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映画批評「フロスト×ニクソン」

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2009.3.27 映画批評
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3月28日より公開される「フロスト×ニクソン」。
監督:ロン・ハワード 脚本・原作・製作総指揮:ピーター・モーガン 撮影:サルバトーレ・トッチーノ 美術:マイケル・コレンブリス 音楽:ハンス・ジマー 編集:マイク・ヒル、ダン・ハンレー 出演:フランク・ランジェラ、マイケル・シーン、ケビン・ベーコン、レベッカ・ホール、マシュー・マクファディン、オリバー・プラット、サム・ロックウェルほか 上映時間:122分 配給:2008米/東宝東和
イギリスとオーストラリアで活躍する人気司会者デビッド・フロスト(マイケル・シーン)が、アメリカ進出の足がかりにしようと、ウォーターゲート事件で辞職した元米国大統領リチャード・ニクソン(フランク・ランジェラ)のインタビュー番組を企画する。一方のニクソンは、政界復帰をにらんでインタビューのオファーを受けるが……。


フロストが1977年に行ったニクソン元大統領へのインタビューを再現した作品だ。4500万人ものアメリカ国民が目撃したというこの歴史的インタビューは、その場でのニクソンの発言の重大さもあって、未だに語りぐさになっているという。いちどは舞台劇で話題を呼んだ演目を、このたび映画として焼き直したのが本作。アカデミー賞では主要5部門でノミネートを果たした。
インタビューを実現させるべくフロストがスポンサー集めに東奔西走するくだりなどは、フリー司会者のサガのようなものが垣間見られて、なかなか見ごたえがある(ニクソンのギャラを自腹で捻出する根性の入りっぷり!)。フロストにとってニクソンのインタビューを成功させることは(=ニクソンから事件の真相を聞き、国民に謝罪させることは)、アメリカTV業界行きのプラチナチケットを手に入れることだ。万が一失敗したときは、アメリカで仕事の場を失うリスクを承知したうえでの、一か八かの勝負である。
もちろん、ニクソンとて、謝罪するためにわざわざインタビューに応じたわけではない。その裏には、政界に返り咲く足がかりを築くため、という打算がある。そんな両者の思惑と思惑が交錯するこのインタビューがおもしろくないはずがない。
映画のタイトルは「フロスト×ニクソン」だが、厳密には、互いにブレーン数人を集めての団体戦「フロストチーム×ニクソンチーム」の様相を呈す。火花を散らすフロストとニクソンに、鋭くも的確な助言(ときに叱咤!)をするブレーンたちの頑張りぶりも痛快。公式サイトに書かれている「ボクシングのタイトルマッチのよう」という表現は言い得て妙だ。
事前の駆け引きからインタビュー本番の舌戦までを、緊張感を保ちながらスリリングに描いていき、観客の興味を最後の最後まで引きつける。ただし、本来いちばんの見どころとなるはずの終盤戦に、演出的な粘りが感じられなかったのが残念だ。ニクソンは一流にして老獪な策士。あらゆる反撃に対して交戦可能な詭弁術や責任転嫁術を持っていたはずなのだが、潮目の変化は想像以上にあっさりと訪れる。
フロストを演じたマイケル・シーンとニクソンを演じたフランク・ランジェラの演技バトルも見逃せない。互いにプライドをもつ男のメンタル——野心や知性や孤独やしたたかさ等——を、彼らは絶妙な表情で演じ分ける。フロストとニクソンの舌戦は、取りも直さずマイケル・シーンとフランク・ランジェラの演技対決でもあるところが、この作品のおもしろいところである。
ウォーターゲート事件を知らずとも十分に楽しめるという点においても、本作「フロスト×ニクソン」は、質の高いエンターテインメント作品といえる。アメリカ進出を狙うフロストと政界復帰を狙うニクソンの物語を、「ダ・ヴィンチ・コード」の汚名挽回を目論むロン・ハワード監督が撮ったのも、何かの因縁というやつだろうか。

お気に入り点数:80点/100点満点中

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