持論・バランス論
2002.8.28
なんといってもバランスは重要である。人間の顔の構成パーツは目、鼻、口など、万人共通であるにもかかわらず、地球上で自分ソックリの人と出会う可能性は著しく低い。
各パーツのバランス、そして、骨格を含めた配置のバランスが、十人十色の顔を作り出しているのだ。人間の顔ほど紙一重なものはないと思う。ベッカムの鼻があと数ミリ低く、両目の距離が数ミリ離れていたら、彼の人生も少し変わっていたかもしれない。
ここ10年の間に、落合、広沢、清原、江藤など、球界を代表するスラッガーを次々と獲得してきたジャイアンツ。そこに、松井、マルティネス、高橋といったスラッガーが加わり、もはや盤石、最強巨人軍の到来かと思われた。
ところが、今シーズンの結果といえば、V9を凌ぐのはおろか、常勝すらおぼつかなかった。つまり、チーム内に四番が何人いたところで、打線としてのバランスを欠いていれば犬も食わないのだ。選球眼と俊足を持った一番がいて、確実に進塁打を打てる二番がいて……というバランスこそが大切だということ。そんなあたり前を、今さらプロ野球で証明したこと自体、茶番といえば茶番なのだが。
サッカーW杯で日本代表メンバーから中村俊輔が落選したことに異論はない。いかに中村の技術力が国内屈指であったとしても、ヒデ(中田)や三都主らとの同ポジション争いに勝たねばならななかった。一方、ゴン(中山)と秋田をW杯の最終メンバーに選んだ、トルシエのバランス感覚には見事だった。ムードメーカーであるベテラン二人の投入により、このチームのバランスは素晴らしいサジ加減となった。優秀な「点取り屋」や「司令塔」が何人いてもダメ。ポジション間のバランスがチームを機能させ、ベンチ、サポーターまでをも含めた総合的なバランスが、チームに底力を与える。トルシエは沈着冷静に状況を分析、把握していた。
世の中にはバランスが軽視できないものが多い。ファッションなどは、まさしくバランスの世界だろうし、サラリーマンがストレスを発散させるのは、現代流のバランスの図り方。シリアスな物語には、多少のウィットが含まれてるほうがいい。聞き上手であり、話し上手でありたい。恋愛では両者間のバランスが最重要視される。「栄養のバランス」を欠いているのは、現代の子供たちで、地球上の環境バランスを壊しているのは、先進国の人間たちである。昨今、バランス感覚が欠落した政治的指導者が、戦争を安易に考えているフシがある。「酒、博打、女」が、芸の肥しになるという芸能人。彼らはみずからを強く輝かせる必要があり、それがゆえによく遊ぶ。立派なバランスといえよう。
バランスにもいろいろと種類がある。5段階評価でオール3を取れば、バランスのいい成績と言える一方で、ある評価で1を取ったとしても、別の評価で5を取って挽回するというバランスの図り方もある。どちらがいい悪いではなく、バランスにおける個人差である。いずれにせよ、人間はバランスをとる能力に長けた生き物だ。人生には挽回のチャンスがあるということを肝に銘じたい。
ただし、世の中にはまれに、少しバランスから外れたところに気持ち良さがある場合もある。基本スケールから半音外したジャズギターの「音」のように。バランスの取れた人間は、ある意味素晴らしいが、バランスが良すぎることが、特徴のなさにつながることもある。従来の教育は人間を平均化させることで、個々の持ち味を奪ってきた気がする。ときにはバランスから少し外れる勇気をもつことも大切なのだろう。
※報道によればナベツネが近鉄の中村に興味を示してるそうだ。そんなことよりも、川相をあと3年働かせるための知恵を絞るべきだと思うのだが……。
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