「マンマ・ミーア!」
2009.2.2
公開中の「
監督:フィリダ・ロイド 製作:ジュディ・クレーマー、ゲイリー・ゴーツマン 脚本:キャサリン・ジョンソン 作詞・作曲:ベニー・アンダーソン、ビョルン・ウルヴァース 出演:メリル・ストリープ、ピアース・ブロスナン、コリン・ファース、ステラン・スカルスガルド、アマンダ・セイフライド、ドミニク・クーパー、ジュリー・ウォルターズ、クリスティーン・バランスキーほか 上映時間:108分 配給:2008米/東宝東和
舞台はギリシャの小島。リゾートホテルを経営するドナ(メリル・ストリープ)の一人娘ソフィ(アマンダ・セイフライド)は、結婚式を翌日に控えていた。そんななか、ドナのかつての恋人3人が島にやって来た。父親不在で育ったソフィが、<パパと一緒にバージンロードを歩きたい!>と、自分の父親の可能性がある3人に結婚式の招待状を送っていたのだ。20年ぶりに現れた元カレたちを前に、ドナはパニックに陥り……。
70年代中盤から80年代初頭にヒット曲を連発したABBA(アバ)の楽曲で構成される人気のブロードウェイ・ミュージカル「マンマ・ミーア!」が映画化。<一緒に歌いたい!>いう観客の要望を受けて、全米ではカラオケ・バージョンまで上映される人気ぶり。ミュージカル映画の興行収入記録を次々と塗り替えている話題作だ。
結婚式前日に新婦の父親候補3人が一堂に会す。この突飛な設定を動力源に展開される物語は、「つかみ」のユニークさとは裏腹に、その内容はというと——ほとんどないに等しい。ドナと元カレ3人の関係性も、ドナとソフィの親子愛も、ソフィの父親に対する思いも、おしなべて生煮え状態。言い方を変えるなら、色あせないABBAの音楽だけが生命線のミュージカル映画ともいえる。
ダンサブルなアッパーチューンを中心に、ポップスシーンに一時代を築いたABBAの代表曲が全編を彩る。哀しい気持ちも、迷う心も、波瀾万丈の人生も、ABBAの曲に乗せればすべて輝く! と言わんばかりの底抜けハッピー路線。キャストの歌唱レベルはお世辞にも高いとはいえないが、そうしたマイナス点さえも、勢いとノリでねじ伏せる。
注目すべきは、ドナを含むエネルギッシュなおばさんトリオと、年相応の寛容さを身にまとうドナの元カレ3人衆だ。彼らが不器用ながらも一所懸命に歌い踊る姿は、<一緒に歌いたい!>とまではさすがに思わないシャイな日本の観客を勇気づけるか、ドン引きさせるかのどちらかだ。もちろん、ABBAをBGMに青春を謳歌した人たちのなかには、懐かしのあの曲この曲に、忘れかけていた思い出をよみがえらせる人もいるだろう。
「Dancing Queen」をはじめとしたABBAの陽気な楽曲群もさることながら、「Our Last Summer 」「Lay All Your Love On Me」「The Winnner Takes It All」「When All Is Said And Done」など、詞やメロディにそこはかとない物悲しさをにじませたナンバーにも、ABBAの魅力が詰まっている。
106分を一気に駆け抜ける本作「マンマ・ミーア!」は、美しいギリシァの小島の上でABBAの楽曲をひたすら歌い&踊り倒す超ゴーイング・マイ・ウェイな娯楽ミュージカルだ。メリル・ストリープほか熟年に片足を突っ込んだキャストたちの“あまりの”頑張りぶりに痛々しさを感じないわけではないが、それでもこの映画が憎めないのは、やはりABBAマジックなのだろうか。
平面的かつ呑気な内容だけに、エッジの利いたインディペンデント映画やインディーズ音楽を愛する人にはオススメしがたいが、オンタイムでABBAに熱狂した世代や、音楽史が認める極上のポップ・ワールドにどっぷり浸かりたい方は、ぜひ劇場に足をお運びのほど。オペラ基調の重厚なミュージカルが苦手という方も、これなら楽しめるかもしれない。
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