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「魔法にかけられて」

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2008.4.10
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公開中の「魔法にかけられて」を鑑賞。
監督:ケビン・リマ 脚本:ビル・ケリー 音楽:アラン・メンケン 出演:エイミー・アダムス、パトリック・デンプシー、ジェームズ・マースデン、スーザン・サランドンほか 上映時間:107分 配給:2007米/ディズニースタジオ
アニメの世界のなかに生きるプリンセスのジゼルは、エドワード王子との結婚を間近に控えていたが、魔女にだまされて現代のニューヨークへ追いやられてしまう。突如、見たことも聞いたこともない世界に放り込まれたジゼルは、偶然出会った弁護士ロバートの家に転がり込むが……。


ディズニーがアニメと実写の垣根を越えた異色のファンタジーを作り上げた。アニメファンタジーの老舗が、ファンタジーという世界観の対極にある、クールでビジネスライクな現代ニューヨークにヒロインを放り込む。その大胆な設定だけでも驚くほど刺激的だが、その設定で起こるべくして起こるヒロインと世界との乖離(ズレ)を、実にうまくユーモアへと転換している。
世間知らず(アニメの世界にいたのだから当たり前だけど……)の姫ジゼルが、ニューヨークの人たちの冷たい視線を受けながらも、あっけらかんと自分の世界(アニメ)の理論を掲げて闊歩するサマは痛快だ。夢に夢見るプリンセス。フィアンセの王子が自分を追いかけてくると信じてやまないプリンセス。歌や動物や愛を照れることなく賛歌するプリンセス。現代人から、「なにをバカな」と思われかねない言行も、天真爛漫な彼女からくり出されると、観客は魔法にかけられたように、そのすべてを許してしまう(笑)。
ジゼルの言行はたしかに奇抜だが、彼女は単なる能天気なおバカ姫ではなく、その価値観が、現代ニューヨークの常識やルールになじまないにすぎない。弁護士のロバートは、そんな彼女のありのままの姿を受け入れていく。いや、彼自身が、何ごとにも愛情深くポジティブに向き合うジゼルに、ニューヨークではあまりお目にかかれない“大切なもの”を見つけてしまった、と言ってもいいだろう。
その一方で、ジゼルもまたロバートを通じて、実写世界での生き方や常識を学んでいく。未知の世界をありのままに受け入れていくジゼルの能力は、彼女の天性のものだろう。フィアンセの王子を思うかたわら、彼女にとってニューヨークやロバートの存在が日増しに大きくなっていく。
ジゼルとエドワード王子とのあいだに待っているこの物語の結末も、今までのディズニーでは考えられないほど破天荒なものだ。ただ、この物語はアニメのなかではなく、実写のなかで起こっている。実写には実写なりの愛の流儀があるということなのだろう。現に、現代ニューヨークにおいて、弁護士のロバートと、エドワード王子のどちらが魅力的な男かを考えれば、この結末がとても自然だということが分かる。
「白雪姫」や「シンデレラ」など自社の作品へのオマージュを込めつつ、同じく自社アニメをパロディ的な手法で大胆にイジった本作「魔法にかけられて」は、その異色の設定&展開により、従来のディズニーアニメファン以外の観客も満足させる1本だ。アニメの世界から実写に飛び出す登場人物たちに、子供たちが大喜びするのはもちろんのこと、現代ニューヨークを舞台にしたラブロマンスを描くことにより、大人たちの鑑賞に耐えうる内容に仕上がっている。
アニメと実写の互換自体は、取り立てて目新しいものではないが、その両者の“つながり”そのものに意味をもたせているところが、本作「魔法にかけられて」の妙味。陽気でノリのいいポップナンバーの数々も魅力のミュージカル映画だ。

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