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No.48「グッバイ、レーニン!」

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 銀幕をさまよう名言集!  No.48  2009.6.3発行 
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2003年/ドイツ 「グッバイ、レーニン!」より
ベルリンの壁崩壊前夜の1989年、
東ドイツに住む主人公の青年アレックスは、
共産主義体制に疑問を抱いていた。
一方、アレックスの母は、
祖国・東ドイツに対する愛国心を強め、
ますます共産主義に傾倒していく。
ある日、アレックスの母は、
反共産主義デモに参加するアレックスを目撃し、
その場で心臓発作を起こし、
そのまま意識不明に。
8カ月後、意識を取り戻したときには、
すでにベルリンの壁が崩壊し、
資本主義国家の統一ドイツが誕生していた。
母にショックを受けさせてはいけないと、
アレックスは、あの手この手で、
世の中が以前と変わっていないことを
アピールしようとする……。
――という物語。
母の体を気遣って、
アレックスは、
ジャムの瓶のラベルを旧東ドイツ風に張り替えたり、
テレビのニュース番組を自作したり、
来客者に旧東ドイツ風の服を着させたり……
と、大わらわ。
母を思うがゆえの涙ぐましい努力が、
静かな感動を誘う。
もちろん、芝居やウソが裏目に出ることもある。
ある日、母がコカコーラの広告看板を目にしてしまう……
などというハラハラシーンも少なくない。
さて、そんな家族愛の一方で、
この作品では、旧東ドイツが、
またたく間に西ドイツ化(資本主義化)していく様子が、
さまざまな角度から描かれている。
奇抜な服を着た若者が増え、
オシャレな酒場に恋人たちがくり出し、
カラフルなパッケージの食料品が店に並び、
街中に企業の看板が増え、
旧東ドイツのお札が使えなくなり……と。
劇的な変化のただ中において、
アレックスのモノローグが流れる――
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     「未来は僕たち次第だ。
      不確かだが、輝いていた」
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共産主義体制では、
未来はおそらく、
「僕たち次第」ではなく、
「国家次第」だったのだろう。
ベルリンの壁が崩壊したことにより、
アレックスをはじめとした旧東ドイツの若者たちは、
初めて「未来は自力で切り開ける!」
と感じたのだろう。
     「不確かだが、輝いていた」
の一節も印象的だ。
先は見えなくとも、
「きっとうまくいく!」
「きっと楽しいことがある!」
「きっと幸せになる!」
そんな楽観があったのかもしれない。
ケースはずいぶん違うが、
戦後から高度成長期にかけての日本にも、
似たような感覚があったのではないだろうか。
     「未来は僕たち次第だ。
      不確かだが、輝いていた」
という感覚が。
翻って現在の日本を見たときに、
果たして若者たちは、
同じような感覚を持っているだろか?
答えはおそらく「NO」だろう。
もしかすると、
「未来は景気かなにか次第で、
 未来は不確かにして不安だらけ……」
そんなことを思っているのかもしれない。
だとしたら、ずいぶん不憫な話である。
若者が自力で切り開ける未来。
不確かだけど輝いて見える未来。
そういう未来を提供するには、
今この社会に何が必要なのだろうか?
子供たちの未来のために、
まず先んじて大人たちが、
社会のあり方や、
自分の生き方を
真剣に見つめ直す時期に来ているのかもしれない。
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●編集後記             
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本作「グッバイ、レーニン!」は、
ベルリンの壁の崩壊や
統一ドイツという歴史的な社会情勢を背景にしながらも、
極めて個人的な「愛と優しさ」を、
テーマに取り上げた作品です。
母親を守りたい一心で奮闘する息子のアレックスと、
そんなアレックスに協力する周囲の人々の様子を、
ときに痛々しく、
ときに物悲しく、
ときに仰々しく、
ときにユーモラスな描写を交えながら描いています。
ウソと芝居でコーディングした虚構の世界も、
そこに誰かを救いたいという強い願いがあれば、
許されて然るべきなのかもしれない……。
そんな思いを抱かせる秀作です。
監督はヴォルフガング・ベッカー、
主演はダニエル・ブリュール。
ベルリン映画祭で最優秀ヨーロッパ映画賞を受賞しています。
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■銀幕をさまよう名言集! No.48「グッバイ、レーニン!」
マガジンID:0000255028
発行者  :山口拓朗
●公式サイト「フリーライター・山口拓朗の音吐朗々NOTE」
http://yamaguchi-takuro.com/
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