No.30「エド・ウッド」
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銀幕をさまよう名言集! No. 30 2008.8.2発行
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1994年/アメリカ 「エド・ウッド」より
実在の映画監督で、
“史上最低の監督”と謳われた、
エドワード・D・ウッド・ジュニア、
通称エド・ウッドの奇想天外な伝記を、
奇才、ティム・バートンが映画化。
主演はジョニー・デップ。
自分の好きな映画を撮るためには、
どんな苦労もいとわない男、
それがエド・ウッドだ。
周囲から散々批判され、
バカ扱いされ、
資金集めに奔走を強いられ、
出資者に口出しされ…… 。
思うようにいかない映画作り。
制作費を節約するために、
撮影日数もわずか数日の突貫工事。
それでも、エドはいつも笑ってる。
自分で選んだキャストに絶対の信頼を置き、
自分の書いた脚本に絶対の自信を持ち、
自分の撮ったカットに心から酔いしれ、
自分の作品にたっぷりと愛情を注ぎ込む。
そして、ダレに何を言われようと絶対に腐らない。
そんなエドの人柄を象徴する冒頭のシーン——。
自主制作まがいの作品を上映した翌日、
役者たちと一緒に、
新聞の「舞台批評」のコーナーに目をやる。
一同……沈黙。
重たい空気に包まれる。
おそらく辛口な批評だったのだろう。
出演者A:「大体この人、(劇場に)来てなかったじゃない。
手下を使ったんだな。くたばれクラウリーめ!」
出演者B:「“私の顔が馬みたい” ……って?」
出演者C:「“仰々しい” ……って?」
一同が怒りをあらわにし始めると、
そこにエドが割って入った——。
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エド:「悪い意見には目をつぶろう」
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エド:「褒めてもいるじゃないか。
“軍服は真実みがある”ってさ。
衣装すら褒めてもらえない作品もあるんだから」
自分の才能を信じることは、
多くの人にとって難しいことだ。
とくに、周囲から批判を浴びた時に、
動じずにいることは。
もちろん、自分の作品をボロクソに言われて、
エドもそれなりに傷付いただろう。
だけど、それを表情や顔には出さない。
それどころか、前向きな言葉を吐き続ける。
彼に映画人としての才能の有無はどうであれ、
少なくとも、「自分の好きな映画を撮ろう!」という気持ちと、
ダレに何を言われようと、「大丈夫!」と前を向き続けた姿勢が、
終世、彼を映画監督たらしめたことは間違いないだろう。
凡人であれば、どこかでサジを投げていたハズだ。
「オレは才能なしだ。いちやーめた!」と。
「悪い意見には目をつぶろう」
辛辣な批評を前に、そんなふうに思えること。
それは、才能にほかならない。
ジャンルを超越した才能だ。
人は人。自分は自分。
“意欲”と“信念”、それに“前向きさ”があれば、
人はその世界を渡り歩くことができる——。
エドの生き方からは、
そんなメッセージが聞こえてくる。
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●編集後記
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本作「エド・ウッド」を撮ったのは、
エドの同類を自認するティム・バートン監督。
おそらく、変わり者として扱われていた
エドの気持ちにシンパシーを感じて、
この作品を撮ったのでしょう。
全編モノクロのフィルムには、
映画に没頭したひとりの映画狂の、
愛すべき人柄が映し出されています。
出資者に口うるさいことばかり言われ、
さすがのエドも、怒り心頭に達したある日のこと。
偶然会った憧れの監督オーソン・ウェルズから、
エドはこんな言葉を贈られます。
「エド、夢のために戦え。
他人の夢を撮ることはない」
この言葉を聞いたエドは、
忘れかけていた気持ちを取り戻し、
再び現場に戻りました。
自分が撮りたいと思う作品を撮るために。
迷いが吹っ切れたエドは、
まるで水を得た魚のように、
映画作りに没頭したのです。
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■銀幕をさまよう名言集! No.30「エド・ウッド」
マガジンID:0000255028
発行者 :山口拓朗
●公式サイト「フリーライター・山口拓朗の音吐朗々NOTE」
http://yamaguchi-takuro.com/
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