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「レッドクリフ Part1」

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2008.10.31
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11月1日より公開される「レッドクリフ Part1」。
監督・製作総指揮・製作・脚本:ジョン・ウー 音楽:岩代太郎 出演:トニー・レオン、金城武、チャン・フォンイー、チャン・チェン、ビッキー・チャオ、フー・ジュン、中村獅童、リン・チーリンほか 上映時間:145分 配給:2008米・中・台・韓・日/東宝東和=エイベックス・エンタテインメント
曹操(チャン・フォンイー)率いる大軍との戦いの末に逃げのびた劉備の軍師、孔明(金城武)。彼は、同じように曹操軍の存在を脅威に感じている孫権(チャン・チェン)と同盟を結ぶことを進言する。やがて孔明は孫権軍の司令官、周瑜(トニー・レオン)と対面。お互いに惹かれるものを感じ、少しずつ信頼関係を築いていくが……。


本作は前後編となる「レッドクリフ」の前編にあたる<Part1>。かの有名な「赤壁の戦い」の直前までを描いている(ちなみに、続編の<Part2>は半年後の公開だそう)。
日本でも人気のある『三国志』を題材にした壮大なスケールのスペクタル映画だ。数々ある『三国志』のエピソードを映画の尺に収めるのは当然難しく、エピソードを「赤壁の戦い」に限定したのは正解だろう。
『三国志』ビギナーでも十分鑑賞に耐えうるが、これまでに何らかのカタチで『三国志』に触れたことのある方、あるいは、『三国志』の登場人物に思い入れのある方のほうが、より楽しめることは間違いない。
戦国動乱期の歴史物語に教訓はつきものだが、劇中に挟まれる「わらじ」のエピソードは、日本で言うところの毛利元就の「三本の矢」。全編を貫くテーマは、ジョン・ウー監督の言葉を借りれば“愛と友情と勇気”だ。
本来、『NHK大河ドラマ』のように1年かけてやるような内容を、わずか2時間半×2回でやろうというのだから、登場人物の描き込みは当然甘くなる。
また、孔明と周瑜の関係などは、軍師同士につき、陰謀や知略や思惑がうず巻いているほうが本来自然だが、あまりに優等生なドラマにまとめ上げられすぎている。『三国志』に対する解釈の問題もあるのかもしれないが、もう少しドロドロした複雑な人間関係を描いてもよかったのではないだろうか。
人間心理を鋭く照射したドラマとは言いがたいが、メロドラマ風なエッセンスや叙情的な演出を交えつつ、物語をスマートかつ劇的にドライブしていくあたりは、ハリウッドで実績を積んだジョン・ウー監督の面目躍如か。つまり、本作は『三国志』をモチーフにしながら、ダレもが楽しめるよう現代向けにアップデイトされた、分かりやすい“愛と友情と勇気”の物語というわけだ。
映像的な見どころとなる合戦シーンでは、黒澤明の「七人の侍」へのオマージュとも思えるスピード感と熱気とリアリティを追求。スクリーンを所狭しと駆け回る千軍万馬がくり広げる合戦は、<Part1>最大の見どころであり、観客の視線をスクリーンにクギづけにする。
ジョン・ウーが私財までつぎ込んだという「レッドクリフ」は、圧倒的な人海戦術とセット、それに1000以上にもおよぶVFXを駆使して作り上げた一大歴史絵巻である。躍動感のある活劇は、劇場の大スクリーンで堪能すべき価値があるが、惜しまれるのは、やはり整いすぎた表層的な人間ドラマだろう。

お気に入り点数:65点/100点満点中

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