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「プライド」

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2009.1.5
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1月17日より公開される「プライド」。
監督:金子修介 原作:一条ゆかり 脚本:高橋美幸、伊藤秀裕 撮影:高間賢治 美術:高橋俊秋 音楽:清水信之 出演:ステファニー、満島ひかり、渡辺大、高島礼子、及川光博、由紀さおり、五大路子、ジョン・カビラ、キムラ緑子、新山千春、黒川智花、長門裕之ほか 上映時間:126分 配給:2008日/ヘキサゴン・ピクチャーズ+シナジー
亡き人気オペラ歌手の娘で、裕福な家で育った史緒(ステファニー)と、酒浸りの母親と貧しい暮らしをする萌(満島ひかり)。オペラ歌手を目指すふたりは、イタリア留学をかけ、神野(及川光博)のレコード会社が主催するコンクールに出場する。史緒が優勢かと思われたが、決勝前に、萌は史緒の動揺を誘う作戦に出る……。


人気漫画家、一条ゆかりの原作『プライド』が待望の実写映画化。オペラという高尚でゴージャスな世界を舞台にくり広げる、育ちも性格もまったく異なる女ふたりの激しいバトルは、まさしく漫画から飛び出してきたソレ。“マンガ的”という言葉がここまで似合う作品も少ないだろうし、また、“マンガ的”であることを受け入れなければ、この映画を楽しむことは不可能。必要なのは、昼メロ(ドロドロした愛憎劇)を見るときのような割り切りだ。
主人公ふたりのキャラの立ちっぷりがナイスだ。とくに満島ひかりが扮する萌は、純朴な少女を演じるのも朝メシ前というしたたかさを武器に、自身の人生をグイグイとドライブする(ときに自爆しつつ)。野心、嫉妬心、共に旺盛。自分の成功のためならば、他人を傷つけることもいとわない。この自己顕示欲むき出し女の存在は、ある意味、痛快だ。
一方、ステファニー扮する史緒も、鼻っ柱の強さとプライドの高さが一級品というゴリゴリのキャラクター。劇中、突き落とされた奈落の底で白旗を揚げるかと思いきや……、逆に開き直って、“育ちのよさ”で萌を出し抜く作戦に出る。このツッコミどころ満載のふたりの一進一退を、あえてツッコミを入れずに傍観するのが、この映画の正しい見方だと信じる。
実のところ、壮絶というよりは不毛と言うべきバトルに、2時間以上付き合うのはラクではない。また、ドラマの着地点に安っぽいノーサイドを用意しなかった点は評価するが、クライマックスの楽曲にオペラが用いられなかった点には、大いに失望させられた。
そもそも、オペラ歌手志望が主人公であるにもかかわらず、オペラの見せ場が最初の一度だけというのは、あまりに寂しい。中盤でふたりが披露するデュエット『A Song For You』あたりは、それなりに聴きごたえがあるが、いくら聴きごたえがあっても、オペラとポップスは、歌唱法という点において、まったくの別モノ。そこで美声を響かせようという(演出上の)狙いが理解できない。吹き替えの懸案があったにせよ、制作者はもっとどん欲にオペラにこだわるべきではなかったか。
“プライド”とは、持つべきものなのか、捨てるべきものなのか。その判断は、各人の人生観や価値観によってまちまちだろうが、ときに自分自身を助け、ときに苦しめる(おとしめる)プライドとは、言うなれば人生の象徴のようなものか。本作「プライド」では、その作用と反作用を、女同士の泥仕合というすさまじいモチーフを介して描いている。
メガホンを取ったのは『ガメラ』をはじめ、数多くの怪獣映画を手がけてきた金子修介監督だが、なるほど、主人公ふたりのバトルを怪獣のバトルに重ね合わせたのであれば、それ以上のウィットはあるまい。鑑賞オススメ対象者は、「原作のファン」と「昼メロ好き」、それに「怪獣映画ファン」ということになるだろうか。

お気に入り点数:50点/100点満点中

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