映画批評「パパラッチ」
2006.2.22 映画批評
4月公開の「パパラッチ」。
監督:ポール・アバスカル 製作:メル・ギブソン 製作総指揮:ルイーズ・ロズナー 脚本:フォレスト・スミス 撮影:ダリン・オカダ 音楽:ブライアン・タイラー 出演:コール・ハウザー、ロビン・タニー、デニス・ファリナ、ダニエル・ボールドウィン、トム・ホランダー、ケヴィン・ゲイジ、トム・サイズモアほか 上映時間:84分 配給:2004米/日活
映画俳優のボー・ララミー(コール・ハウザー)は主演映画のヒットで一躍スターダムへ。しかし、万人がうらやむ成功と引き換えに待っていたのは、極悪非道なパパラッチによる執拗なストーキング行為であった。パパラッチのストーキングは日々ヒートアップしていき、ついにはララミーの家族が犠牲に。怒り心頭のララミーは反撃を開始した……。
スターとパパラッチの対立(抗議や暴力沙汰や裁判)は、欧米ではたびたび報道されるが、その実態を克明に描き、核心を鋭くえぐった作品である。
なにはさておき、パパラッチが恐ろしい。
ララミーが乗るクルマを執拗に追いかけて事故を誘発させたうえ、パパラッチたちは、絶好のスクープとばかりに、凄惨な現場をカメラに収める。その常軌を逸した愚行から連想できるものといえば、腐肉に群がるハイエナくらいなものか。
モラルなきストーキング、言葉による挑発、捏造記事……。あげくの果てには、ララミーの自宅に忍び込み、隠しカメラまで取りつけるありさまだ。
直接的な暴力よりもはるかに身の毛のよだつ脅威がそこにはある。
人気スターに“有名税”はつきものだが、この映画が示そうとしているものは、パパラッチに写真を撮られることが“有名税”か否かという問題提起ではなく、人権侵害を受け続けるスターが、“有名税”を納めたうえで、なおかつどれほど割に合わない代償を払わされているか、という切々たる思いの暴露である。
一方、パパラッチの悪行を描いた前半の空気を逃がさぬまま、物語は確信犯的に、痛快なリベンジ・アクションへと移行。パパラッチが一人また一人と消えていくあたりにミステリー色をにじませつつ、最後は潔いほどの“勧善懲悪”でフィニッシュ!
善きにつけ悪きにつけ、これがハリウッドのエンタテインメント力なのだろう。
エンドロールが流れるスクリーンに向かって拍手喝采を送るハリウッドスターも少なくないだろう。胸くそ悪くて仕方がないパパラッチもまた。
糾弾と皮肉とアンチテーゼを含みながらも、なおかつ、十分に観客を楽しませてもくれる短尺83分。あっという間のジェットコースターだ。
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