山口拓朗公式サイト

「マイアミ・バイス」

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2006.8.11
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9月2日より全国で公開される映画「マイアミ・バイス」の試写。
80年代に一世を風靡した人気テレビシリーズを、「ヒート」「コラテラル」のマイケル・マン監督が映画化。
監督・脚本・製作:マイケル・マン 製作総指揮:アンソニー・ヤーコビック 製作:ピーター・ジャン・ブルージ 出演:コリン・ファレル、ジェイミー・フォックス、コン・リー、ナオミ・ハリスほか 上映時間:132分 配給:2006米/UIP
マイアミとカリブ海・パラグアイを舞台にくり広げられるポリスアクション。
コンビを組む警察官のソニー・ロケット(コリン・ファレル)とリカルド・ダブス(ジェイミー・フォックス)は、あるドラッグ密輸コネクションの一網打尽を目論み、“麻薬ディーラー”になりすまして犯罪組織に潜入。ところが、のちに潜入捜査員が送り込まれたとの情報が組織に漏えいされ、ふたりの身に危険が迫る…。


よくも悪くも、現代ハリウッドの典型的エンターテインメント作品である。
スケールの大きい展開力、第一線の技術を駆使したスペクタクル映像、ド派手なアクション、そしてラブストーリー。
HD(高解像度)ビデオカメラが、陸、海、空を自由に飛び回り、臨場感あふれるシーンと風景を収めている。
白人と黒人がコンビを組むポリスムービー自体に別段目新しさはないが、そのエンターテインメントにおあつらえむけの設定に、“潜入捜査”というスリルを盛り込んだのが本作の見どころといえるだろう。
物語における潜入捜査の醍醐味は、背後に急転直下の断崖を背負った緊張感に尽きるが、本作でも、そのスリルの片鱗は味わえる。
とくに序盤、ふたりが組織の主要人物に身元を勘ぐられるあたりの攻防戦は手に汗握る。バレたら一巻の終りという局面を、果たしてふたりはどう乗りきるのか? そのドキドキ&ハラハラ感はなかなかのものである。
が、強いて言うならば、潜入に成功したのちに始まる“中だるみ”がいただけない。
とりわけソニー・ロケットが、組織に籍を置くイザベラ(コン・リー)に熱を上げていくくだりは、潜入捜査の緊張感とあまりにかけ離れており、リアリティに乏しい(計画的な作戦ならまだしも…)。
潜入したふたりもたしかに命は張っている。が、その張り方は、寸分のスキを作ることすら許されない『インファナル・アフェア』のラウやヤン、ドラマ『24』のジャック・バウワー(組織の信頼を得るためにシャブ中になる!)を見たことのある人にとっては、生ぬるいものでしかないだろう。
第一、潜入捜査の目的や身の安全を少しでも冷静に考えれば、さしたる狙いもなく、ストーンと恋愛に陥ることは考えにくい。裏の裏は、表か、それとも裏か!? その答えすら判然としないダークな闇社会において、ソニー・ロケットがとった行動は、本来、馬脚を現すに足るものだったと思う。
加えて、イザベラを演じたコン・リーが明らかに精彩を欠いている。
本作のヒロインには、クレバーな潜入捜査官が理性を失うほど強烈な魅力、沈着冷静さ、強さ(もちろん尻重!)が必要であったと思うのだが、彼女はかなり簡単にソニー・ロケットの“モノ”になってしまい、あげくの果てには、恍惚の表情だけを残し、ぬけの殻のようになってしまう。
イザベラが毅然とした強さを失った瞬間に、緊張という糸の上を歩いていた物語が、急に色あせてしまったのは、気のせいではないだろう。
もちろん、ひいき目に見るなら、潜入捜査というハードなモチーフに、ラブロマンスを挟み込むし大胆さ(したたかさ?)は、現代ハリウッドらしいエンターテインメント力であり、あるいはコリー・ファレルの“色気”頼りなのかもしれないが、2時間12分の長丁場を緩急をつけつつ楽しませるダイナミズムは、サスガと言うべきなのかもしれないが。

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