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「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」

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2008.11.13
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11月15日より公開される「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」。
監督・脚本:ジョージ・A・ロメロ 撮影:アダム・スウィカ 出演:ミシェル・モーガン、ジョシュ・クローズ、ショーン・ロバーツ、エイミー・ラロンド、ジョー・ディニコルほか 上映時間:95分・R-15 配給:2007米/プレシディオ
山中で自主制作映画のロケをしていた大学生たちの耳に、街で死人が蘇っているというニュースが飛び込む。ロケを中止して下山した彼らは、次々と遭遇するゾンビたちを手元のカメラに収めながら、生き残る術を探すが……。


『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(68)を撮ったゾンビ映画の巨匠、ジョージ・A・ロメロが、薄気味悪ささえ感じさせる現代のメディア社会を背景に、直球ど真ん中のゾンビ映画を作り上げた。
家庭用ハンディカメラ、携帯カメラ、防犯カメラ……。本作に登場する撮影カメラは、日本人にとっても身近なものばかりだ。どうせならGoogleマップのストリートビューあたりを登場させてもおもしろかったかもしれない。
ラジオ、テレビ、無線など、あらゆるメディアの情報が錯綜するなか、各地で撮影された個人の映像がネットにアップロードされ、事態が少しずつ輪郭を見せ始める。既成メディアを凌駕する情報の速度とリアリティは、現代社会を席巻しつつあるパーソナルメディアの真骨頂ともいえよう。
一方で、そうしたパーソナルメディアがもたらす“負の作用”に対しても、この映画は及び腰ではない。匿名の個人が発信する玉石混淆の情報が大波となって襲いかかってきたとき、どの情報を取捨選択するべきか、人々はその判断のよりどころをなくす。モラルさえ変質すると見え、ある者は暴徒化し、ある州兵は市民を助けず、あるテレビは作為的・恣意的な情報を流す。
そうした状況下で、ひたすら——そう、仲間が死にかけている瞬間でさえ——カメラを回し続けるエリック。彼の存在は、この映画が観客に投げかける“正しい価値とは何なのか?”という問いかけそのものである。カメラを撮り続けるエリックを、勇敢に思う人、嫌悪する人、その功罪を見極めかねる人……、観客が抱く感想はさまざまだろう。おそらくそこに、正解はない。
社会性やメッセージ性を十分に盛り込む一方で、基本的な部分において、ホラー映画として高いクオリティを誇っているのが、本作「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」だ。ゾンビの動きや登場のタイミングが心憎く、スプラッター描写の巧さが光る。また、そんなゾンビを退治する方法にも、さまざまなアイデアが盛り込まれ、観客をまったくと言っていいほど飽きさせない。
今どきの学生らしい会話をはじめ、ロケ撮影のデジャブシーン、殺しの小道具、口の利けない救世主風のおじさん……など、随所にちりばめたユーモアや風刺も、そのさじ加減が絶妙だ。ホラーであり、ピリ辛なテーゼであり、ユーモアあふれるエンターテインメントでもある。これぞ、凡百のゾンビ映画と一線を画す、カリスマ監督の面目躍如作といえよう。

お気に入り点数:80点/100点満点中

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