「マリア」
2007.12.25
公開中の「
監督・製作総指揮:キャサリン・ハードウィック 製作総指揮・脚本:マイク・リッチ 出演:ケイシャ・キャッスル=ヒューズ、オスカー・アイザック、ヒアム・アッバスほか 上映時間:100分 配給:2006米/エイベックス・エンタテインメント
ナザレに住むマリアは、婚約者・ヨセフとの交接なくして赤ん坊を身ごもった。おなかの子が“神の子”であると確信したヨセフは、救世主誕生を恐れるヘロデ大王から逃げるように、マリアを連れて故郷ベツレヘムへの旅に出る……。
マリアの処女懐胎から出産までを描いた作品だ。
映画を見るとき、人は、その作品を通じて、楽しむ、味わう、笑う、驚く、感動する、知る、学ぶ……等々、いろいろなものを得るが、そのいずれの要素が強いかは、作品によりけりである。
本作「マリア」は、“知る”あるいは“学ぶ”の要素が強い。エンターテインメントとして楽しませようということは、おそらく、考えずに作ったのだろう。
ところでクリスマスって一体どういう日なんだっけ?——そんなことを思った方に、見てもらいたい作品である。
もちろん、洗脳的な宗教映画の類であればオススメする理由はないが、本作は聖書を吟味しつつ考証性を追求した作品だという(門外漢な私にそれを確かめるすべはないが…)。聖書の中身を知らない者にとっては、この映画に描かれている時代背景や、当時の人々の暮らしぶり(何を着て、どんな家に住んで、何を食べて……etc)は新鮮であり、それだけでも知的好奇心を満たしてくれる。
もちろん、もう少しエンターテインメント性があってもいいのではないか? あるいは、あまりにイメージが平凡すぎないか? というような意見もあるだろう。
たしかに処女懐胎をしたマリアは比較的落ち着いて見えるし、婚約者のヨセフは、寛大すぎるほど寛大な人格者だし、ベツレヘムへと向かう道中にも、およそスリリングな展開は用意されていない。驚くほど淡々と日々はすぎ、マリアはとどこおりなく馬小屋での出産を迎える。
“東方の三博士”の話なども挟まれてはいるものの、それもあくまで聖書をなぞらえたという程度のものであり、彼らが大きな見せ場を作ることもない。おそらくキリスト教信者に対する配慮も多分にあるのだろう。映画を覆っているものは、ズバリ、直球勝負の美談である。
でも、それでいい映画なのだと思う、「マリア」は。キリストの生誕という人類史上もっとも重要なエピソードのひとつであるこの題材を扱うに際して、ヘタな演出も脚色は無用。そんなものがあれば、それこそ、しらじらしくなるだけである。
この映画は、あくまでも、ひとつの歴史的事実を、考証性にすぐれた時代背景と共に、示しているにすぎない。例えはよくないが、社会科教科書をドラマ仕立てにした映像版といったところだろうか。したがって、おもしろさや意外性を期待すると失敗する。
聖書など見たこともない方、あるいはクリスマスの意味を知らない方が、「エポックメイクな歴史の顛末を、映画を通じて気軽に学ぶ」。その程度の気持ちでのぞめば、それなりのものは得られるだろう。
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