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「みそ汁マシン」が作るおふくろの味

2002.9.13


近ごろ街中に“おふくろの味”をウリにした和定食屋が増えている。ご飯、みそ汁、焼き魚、小鉢などがワンセットとなってお盆に載って出てくる、あのスタイルだ。


昔ながらの定食屋を意識しているのだろうが、昨今のは大型チェーン化しているため、しわくちゃ顔のおばあちゃんが登場するわけではなく、シャレた腰巻きエプロンなんかをした若いバイトが数人でレジやフロアを(もしくは厨房も)仕切っている。まあ、それはそれでいいだろう。何をさておき和食の復権を喜びたい気持ちなのだから。


しかし、いくつかの店を渡り歩き、私は大いに落胆している。多くの店で、みそ汁が機械(以後「みそ汁マシン」と呼ぶ)から出てくるのである。


おわんを置いてボタンを押すと、ジョボジョボジョボーとみそ汁がノズルから流れ落ちてきて、おわんの7分目くらいのところで止まるの仕組みになっているのだ。それを見た瞬間、私などは気持ちが萎えてしまい、大方、その店を出るまで立ち直ることができない。


なにゆえ「みそ汁マシン」からみそ汁が出てくる必要があるのかも分からなければ、セルフサービスでもないのに、それを客にわざわざ見せるかのような位置に置いていることも理解できない。「みそ汁マシン」からみそ汁を出し、それを客に見せることが“おふくろの味”だとでも思っているのだろうか。


中途半端とかいう以前に、その店のオーナーの見識を疑う。「みそ汁マシン」のような機械に対する不衛生疑惑は今さら論ずるまでもないが、みそ汁自体を軽視しているにもかかわらず“おふくろの味”をウリにしている店の神経にはあきれる。自覚のなさもここまで来れば立派だ。


百歩譲って、みそ汁の具が少量のワカメやネギであることには目をつぶろう。いや、千歩譲って、厨房で「みそ汁マシン」を使うことも認めよう。だが、客にジョボジョボジョボーを見せないでくれ。


もしや、あのジョボジョボジョボーを披露することで「効率的だから、ウチの店は安いんですよー」とアピールしているのだろうか。それとも単にどうでもいいと思っているだけなのだろうか。いずれにせよ、和食ファンの一人として嘆かわしいばかりである。


先日、新聞記事に直木賞作家の重松清氏の以下のようなコラムが載っていた。


「拉致事件の被害者の家族の記者会見の場に、ミニペットボトルが置いてあるのを見たとき、むしょうに腹立たしく、悲しかった。ここまで手抜きをしてもいいものか。 ——中略—— 記者会見の場を取り仕切るのが誰かは知らない。ただ、一連の「誠実さに欠ける対応」は、こんな小さな対応にもあらわれているのではないか? せめてコップぐらい置けよ。それは被害者うんぬんのレベルではなく、人として当然なす礼儀、心配りだと思うのだ」


私が和定食屋に求めているのが、礼儀、心配りだと言っても、あまり説得力はないだろうか。

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