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映画批評「レイヤー・ケーキ」

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2006.6.2 映画批評
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7月1日公開の「レイヤー・ケーキ」の試写。
次期007のボンド役、ダニエル・クレイグ主演。監督は初メガホンのマシュー・ヴォーン。広告の宣伝文句を借りるならば「スタイリッシュ・クライム・ムービー」だそうだ。
監督・製作:マシュー・ヴォーン 製作:アダム・ボーリング、デヴィッド・リード、製作総指揮:スティーヴン・マークス 原作・脚本: J・J・コノリー 出演:ダニエル・クレイグ、コルム・ミーニイ、ケネス・クラナム、ジョージ・ハリス、サリー・ホーキンス、マイケル・ガンボン、ジェイミー・フォアマン、シエナ・ミラー ほか 上映時間:105分 配給:2004英/ソニー
主人公X(ダニエル・クレイグ)はコカインのディラー。自身の哲学にしたがい引退をもくろんでいたある日、マフィアのボスから100万錠ものエクスタシーの販売と、行方不明になっている友人の娘の捜索を依頼される。ところがこの依頼にはある罠が仕かけられていた…。


クレバーな頭脳と冷静な判断力をもつXは、裏社会に生きながらも、「欲張りすぎるな」「敵を知り、尊重しろ」「供給者にカネをちゃんと払え」など、自身のルールにしたがって行動するスマートな犯罪者。暴力と欺きを武器に渡り歩く古いタイプのギャングとは異なるキャラクターが新鮮だ。
一方の物語は、そんな頭脳明晰なXをあざ笑うかのように、マフィアらしい血塗られた“裏切り裏切られ”の渦中にXを引きずり込むという展開。単なるヒーロー映画であれば、絶体絶命の状況下でも主人公は沈着冷静に職務を遂行するのかもしれないが——
——いかんせんこの映画、ちょっと風変わり。
マフィア社会の泥水をたっぷりとXに浴びせかけて、XのCOOLなカッコよさをどんどん奪っていくのである。
思惑は常に裏目をつき、いつしかXは、クレバー&スマートな必殺仕事人から、自分をつけ狙うマフィアの影に怯える、冴えない男へと成り下がる。
精彩をなくしていく主人公Xの姿は、物悲しいというよりは、ちょっぴり滑稽で笑える。それは随所にちりばめられた喜劇的な演出のせいでもあるのだが。
裏社会ならではのどんでん返しドラマもかなりベタなら…、ましてや、主人公Xはどんどん滑稽になっていくし…、かといってマフィア映画お約束の群像劇としてのインパクトにも欠ける…。
中途半端に真剣であり、中途半端に冗談めいていて、中途半端に謎めいている。
終わってみれば、何かはぐらかされたような、つかみどころのない感覚だけが残る。
もちろん、そうしたアンチヒーロー的な趣をリアリティと呼ぶこともできるのかもしれないが、どうも、作り手にそこまで確信犯的な意図があったようにも感じられない。
狙いがはっきりしているのは、ブリティッシュ・ロックで装飾したスタイリッシュな映像と、神妙になりすぎない軽めの演出、そして“因果応報”という普遍的な世の掟くらいなもの。
プロットに破綻がなく、ドラマもしっかりあるのに、どこを切り取っても深さに欠ける、そんなはぐらかし上手(?)な1本。


お気に入り点数:55点/100点満点中

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