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映画批評「はやぶさ/HAYABUSA」

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2011.9.29 映画批評
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10月1日より公開される「はやぶさ/HAYABUSA」。
監督:堤幸彦 プロデューサー:井上潔 、宮崎大 、市山竜次 脚本:奥平綾子 、井上潔 協力:JAXA(宇宙航空研究開発機構) 出演:竹内結子、西田敏行、高嶋政宏、佐野史郎、山本耕史、鶴見辰吾、筧利夫、市川実和子、甲本雅裕、マギーほか 上映時間:140分 配給:2011年日本/20世紀フォックス映画
2010年6月、絶体絶命の危機を脱して帰還を果たした小惑星探査機<はやぶさ>。もしもこの探査機が完璧にミッションをこなして予定通りに帰還していたなら、あるいは日本列島を熱狂の渦で巻き込むほどの話題にはならなかったのかもしれない。
逆を言えば、<はやぶさ>の前に立ちはだかった障害――小惑星への不時着、交信途絶、燃料漏れ、イオンエンジンの停止など――があまりに大きく致命的だったといえよう。だから、彼(!)の帰還は“奇跡”と呼ばれ、人々に感動を与えたのだ。
本作のクランクイン前に、東日本大震災が起きたのはもちろん想定外だが、幾多の苦難を乗り越えた<はやぶさ>の実話に基づいた映画『はやぶさ/HAYABUSA』が、今このタイミングで公開されるのは、偶然の顔をした必然のように思えてならない。
奇跡の帰還を支えたプロジェクトスタッフの志と信念、そして飽くなき探究心に目を付けたのは、本作の発案者でもある井上潔プロデューサーの隻眼といえるだろう。井上プロデューサーは監督に『20世紀少年』シリーズの堤幸彦を招聘、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の全面協力、さらにはハリウッドのメジャースタジオ「20世紀フォックス」を巻き込んでの撮影をスタートさせた。


2002年、宇宙オタクの水沢恵(竹内結子)は、JAXA(宇宙航空研究開発機構)対外協力室室長(西田敏行)に誘われて宇宙科学研究所の一員となる。翌2003年、さまざまな苦難を乗り越えて小惑星探査機<はやぶさ>が打ち上げられた。月以外の小惑星のサンプルを持ち帰るという世界初のミッションに挑むためだ。2005年、<はやぶさ>は小惑星イトカワへの着陸に成功するが、その後、広大な宇宙空間で行方不明になってしまう。しかし、科学者たちは決して<はやぶさ>を見捨てようとはしなかった……。
特筆すべきは、関係者に徹底した取材を行って、人物の容姿から管制室の様子まで「完全コピー」を目指したというリアリティだ。実話の再現性にとらわれすぎて大ゴケした映画は数知れないが、今回はそうしたリスクを背負ってもなお<はやぶさ>に情熱を注いだ関係者への敬意を最優先。机上で用意した美談とは一線を画す泥臭い人間ドラマを紡ぎながら、スクリーンに、<はやぶさ>プロジェクトに懸ける関係者の「熱い思い」を焼き付けることに成功している。難しい専門用語には字幕で注釈を付けるなど観客への気配りも忘れていない。
宇宙空間をひとりきりで旅する<はやぶさ>は、最新鋭のVFXを駆使した精密なCG映像で再現。時折、登場人物の台詞を借りて<はやぶさ>にまつわる構造解説を挟む演出も心憎く、劇場を出るときには、すべての観客が工学的観点から<はやぶさ>を語れる「にわか宇宙マニア」となっているはずだ。
宇宙分野における歴史的偉業を映画化したにしては、仕上がりがやや地味な気もするが、いかにもハリウッド好みな「お涙ちょうだいドラマ」を回避した点は評価できる。おあつらえ向きな感動で観客をその気にさせるのではなく、<はやぶさ>を愛してやまない人々の夢と誇りに焦点を当てることで、観客自身が心に宿すそれぞれの自信と勇気を呼び起こす。そんな力強さを秘めた作品だ。どうやら微粒子以上に大きな成果を<はやぶさ>は持ち帰ったようである。

お気に入り点数:70点/100点満点中

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