山口拓朗公式サイト

「ウォンテッド」

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2008.9.12
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9月20日より公開される(9/13~15先行上映)「ウォンテッド」。
監督:ティムール・ベクマンベトフ 脚本:マーク・ミラー 出演:ジェームズ・マカヴォイ、アンジェリーナ・ジョリー、モーガン・フリーマン、テレンス・スタンプ、トーマス・クレッチマン、コモンほか 上映時間:110分 配給:2008アメリカ/東宝東和
上司にイジメられ、彼女に飽きられ……、うだつの上がらない生活に辟易していた若者ウェズリーは、ある日、目の前に表れた謎の女性フォックスから、自分の亡き父が、闇の暗殺組織をけん引する敏腕暗殺者だった事実を知らされる。王位を継承するよう説得されたウェズリーは悩んだ末に……。


ウェズリーは筋肉隆々のタフガイでも、とびきりクレバーな美男子でもない。上司にイビられ、恋人ともうまくいかず、いつもビクビクしている、ちょいと冴えない弱腰男だ。そんな男が、闇の暗殺組織で猛特訓(まるでリンチ!)を受けて殺人者として鍛え上げられていくのだが、彼の生来の性質がヒーロータイプではないことがかえって観客に親しみを抱かせ、ダメ男の“起死回生を狙う人生博打”として期待をもたせる。
殺人者としての資質を開花させていくウェズリーには、おあつらえ向きなミッションが用意されるが、そこはミステリー仕立て、その道すがら二転三転のドラマが待ち受けている。なかでも、アンジェリーナ・ジョリーが演じるフォックスの英断を含めたクライマックスの駆け引きは、いかにもエンターテインメントらしい会心の展開。観客は安心してそのジェットコースターを楽しめばいい。
一方、スーパースローやスーパーマイクロ的なショットを多投した映像も見どころ。クルマや鉄道を使ったド派手なアクションから弾丸にフォーカスしたコンマ数秒の世界まで、全編に渡って使われたVFX(ビジュアル・エフェクツ)が、スクリーンに圧倒的なダイナミズムとテンションを与えている。
ただし、作品の要となる暗殺組織の描き込みはやや物足りない。というより、おそらく綿密に描かれているであろう原作の世界を、映画という枠内に置き換えきれなかった、と言うべきだろうか。肝心なウェズリーと父の関係についても、そこに密な結びつきが感じられなかったのが残念だ。
とはいえ、ひとりの弱腰男の成長物語として、あるいは、マンガ的なビジュアル効果をふんだんに用いたアクション・エンターテインメントとしてとらえれば、それなりに楽しめるのが本作「ウォンテッド」だ。“織物を用いた暗号”や“個性的な銃の撃ち方”といったトピックも実におもしろいし、ダークな社会を舞台にしながらも随所にユーモアあふれる演出を挟み込んでいる点からも、この映画が狙った方向性は推して知るべし、だ。
時間の経過とともに顔つきが精悍になっていく主人公を好演したジェームズ・マカヴォイはもとより、スクリーンに重厚さをもたらす名優モーガン・フリーマン、そしてセリフは少なめながら、そのセクシーな美貌とスタイルとアクションで存在感を放つアンジェリーナ・ジョリーなど、実績豊富なキャストによる安定感のある演技が、動きのある物語の屋台骨を支えている。凝ったビジュアルを楽しみつつ、テンポとメリハリのあるストーリーを楽しみたい方にオススメだ。

お気に入り点数:75点/100点満点中

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