山口拓朗公式サイト

No.41「クイズ・ショウ」

Pocket

■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
  
 銀幕をさまよう名言集!  No.41  2008.12.23発行 
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


1994年/アメリカ 「クイズ・ショウ」より
1950年代にアメリカで実際にあった
テレビ・スキャンダルの実話をベースに、
テレビの脅威と倫理観の欠如を描いた作品だ。
とあるテレビのクイズ番組に、
アメリカ中が熱中していた。
ハーヴィー・ステンプルは、
番組内で連戦連勝を誇るクイズチャンピオンだったが、
視聴率が伸び悩んでいたため、
スポンサーは、チャンピオンを変更するよう
番組プロデューサーに伝達した。
後日、プロデューサーは、
ステンプルを呼び出し、
次回の収録のときに
わざとクイズに間違えるよう指示した。
プロデューサー:「最終問題は<映画>だ。
         1955年のアカデミー作品賞をたずねる。
         『波止場』と答えろ」
ステンプル  :「冗談じゃない。答えは『マーティ』だ」
         3回も見た。しかも2年前の作品賞だ」
☆★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
プロデューサー:「簡単な問題をミスったら劇的だ」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ☆★☆
ステンプル  :「劇的?」
プロデューサー:「頼むから言う通りに」
ステンプル  :「せめて<物理>で負けたい。
         『マーティ』は嫌だ。
         恥をさらせというのか?」
プロデューサー:「(君がこれまでに稼いだ)賞金は7万ドルだ。
         我慢しろ」
このクイズ番組では、
より高い視聴率を稼ぐために
番組をドラマチックに演出したり、
勝敗を不正に操作したりする
ヤラセが恒常化していた。
実はステンプル自身も、
そのことを知らなかったわけではない。
事実、番組収録前に、
クイズの出題を聞かされることもあった。
おそらくステンプルは、
番組プロデューサーから
「番組を盛り上げるために君の力を貸してくれ!」
とでも言われていたのだろう。
「悪いようにはしないから」と。
ところが、
「必要なし」と判断されるや、
またたく間にお払い箱。
番組プロデューサーに、
まんまとハメられたわけだ。
しかも、だ。
ただ答えを間違えるだけではなく、
         簡単な問題をミスったら劇的だ
と、単純問題での誤解答を指示。
つまりは、番組を盛り上げるためである。
         (君がこれまでに稼いだ)賞金は7万ドルだ。
         我慢しろ
の捨てゼリフに至っては、
意訳するなら——
         金は十分にやったんだから、
         文句を言わずにクイズで間違えろ!
といったところか。
血も涙もない仕打ちである。
民放のテレビ番組にとって大事なのは、
「視聴率=スポンサー=お金」であることは、
今さら言うまでもないが、
もしも、この番組プロデューサーに、
多大な影響力をもつテレビにかかわる者としての、
倫理観や道徳観、良心、中立性、文化的使命などが、
多少なりとも備わっていたならば、
ここまで醜悪な言葉は、
出てこなかったはずである。
日本のテレビとて例外ではない。
どこまでが本当で、
どこまでがヤラセか……。
グレーゾーンな番組は、
少なからず存在する。
もちろん、まったくヤラセのない番組もあるはずだが、
なかには、そうでない番組もあるということだ。
(ヤラセの定義にもよるが)
昨今でこそ、視聴者の「メディアリテラシー」、
すなわち、「メディア情報を主体的に読み解く力」を
高めようという風潮に傾いてきたが、
それも、ようやく、のことだ。
ひと昔前までは、
「テレビ番組=ウソの情報は流さない」と
信じてきっていた人も、
相当数いたはずである。
それはさておき。
本作「クイズ・ショウ」が描くテレビ業界の実態に、
うすら寒さを感じるのは、
番組の作り手の意識から、
視聴率以外のモノ
(倫理観や道徳観、良心、中立性、文化的使命など)が、
すっぽり抜け落ちている点である。
         簡単な問題をミスったら劇的だ
この言葉には、
テレビどうこうを通り越して、
損得勘定でしかモノを計れない
人間の卑しさが見え隠れする。
もっとも私は、この映画の糾弾が、
単に「ヤラセのクイズ番組を作ったこと」だけに
向けられているとは思わない。
むしろ、
ヤラセをしなければ高視聴率が取れない。
そう考えるテレビ人の「思考の短絡さ、安易さ」に、
警笛を鳴らしているのではないだろうか。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●編集後記             
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
読者の皆さま、
「まぐまぐ大賞2008」への
あたたかい応援と投票、
ありがとうございました!!!
残念ながら受賞には至りませんでしたが、
ノミネートを果たせたことで、
大きな自信につながりました。
心より感謝申し上げます。
さて、08年も残すところ、
あとわずかとなりました。
1年間、ご愛読いただき、
本当にありがとうございました。
「銀幕にさまよう名言集!」の年内の発行は、
今号でラストとなります。
09年も銀幕をさまよう多種多様な名言に、
もれなく独断と偏見に満ちた解説を添えて(笑)、
お届けしていきたいと思います。
寒さが厳しさを増してきましたが、
風邪などひかれませんよう、
ご自愛くださいませ★
09年が皆さまにとって、
すばらしい1年になりますよう
心よりお祈り申し上げます。
それでは、よいお年を!!!
**********************************
■銀幕をさまよう名言集! No.41「クイズ・ショウ」
マガジンID:0000255028
発行者  :山口拓朗
●公式サイト「フリーライター・山口拓朗の音吐朗々NOTE」
http://yamaguchi-takuro.com/
**********************************
 

記事はお役に立ちましたか?

以下のソーシャルボタンで共有してもらえると嬉しいです。

 ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
Pocket