2010年下半期 「映画」未批評作品 前編
2011.1.5
批評し損ねた2010年下半期の作品を、一気にプチ批評!<前編>
「小さな命が呼ぶとき」(アメリカ)
ブレンダン・フレイザーとハリソン・フォードが競演。難病の子供を救うために製薬会社まで起こした父親の実話を映画化。軸は家族愛と治療薬開発の裏舞台。官僚的な製薬会社の社員たちとエキセントリックな天才科学者の対比が興味深い。題材は真剣だが、演出は娯楽性を重視。社会派風を装ったエンターテインメント作だ。 45点
「ビューティフル アイランズ」(日本)
南太平洋に浮かぶ小さな島国ツバル、海上都市ベネチア、アラスカ最西端のシシマレフ島という3つの島の日常を切り取りながら、環境破壊(温暖化)の実態を浮き彫りにした独創的なアプローチのドキュメンタリー映画。気候も文化も異なる3つの島で生きる人々の暮らしぶりにも注目だ。監督は日本人、海南友子。 60点
「シュアリー・サムデイ」(日本)
今をときめく若手俳優、小栗旬の初監督作品。荒唐無稽で荒削りで破天荒でご都合主義な青春映画。だけどやたらと「熱」だけはある。この「熱」こそが小栗旬の才能であり、可能性なのだろう。同時代の閉塞感を振り払うエネルギッシュで明快なメッセージは、小栗世代には突き刺さるのかもしれない。 35点
「告白」(日本)
湊かなえの原作、中島哲也監督、松たか子主演。2010年度邦画No.1作品だろう。いや10年に1度の映画かもしれない。シュールで挑発的な映像と音楽を織り交ぜながら、現代の日本社会に巣食うジレンマ著しい難問に切れ込む。極端なストーリー展開がまったく気にならないのは、心情がリアルに描かれているから。 90点
「ようこそ、アムステルダム国立美術館へ」(オランダ)
美術館改装工事を巡る人々の不毛な丁々発止、百家争鳴を追ったドキュメンタリー。館長や学芸員、建築家、市民団体らの主張と思惑が妥協点を見つけられぬままプロジェクトは大難航を強いられる。オランダ人の貪欲な民主主義精神は買うが、暗礁に乗り上げっぱなしの議論は滑稽そのもの。 65点
「グッドモーニングプレジデント」(韓国)
『トンマッコルへようこそ』の脚本を手がけた奇才チャン・ジン監督&脚本作品。「公人」と「私人」の両面から3人の大統領の人間味あふれる素顔に迫った名作。風刺ありユーモアありのチャン・ジン節は、本作でも切れ味十分。愛すべき3人の大統領の一挙手一投足がほほ笑ましい。 80点
「パラレルライフ」(韓国)
クォン・ホヨン監督、チ・ジニ主演。<2人の人間が同じ運命をくり返す>=パラレルライフをテーマにしたミステリースリラー。入り組んだ展開と運命に翻弄される主人公に注目。一転二転三転の展開は緻密でスピード感にあふれるが、映画構造の「虚」に頼りすぎている観もある。 40点
「ヒックとドラゴン」(アメリカ)
ドリーム・ワークスアニメーションのファンタジー大作。単なる気弱な少年の成長物語ではなく、少年の本質的な魅力に大人たちが気づいていくという側面をもつ物語。 不安と怯えを克服することから、真の交流がスタートする。その直球のメッセージは子供たちの心に響くだろう。ドラゴンの疾風のごとき飛翔スピードが痛快だ。 70点
「シルビアのいる街で」(スペイン、フランス)
ホセ・ルイス・ゲリン監督。主人公の青年の主観的な視点と、彼を追う客観的な視点を通じて、風情漂うストラスブールの人と街を活写。光と音にあふれる美しいコラージュのような作品。“オブセッション”の恋をモチーフに、「音」と「視線」に重要な役割を担わせた斬新な手法に脱帽。 75点
「借りぐらしのアリエッティ」 (日本)
スタジオジブリの最新作。外敵に怯えながらも、知恵を使って慎ましやかに暮らす小人家族の物語。魅力的な設定をもつ良作ながら、小人社会の歴史や実状、「絶滅危惧」というテーマの掘り下げが甘いために、心なしか不完全燃焼な印象を与える。近年の宮崎作品に共通する「死の気配」に対する賛否も分かれるだろう。 50点
「インセプション」(アメリカ)
クリストファー・ローラン監督×レオナルド・ディカプリオ主演。現実と夢の重層世界を舞台にした、集中力を要する、しかしながら解釈のし甲斐のある1本。観客のIQを試すかのようなインテリジェンスなストーリーテリングは文句なしの一級品。『マトリックス』や『バタフライ・エフェクト』あたりの作品が好きな方にオススメ。 90点
「ヤギと男と男と壁と」 (アメリカ、イギリス)
『実録・アメリカ超能力部隊』原作、ジョージ・クルーニーら豪華俳優陣出演。まじめに超能力開発に打ち込む米軍を小バカにしたおトボケ作品。常識から半音フラットさせたかのような笑いと、軽すぎるストーリー展開に脱力必至。ユーモア精神なき方は、くれぐれも鑑賞されませぬよう。 55点
「ベスト・キッド」(アメリカ)
84年の名作「ベスト・キッド」が北京を舞台にリメイク。弱気主人公が成長して強敵を打ち破る。そんな定番サクセスストーリーはオリジナルを踏襲しているが、随所に中国らしいエッセンスを添加。名子役ジェイデン・スミスの頑張りと、哀愁漂うジャッキー・チェンの存在感で勝負アリ。 65点
「シークレット」(韓国)
チャ・スンウォン主演。ある刑事が殺害現場に妻がいた痕跡を発見したことに端を発するミステリー&サスペンス。秘密を隠す妻と証拠を隠す夫の駆け引きと、伏線納得の二転三転が見どころだ……が、近年の韓国映画(サスペンス)の凝りまくった展開には「ついて行くのがひと苦労」という人もいるだろう? 55点
「メッセージ そして、愛が残る」(ドイツ、カナダ、フランス)
死に直面した主人公が死を受け入れるまでの葛藤を描いた物語。ヒネリの利きすぎた展開がやや鼻につくが、「死」や「家族愛」といった普遍的なテーマと向かい合う姿勢は真摯。舞台がアメリカであるにも関わらず、主演のロマン・デュリスほかスタッフの多くがフランス人であるため、ヨーロッパ的な繊細さと湿り気を含んでいる。 40点
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