「ヘルライド」
2009.1.14
1月17日より公開される「
監督・脚本・製作:ラリー・ビショップ 製作総指揮:クエンティン・タランティーノ 出演:ラリー・ビショップ、マイケル・マドセン、エリック・バルフォー、レオノア・バレラ、デイビッド・キャラダイン、ビニー・ジョーンズ、デニス・ホッパーほか 上映時間:84分 配給:2008米/ムービーアイ
ビストレロ(ラリー・ビショップ)が率いるバイカー・チーム“ヴィクターズ”は、敵対するチーム“シックス・シックス・シックス”に仲間を殺される。ピストレロは、仲間のジェント(マイケル・マドセン)、コマンチ(エリック・バルフォー)らと復讐を決意。敵のアジトに乗り込み、さらに、敵のリーダーを追って旅に出る……。
奇才タランティーノが、バイカー映画への出演経験が豊富なラリー・ビショップに声をかけて制作が実現した本作「ヘルライド」は、全米でわずか2週間で公開が打ち切られたことにも証明されているように、万人受けしないこと120%の、B級気分フルスロットルのバイカー・バイオレンス・ムービーだ。
物語の軸は、バイカー同士の闘争だ。30年以上も前に起きたある抗争、その火種が時を越えて一気に発火。無法地帯と化した荒野を舞台に、鉄拳が! ナイフが! ボーガンが! 弾丸が! 交錯する。彩度を抑えたスクリーンに映し出される荒野とバイクの相性はピカイチで、野太く轟くエキゾーストノートは、ロックやロカビリーのBGM同様に、サウンド面から物語をアシストする。
次々と描かれるのは、無軌道かつ無秩序な中年バイカーたちの生活ぶりだ。SEX、ドラック、バイオレンスのオンパレードは、アウトロー志向な観客(とくに男性!)の心をワシづかみにすること間違いなし。グラマラスな女性たちが、エロっ気たっぷりに男たちを挑発するシーンなどは、ほとんど男性客を意識したサービスショットのようなものだ。
酒をあおり、葉っぱをキメ、乱交にいそしむオールナイトパーティは、何モノにも服従しないバイカーたちの絶対的な自由を象徴する一方で、刹那をヨシとする彼らのリスキーな人生をも浮き彫りにする。反体制と放蕩に両足をつけた生き方には、なぜかいつも孤独と哀愁が付きまとう。
もちろん、この映画は、バイカー映画の金字塔「イージー・ライダー」(69年)に匹敵するような名作ではないし、むしろ、「イージー・ライダー」の周辺にゴマンとあったB級映画然とした作品に近い。……と書けば皮肉にきこえるかもしれながいが、そうではなく、この映画は、そうしたB級映画を愛してやまない人たちが、作るべくして作った作品だということだ。
昨今のバイカー映画といえば、コメディタッチのロードームービー「団塊ボーイズ」(07年)が記憶に新しい。おもしろいことに、「団塊ボーイズ」では、「イージー・ライダー」のピーター・フォンダがカメオ出演していたが、本作「ヘルライド」では、なんと、同じく「イージー・ライダー」のデニス・ホッパーが出演している。映画ファンには、垂涎のキャスティングといえるだろう。
バイカー映画はもはや同窓会ノリでしか成り立たないというお墨付きを、みずから与えてしまったような観さえある本作「ヘルライド」は、いろいろな意味で確信犯的なニオイがぷんぷんする作品だ。クライマックスでつまびらかにされる、過去の秘密にまつわる美談については、その“座りのよさ”に対して、中指を立てるくらいでちょうどいい。おそらく制作者たちも、それくらいROCKなレスポンスを望んでいるに違いない。
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