山口拓朗公式サイト

「レミーのおいしいレストラン 」

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2007.8.10
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公開中の映画「レミーのおいしいレストラン」を観賞。
「トイ・ストーリー」「ファインディング・ニモ」「Mr.インクレディブル」などでおなじみのピクサースタジオの新作。
監督&原案&脚本:ブラッド・バー ド(「Mr.インクレディブル」) 製作総指揮:ジョン・ラセター 声優:パットン・オズワルト、ルー・ロマーノ、イアン・ホルム、ジャニーン・ガロファローほか 上映時間:127分 配給:2007米/ブエナ ビスタ 
フランスの片田舎。ネズミのレミーは天才的な嗅覚と味覚を持ち、一流のシェフになることを夢見ていた。ある日、レミーは人間のキッチンに忍び込むが、家の女主人に見つかってしまい……、逃亡中に家族と離れ離れになってしまう。気がつくと、レミーは尊敬していた料理人グストーの店にたどり着いていた。そこでレミーが目撃したのは、見習シェフのリングイニが店のスープを台なしにしているところ。いても立ってもいられなくなったレミーは、キッチンに忍びこむと、台なしのスープにハ−ブや調味料をすばやく入れて、スープを作り直したのだった……。果たしてそのスープを出された客の反応は?


不衛生のシンボルであるネズミを主人公にした画期的な設定もさることながら、人間に見つからないように、ちょこまかと動くネズミの一挙手一投足をリアル&スピード感のある映像で描くことにより、スリリングな冒険活劇、そしてまた、常識に風穴を開ける異端のサクセスストーリーとしてコクを醸し出している。
この作品の楽しさは、レミーの“好奇心”に尽きる。料理が大好きで、「ダレにでも料理はできる」という名シェフ(グストー)の言葉を信じながら、あの手この手で料理をしようとするレミーの姿は、知的好奇心であふれる人間の子供たちとかぶる。レミーの料理に対する飽くなき好奇心と、ネズミがシェフになるという(一見無謀に思われる)夢が実現に向かうプロセスは、子供のみならず、大人が見ても心躍らされる。
そんなレミーは、のろまで何をやってもパっとしないリングイニとコンビを組むことになるのだが、ここでのコンビネーションプレーも、ビジュアル的に楽しく、ユーモアもたっぷり。一方では、この持ちつ持たれつの危ういふたりの関係が、いつか崩れる(バレる)のではないだろうかとドキドキさせられる。
そんなスリルと冒険に満ちた物語のなかに、フランス料理界に巣くう闇(利益至上のビジネス展開、厨房における階級社会や差別……etc.)を巧みに編み込んでいるあたりも本作の妙味。また、衛生局やマスコミ、あるいはネズミ社会を巻き込んでのドタバタ劇のなかにも、さりげない示唆や社会風刺が見られる。子供には少し分かりづらいかな? と思うようないくつかのエピソードも、単なる子供向け映画には終わるまいというピクサーのどん欲な姿勢ととらえれば納得だ。ちなみに、ほのぼのと感動を誘う毒舌批評家にまつわるエピソードは、本作とっておきの隠し味になっている。
しかし、残念なことに「レミーのおいしいレストラン」は手放しに100点がつけられる作品ではない。なかでも、最後の最後までリングイニに成長が見られなかった点には大いに注文をつけたい。本作の面白さはあくまでもレミーの好奇心ではあるが、「ダレにでも料理はできる」というグストーの言葉をひとつのキーワードにしている以上、リングイニの(料理人としての)成長を多少なりとも描く必要があったと思う。この映画が最終的に導き出した結論は——グストーの言葉に反して——「料理はダレにでもできるものではない」寄りのものではなかっただろうか。
もちろん、レミーは一流シェフになるという夢を叶えたが、彼には天性ともいうべき嗅覚&味覚があったワケで、そんなレミーから学ぶことは、“好奇心と行動力”を除けばそう多くはない。ところが、学びの宝庫として機能するはずのリングイニには、最後まで学びが与えられずじまい……。あれだけたくさんのおいしい料理をレミーと作っておきながら、リングイニは、ただただ“あやつり人形”であることに満足し、そこから料理の「り」の字も学ぼうとしなかった。勝負のかかった大一番のラタトゥーユ、そのキメ手となるスパイスは、(レミーの才能に頼らずに)是が非でもリングイニに入れさせるべきだったと思うし、その成長を示すワンシーンがあるだけで、客に無限大の夢を与えることができたはずだと思うのだが……。
<リングイニはシェフではなく経営者として成功した>というオチは特別悪くはないのかもしれないが、そこから読み取れるのは、夢をもつことの尊さでも努力の大切さでもなく、一種の渡世術。果たしてそこまでシビアな現実路線をとる必要があったのだろうか? それは、レミーとリングイニの関係が、最後まで“友情に基づいた絆”ではなく、“利害の一致したビジネスパートナー”にしか見えなかったこととも相関していることだが……。
と、やや不満点は残るものの、小気味のいい笑いのスパイスと手に汗握るドライブ感で、子供から大人までを大いに楽しませる「レミーのおいしいレストラン」は、ディテールにまでこだわりまくった映像センスと技術の高さを含めて、一見に値する作品としてオススメである。

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