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「1408号室」

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2008.11.21
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11月22日より公開される「1408号室」。
監督:ミカエル・ハフストローム 脚本:マット・グリーンバーグ、スコット・アレクサンダー、ラリー・カラツェウスキー 原作:スティーヴン・キング 製作:ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ 出演:ジョン・キューザック、サミュエル・L・ジャクソン、メアリー・マコーマック、ジャスミン・ジェシカ・アンソニーほか 上映時間:107分 配給:2007米/ムービーアイ
心霊スポットに出向いてはルポを執筆するオカルト作家のエンズリン(ジョン・キューザック)。彼のもとにある日、ニューヨークのドルフィンホテルのはがきが届く。そこには「絶対に1408号室に入ってはいけない」とだけ書かれていた。好奇心を煽られたエンズリンは、さっそくドルフィンホテルに向かう……。


巨匠スティーヴン・キングの短編小説『一四〇八号室』原作のパニックスリラーだ。
主人公のエンズリンは、霊にもお化けにも懐疑的なドライで冷静なオカルト作家。唯物的とでも言おうか、目にしたもの以外のことは信じないタイプだ。
そんな頑固な作家の前に立ちはだかるのは、かつて宿泊客56人中56人が死亡したという1408号室だ。この1408号室がどれほどヤバい部屋であるかをまず教えてくれるのは、サミュエル・L・ジャクソン扮するホテルの支配人だ。
あるモノを見せながら、支配人がエンズリンに“部屋に入らないよう”説得するくだりは、観客にある種の覚悟を強いる。100%チェックアウトできない部屋。この時点で“部屋に入るべきではない”と誰もが確信する。そう、ただひとり、怖いもの知らずのエンズリンを除いては。
1408号室に足を踏み入れて以降は、強心臓なエンズリンが神経をすり減らしていく過程に、ハラハラドキドキさせられっぱなしだ。人一倍タフなエンズリンの精神が壊れゆくサマは、観客にとっても衝撃的。幾度となく部屋に流れるカーペンターズの『愛のプレリュード』が、不気味さと恐怖を増長させる。
一方で、中盤から後半にかけての描写は、やりすぎの観が否めない。手品のように変わる景色は圧巻だが、ビジュアル的な現実味がなくなるに連れて、残念ながら、精神的に追いつめられるような怖さは減衰する。
ただし、そこから急降下しないのが、この作品の真骨頂。「この部屋に何があるのか?」というなぞ解きが典型を踏まぬよう、一転二転のうえに、もうひと転がしした展開は秀逸だ。“ループ”する新たな恐怖に、多くの観客は言葉をなくすだろう。
主演のジョン・キューザックは、一見臆病そうな人相とは裏腹に、物怖じしない風変わりな作家を好演。ズタボロになりながらも、希望と作家魂を手放さない中盤以降に至っては、熱演を通り越して怪演だ。
ホラーと超自然の境を、そしてまた、現実と幻想の境を行き来する本作「1408号室」は、その現象の理由をあえて説明しない——というよりも、誰にも説明できないところにテーマ性をもたせている。
エンズリンを引き回すスリルあふれる展開を楽しむだけではなく、できれば「結局、1408号室とは何だったのか?」について、鑑賞後に誰かと意見を交わし、濃厚な作品のあと味を楽しみたいところである。

お気に入り点数:75点/100点満点中

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