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映画批評「そして父になる」

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2013.11.25 映画批評
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公開中の「そして父になる」。
監督・脚本:是枝裕和 出演:福山雅治、尾野真千子、真木よう子、リリー・フランキー
ほか 上映時間:120分 配給:2013年日/ギャガ
映画『そして父になる』は、ひとりの父親の成長の物語だ。
6年間、大切に育ててきた息子が、じつは、出生時に病院で取り違えられた他人の子だった、という物語。


大切なのは、血のつながりか? それとも、過ごした時間か?
表向きは、子供を交換するべきかどうか、答えを出せずに葛藤する2組の夫婦の物語である。
しかし、映画の視点は、4人のうちのひとり、福山雅治演じる父親(良多)に、より強く、鋭く注がれていく。
良太が口にした「やっぱり…」というひと言が浮き彫りにするのは、彼自身の「欠落」ともいえるものだ。
しかし、彼はその「欠落」が何であるかに気づかない。いや、そもそも自分が「欠落」していることにさえ気づかないのだ。
この無自覚さが、観客を苛立たせる。
どこか傲慢で身勝手な一流企業のエリート。他人の気持ちに鈍感な一挙一動が憎たらしい。
そんなヒール的存在の良太が、息子に課した「あるミッション」をきっかけに、自分の内側からこみ上げてくるピュアな父性に気づき、父親として、人間として成長を遂げる物語である。
良太が最後に下した決断はいかに?
その答えは、スクリーンでお確かめのほど。
町のボロい電気屋に溶け込む黒塗りの高級車「レクサス」。電気屋の入り口に吸い込まれていく2組の家族…。このラストショットが、本作のメッセージだろうか。
是枝裕和監督のていねいな人物描写が光る秀作だ。

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