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私見、王者二段階制理論

2004.8.16


オリンピックでメダルを取った人たちの態度や表情、言葉が、大きく2つに分かれることに気づく。一つは「最高です!」「本当に嬉しい!」と感極まり、涙さえ見せる人たち。もう一つは「まだ実感がないです」と他人事のように淡々と語る人たち。

私が思うに、前者の人たちが、極度のプレシャーをはねのけて勝利を手に入れたのに対し、後者の人たちは自他共にメダルへの期待が薄かった人たちである。もちろん、メダルを取ったことについての評価は平等であるべきなのかも知れないが、価値という意味においては多少違いがあるように思われる。乱暴な言い方をすれば、前者の人たちは「真の王者」であり、後者の人たちは「仮の王者」である。


「仮の王者」は、今後、世界中のライバルから目標とされ、自他どちらからも優勝候補・2連覇の期待と重圧を受けることになる。そして、それをはねのけたとき「真の王者」になれるのだ。つまり野村、谷、北島になることができるのだ。


「真の王者」になるまでの重圧がどれだけ大きなものかは、勝利した後の、野村や谷や北島の表情を見れば一目瞭然である。彼らはまっさきに最上級の喜びを口にし、続いて周囲や応援してくれた人たちに対する感謝の言葉を口にする。トップアスリートが人間的にも素晴らしいのは、挫折やプレッシャーを知り、そのうえで、周囲の人たちの支えを素直に受けながら、それを乗り越えてきた人たちだからである。


おそらく谷に2つのメダルの価値を聞いたならば「1枚目より2枚目!」と言い、野村に聞いたならば「1枚目より2枚目より3枚目!」と言うであろう。そういう意味では、プレッシャーの「実感」がなかった「仮の王者」たちが、「まだ実感がないです」と発言するのも当然といえば当然である。


「仮の王者」の中には残念ながら「真の王者」になれない人もいる。勝負の世界だから敗れることも当然あるだろう。でも、残念なことに、一部「仮の王者」のなかに、自分は「真の王者」だと勘違いして、その後、大失速してしまう人も少なくない。それが大きな安心感や満足感を得たことによるものなのか、メダルを取ったことで目標を見失ってしまうからなのか……おそらくその両方ということになるだろう。


今回、すい星のごとく現れ、メダルを取った「仮の王者」たちを心から応援したい。彼らはこれから次の試合(レース)に挑むまでの間に、凡人では想像もつかないほど大きなプレシャーを味わい(周囲の「ちやほや」もその一つ)、おそらくは王者ゆえの挫折も味わうだろう。その逆境を乗り越えて、再び私たちの前にその輝かしい雄姿を見せたとき、本人はもちろん、私たちも「真」の感動を与えてもらうことになるだろう。


4年後の北京で彼らの姿が消えていないことを願いたい。

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