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No.37「卒業」

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 銀幕をさまよう名言集!  No.37  2008.11.4発行 
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1967年/アメリカ 「卒業」より
マイク・ニコルズ監督がメガホンを取って
アカデミー賞監督賞に輝いた
ダスティン・ホフマン主演の名作。
ダスティン・ホフマン演じるベンジャミンは、
名門大学を卒業後、
実家に帰省する。
彼の帰省を喜び、
両親はパーティを開く。
自宅に集まる親戚、友人、知人……。
だれもが将来有望なベンジャミンに
期待を寄せていた。
しかしそのなかで、
ベンジャミンは違和感を感じていた。
ベンジャミンの父が、
ベンジャミンに声をかける。
     父:「どうした、みんな下でお前を待ってるぞ」
ベンジャミン:「パパ、しばらく1人でいたいんだ」
     父:「親しい人ばかりだ。
        ほとんどお前が生まれた時から知っている。
        どうした?」
ベンジャミン:「……」
     父:「心配ごとか?」
ベンジャミン:「……」
     父:「何の?」
ベンジャミン:「将来のことだよ」
     父:「どんな?」
ベンジャミンは「分からない」と答えたあと、
こう言葉を続ける——
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     「ただ平凡では——いやなんだ」
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決められたレールの上を歩くような人生に、疑問をもつ。
多感な青年期をすごす多くの若者がかかる
「はしか」のようなものかもしれない。
人は生まれたときから
自分の意思で歩いているわけではない。
親や親類、先生、
周囲の大人たちから多くの導きを受けて、
大人になっていく。
それはとても自然なことだ。
ただ、ある時点に来たときに、
ふとこんなことを思うのだ。
自分は自分の意思で歩いているだろうか? と。
そして、こんなことも思うのだ。
自分は自分の意思で歩きたい。
何ものにも縛られずに、と。
そうした人生への覚醒は、
おそらく人間が成長するうえで、
必要なものなのだろう
多かれ少なかれ。
ただ、自分の意思で歩き始めると、
多くの場合、壁にぶちあたる。
ときには、理想と現実の板挟みにあい、
身動きが取れなくなることもある。
とんでもない失敗をすることもあれば、
あやまちを犯すこともある。
だれからの庇護も受けないということは、
それ自体が、大きなリスクなのだ。
レールのカタチをした「平凡な道」から外れると、
思いも寄らない出来事が待ち受けている。
十中八九。
だが、
そこで待ち受けている出来事が、なんであれ、
自分の意思で「平凡な道」から外れたのだから、
その結果として生じた責任は、
自分自身で引き受けなければいけない。
     「ただ平凡では——いやなんだ」
こうした気持ちを抱く若者のなかには、
“アンチ平凡”な日々をすごすことが、
多くの責任と覚悟を伴うものであることに、
気づいていない人も少なくない。
そう、それが若さというものだ。
そして、現実という壁にぶちあたり、
きっとそこで何かを学ぶのだ。
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●編集後記             
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教会で結婚式を挙げているヒロインを
主人公が連れ去る有名なラストシーンは、
ある意味、鑑賞者に溜飲を下げさせる
痛快なハッピーエンドと言えるでしょう。
がしかし、それは、
そこで物語が終わっていれば、の話です。
この「卒業」という映画は、
そのあとを追い続けています。
教会を飛び出したふたりは、
バスに飛び乗り、
最後尾の座席に座ります。
初めは嬉しそうに、
顔を見合わせるふたりですが、
しばらくすると、黙ったまま前を見つめます。
微妙に変化するふたりの表情をカメラがとらえます。
その表情からは、
好きな人と一緒になれた“喜び”だけでなく、
“不安”や“おびえ”のような感情も
読み取ることができます。
果たしてこれでよかったのか?
どんな未来が待っているのか?
本当に幸せになれるのか?
ふたりは、冷静さを取り戻した一瞬に、
そんな悲観に襲われたのでしょう。
このラストの余韻を描いたところに、
この作品を名作たらしめている
理由がある気がします。
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■銀幕をさまよう名言集! No. 37「卒業」
マガジンID:0000255028
発行者  :山口拓朗
●公式サイト「フリーライター・山口拓朗の音吐朗々NOTE」
http://yamaguchi-takuro.com/
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