「デス・レース」
2008.11.27
11月29日より公開される「
監督・脚本:ポール・W.S.アンダーソン 出演:ジェイソン・ステイサム、 ジョアン・アレン、タイリース・ギブソン、イアン・マクシェーン、ナタリー・マルティネス、ジェイソン・クラークほか 上映時間:105分 PG-12 配給:2008米/東宝東和
舞台は2012年のアメリカ。親子三人で幸せな暮らしを送っていた元レーサーのエイムズ(ジェイソン・ステイサム)は、ある日、妻殺しの濡れ衣を着せられて、凶悪犯罪者ばかりを収容する刑務所「ターミナル・アイランド」に収監される。彼は刑務所長のヘネシー(ジョアン・アレン)から、所内で行われる残酷なカーレース“デス・レース”への出場を持ちかけられ……。
デス・レースに参加するのは、フォード・マスタングをはじめ、ポルシェ911、ジャガーXJSなど、スピード自慢の精鋭たち。だが、それらのクルマを見てビックリ、だ。
甲冑よろしくぶ厚い鉄板を巻いたボディには、マシンガンだー、バルカン砲だー、ロケットだー、と重装備が施され、カーマニア垂涎のクルマたちは、百戦錬磨の戦闘マシンへと大変身。通常、レーシングカーというのは、軽量化に腐心するものだが、その対極をいく超重量化だ。でもそれは仕方がない。車体が多少(どころではないが)重くなろうと、戦闘で負けたら、即、“死”が待っているのだから。
もちろん、見どころはレースに尽きる。いや、デス・レースとは名ばかりのデス・バトルだ。1台また1台と戦闘マシンが消えていくくだりは、もはやバーチャルなゲームの世界。どのクルマが、どんな攻撃、あるいは防御を行うか、あるいは、各車がどのような最期を遂げるか、そのあたりに興味を向けるのが、この映画を楽しむコツ。映像もリアルで迫力満点だ。
ただし、物語としての魅力は微量だ。せっかくの陰謀ネタをうまく料理できていないため、すべての展開が予見可能な予定調和。また、せっかく揃えた凶悪犯罪者たちの個性が発揮されておらず、キーマンとなる利己主義的な主催者のヒールぶりも、それなり止まりだ。
主人公エイムズのキャラクターにも疑問符を付けたい。あまりに犯罪者風情が板につきすぎているせいだろうか、妻を殺された男の、そして、無実の罪を着せられた男の“悲哀”や“無念さ”、“怒り”といったものが見えにくい。マッチョで剛毅木訥という方向性は分からなくもないが、それも程度問題。さじ加減を間違えると人間味を欠いてしまう好例だろう。
臨場感あふれるスリルとダイナミックなアクションを楽しむ。あるいは、重装備を施した戦闘マシンの仕様を楽しむ。そうした割り切りができる方(とくに男性)には格好の作品だが、重厚な人間ドラマや繊細な心理描写を楽しみたいという方には、残念ながら、本作「デス・レース」はオススメできない。クルマの武装やアクションシーンにかけたこだわりの何割かでも、設定の掘り下げや展開力、心理描写などに割かれていたなら……、と惜しまれる1本だ。
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