うし、プロの端くれとしてのこだわりでもある。
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