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映画批評「ツレがうつになりまして。」

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2011.12.31 映画批評
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公開中の「ツレがうつになりまして。」。
監督:佐々部清 原作:細川貂々 脚本:青島武 出演:宮崎あおい、堺雅人、吹越満、津田寛治、犬塚弘、梅沢富美男、大杉漣、余貴美子ほか 上映時間:126分 配給:2011年日本/東映
かつて花粉症がじわじわと国民病として台頭してきたように、近い将来、うつ病もまた国民病になってしまうのか? 
そんな推測すら「当たらずといえども遠からず」な気配が漂う今日このごろ、細川貂々のベストセラーコミック原作の映画『ツレがうつになりまして。』は、多くの人が漠然としか把握していない「うつ病」について、正しい情報を伝えるという啓蒙的役割を果たしている。
高崎晴子(宮崎あおい)は、まじめで完璧主義の夫のツレ(堺雅人)、そしてイグアナのイグと暮らしている。ある日、体調を崩したツレが病院でうつ病(心因性うつ病)の診断を受ける。ツレの変化にまったく気付かなかった晴子は、妻としての至らなさを反省する一方で、うつ病の原因が会社でのストレスにあったことからツレに退職を迫る。会社を辞めたツレは少しずつ体調を回復させているように見えたが……。


誰がなってもおかしくない――。このセリフも、花粉症同様に、うつ病を表現するときに、よく使われる言葉だ。しかし、病気の特性とメカニズムを正しく理解すれば、おそらくうつ病は、花粉症よりも予防しやすい病気なのではないだろうか?
そう感じたのは、この映画が、ツレの”几帳面がすぎる”所作(つまりは思考)を通じて、うつ病になりやすい傾向の人間と、うつ病の症状を適確に描いているからだ。傾向があるということは、対策が可能ということだ。
老婆心ながら、ツレの性格に共感できてしまう人、あるいはツレが襲われる症状に身に覚えのある人は、生活や職場環境、あるいは思考や習慣をいち早く変えたほうがいいだろう。どう変えたらいいかは、夫婦の同居人であるイグが、その存在をもってして教えてくれる。
ツレ一人の単なる闘病記なら、さほど高い評価を与える必要のない映画だったかもしれない。ところが本作では、絶妙な距離感で精神的にツレをサポートする妻の物語も描かれている。なにも、病気になった人間の人生だけが波瀾万丈なわけではなく、それを見守る人間にもまた波瀾万丈はある。その平等・公平な視線が、この作品に説得力を与えている。
「1シークエンス=1エピソード」の形態で進む小気味の良い展開と、ツレと妻の複眼が盛り込まれている点、そして、同居人であるイグの”あり方”に、うつ病克服のヒントを重ねている点などが、映画としての妙味といえるだろう。
大河ドラマ『篤姫』でも夫婦役を演じた堺雅人と宮崎あおいが、イマドキ風の夫婦を抜群のコンビネーションで演じている。潜在的なうつ病患者に警笛を鳴らすシリアスさの一方で、夫婦の絆と成長をユーモアを交えて描き、ハートウォームな感動も与えてくれる『ツレうつ』。大切なパートナーとの観賞をオススメしたい。

お気に入り点数:75点/100点満点中

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