山口拓朗公式サイト

No.26「ニュー・シネマ・パラダイス」

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 銀幕をさまよう名言集!  No.26  2008.6.18発行 
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1989年/イタリア・フランス 「ニュー・シネマ・パラダイス」より
舞台は戦後間もないイタリア・シチリア島。
映画に魅了された少年トトと
老練な映写技師アルフレードの交流を描いた心あたたまる物語。
繊細な人物描写と美しい音楽を織り交ぜながら、
ていねいに紡ぎ上げた珠玉のヒューマンストーリー。
映画に対する愛がギッシリと詰まった映画史に残る1本だ。
アルフレードがトトに、
映写技師がいかに孤独で大変な仕事であるかを語る、
前半のあるワンシーン。
     「自分の仕事が嫌いなの?」
と訊くトトに対して、アルフレードはこう言う。   
     「もう慣れたよ。
      それに客席が満員になって、人々が楽しんでいると、
      自分も楽しくなる」
アルフレードは続ける——
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     「人が笑うのが嬉しい。                          
      自分が笑わせている気がする」         
         
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厳密に言えば、観客を笑わせているのは、
映画制作者ということになるのかもしれない。
映画監督、役者、スタッフたち。
けど、映画は作られるだけでは観客には届かない。
その映画を上映する興行主がいて、
映画を宣伝する宣伝マンがいて、
ポスターや看板を描く絵描きがいて、
劇場でフィルムを回す映写技師がいる。
もっと言えば、劇場でチケットを売る人だっている。
ダレ一人が欠けても映画は観客に届かない。
だから——
     「人が笑うのが嬉しい。                          
      自分が笑わせている気がする」  
そうした気持ちになるのは、
とても自然なことではないだろうか。
「いや、気がするのではなく、
あなたも観客を笑わせている一人なんですよ、アルフレード」。
と、思わず声をかけたくなるシーンだ。
同様の例を挙げよう。
野菜を作るのはたしかに農家の方かもしれない。
だけど、それが消費者の口に届くまでには、
問屋があり、市場があり、輸送があり、八百屋がある。
その先にはプロの料理人もいるかもしれない。
多くの人たちの頑張りによって、
消費者はおいしい野菜を口にすることができる。
消費者がその野菜を「おいしい」と言ったとき、
その言葉は、その野菜にかかわった不特定多数に向けられたものである。
問屋さん、市場関係者、トラック運転手、料理人……等々。
ダレもがおいしい野菜を消費者に届けたいという気持ちで、
汗水を流しているのだから。
ゆえに、彼らは「おいしい」という言葉に、
素直に喜びを感じていいのだと思う。
(もちろん、その言葉の恩恵をもっとも受けて然るべきは農家の方ですが)
もし、そうした喜びを感じずに仕事をしている人がいるとしたら、
それは少しもったいないことかもしれない。
仕事は常にダレかに何かを与えている。
そのことに気づいていないのかもしれない。
多くの見ず知らずの人たちのサポートを受けながら
その仕事があるということ。
そして、それを受け取るダレか(消費者)がいるということ。
そのことに気づけば、きっと今している仕事に、
もっと大きな喜びを感じることができるだろう。
もちろん、今の仕事が気に入らないという場合には、
モチベーションが上がらないこともあるだろう。
でも、もしかするとそれは(今の仕事が気に入らないのは)、
受け取って然るべき喜びを、
みすみす逃しているせいということはないだろうか?
たとえば、消費者の「ありがとう」が、
自分とは無関係だと思い込んでいるとか。
くり返しになるが、
消費者の「ありがとう」の言葉や、嬉しそうな笑顔は、
その仕事にかかわったすべての人が、
分け隔てなく受け取ることのできる権利だ。
素直に受け取るに越したことはない。
そうした素直さを持つことは、プロフェッショナルへの第一歩でもある。
なぜならプロフェッショナルとは、
自分が与えるものが何かを知っており、
また、その対価として受け取る喜びが何かを知っている人のはずだから。
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●編集後記             
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「ニュー・シネマ・パラダイス」は
映画館で働く人々や映画館に足を運ぶ人々の、
映画に対する愛や情熱を描くと同時に、
少年トトと映写技師アルフレードの友情を描いた物語です。
終盤、青年になったトトのことを、アルフレードは突き放します。
「一度村を出たら長い年月、帰るな」、
「人生はお前が見た映画とは違う。人生はもっと困難なものだ。行け」と。
前途洋々なトトの未来を思って、あえて人生に変化を要求し、
トトに退路を断たせるアルフレード。
このシーンからは、真に人を愛することの意味や、
教育の本質を読み取ることができます。
30年ぶりにシチリア島に戻ってきたトトは、
亡きアルフレードが自分に残した形見を手にします。
それは映画のフィルムでした。
郷愁のなかでよみがえる記憶と、アルフレードへの思い……
映画史に残る美しいラストシーンが涙を誘います。
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■銀幕をさまよう名言集! No.26「ニュー・シネマ・パラダイス」
マガジンID:0000255028
発行者  :山口拓朗
●公式サイト「フリーライター・山口拓朗の音吐朗々NOTE」
http://yamaguchi-takuro.com/
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