映画批評「タイヨウのうた」
2006.3.30 映画批評
6月公開の「
監督は25歳の小泉徳宏 原作・脚本:坂東賢治 撮影:中山光一 音楽・主題歌:YUI 音楽:椎名KAY太 出演:YUI、塚本高史、岸谷五朗、麻木久仁子、通山愛里、田中聡元、小柳友、山崎一ほか 上映時間:119分 配給:2006日/松竹
16才の薫(YUI)は太陽の光にあたることができないXP(色素性乾皮症)という病気で、昼間は自宅の部屋に閉じこもり、夜になると駅前でギターを片手に歌うという孤独な日々をすごしている。
そんな彼女のひそかな楽しみは、毎朝、部屋の窓からサーフィンに向かう孝治(塚本高史)の姿を眺めること。そんなある日、薫は駅前で偶然見かけた孝治に告白を試みる。突如急接近したふたりに待ち受けていた運命とは…。
XP患者は太陽の光を浴びることができない。また、たとえ太陽に光を浴びずとも、神経症状(歩行障害や呼吸障害など)を発症させてしまった場合には、その先に“死”という非情な運命が待ち受けている。
片思い相手の孝治に告白をしたまではよかったが、病気を抱えた自分の未来と孝治の存在を重ね合わせたとき、薫は大きな絶望にぶちあたり、孤独の色を濃くしていく。
そんな薫の気持ちをおもんばかる孝治が、やんちゃな高校生から、ひとりの女性を守る男へと成長していく過程は、本作の大きな見どころだろう。
また、薫の親友の美咲(通山愛里)や、薫の両親(岸谷五朗&麻木久仁子)など、ふたりを支える周囲の存在も見逃すことができない。
とくに、先天的な病気を抱えたわが子に対する両親のまなざしがとても素晴らしい。難病と闘う薫を守り続けてきた両親にもまた、薫と同じだけの葛藤があったはずだろうに。
エンディング間近の浜辺のシーン。父が薫に向けた言葉には、感涙を抑え切れなかった。
テーマは決して軽くはない。にもかかわらず、全編を通じて、常にさわやかな風が吹き続けているように感じるのは、YUIや塚本高史、新鋭の小泉監督ら、いわゆる「青春」のど真ん中、あるいは、その余熱がいまだ冷めやらない世代の手による創作物ゆえだろうか。
鎌倉、横浜、サーフィン、ギター、夏休み、高校生、スクーター、ストリートライブ、バイト……。あらゆるシーンに、青春の息吹がちりばめられ、また、随所にクスっと笑える場面を織り交ぜている。
全編に流れる音楽は、シンガーソングライターのYUI扮する薫が歌うオリジナルソングである。素人離れした、それでも凛とした強さと純真さを秘めたその歌声は、映像やドラマにも勝る説得力をもって聴く人たちの琴線にふれる。
美しいプロモーションビデオを見せられているかのような、不思議な2時間。
“難病と純愛”という設定や、限りなく素人くさいYUIの演技力を含め、映画としてのベタさは否めない「タイヨウのうた」。がしかし、そんなベタな青春映画でしか語りえない何かを、この作品は内包している気がする。
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