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映画批評「永遠の僕たち」

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2012.1.17 映画批評
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公開中の「永遠の僕たち」。
監督:ガス・ヴァン・サント 脚本:ジェイソン・リュウ 出演:ヘンリー・ホッパー、ミア・ワシコウスカ、加瀬亮、シュイラー・フィスク、ジェーン・アダムス、ルシア・ストラス、チン・ハンほか 上映時間:90分 配給:2011年米/ソニーピクチャーズ
上映時間はわずか90分、5600秒。『ミルク』(2008年)のガス・ヴァン・サント監督は、この限られた時間に「生きること、愛することの尊さ」を密閉した。ぜい肉のない必要最低限の描写で、「死」というテーマと対峙した、世にも美しいラブストーリーだ。風変わりな脚本も、瑞々しい映像や繊細な音楽も、すべてがこの美しいパズルを完成させるために不可欠なピースである。 
交通事故で両親を失った少年イーノック(ヘンリー・ホッパー)は、高校を中退後、怠惰な日常を送っていた。彼の唯一の友人は、彼にしか見えない日本人特攻隊員の幽霊ヒロシ(加瀬亮)だけ。アカの他人の葬式に潜入する趣味があるイーノックは、ある葬式で少女アナベル(ミア・ワシコウスカ)と出会う。彼女は癌で闘病中だったが、ある日の検査で癌が再発していることが発覚し……。


イーノックとアナベル。葬式で知り合った、「死」が共通点のふたりだが、そのベクトルはまったく異なる。アナベルは「死」を間近に感じながらも、自然界の美しさに魅了される心の持ち主。一方のイーノックは、両親の死を経て、死を恨み、生きることを諦めてしまっている。
ふたりにとっては、お互いが必然。自分に足りない部分を補ってくれる凹と凸のような関係だ。アナベルとの交流を通じて、イーノックは「生」に目覚め、アナベルは「死」を受け入れていく。
初めは変質者のようにしか見えなかったイーノックだが、物語が進むうちに、少しずつそのトラウマと哀しみが見えてくる。映画の冒頭と最後で主人公の印象がこれほど変わる映画も珍しい。しかし、彼がひた隠しにしてきた「心の叫び」が、人生で初めて本気で好きになった、しかも余命いくばくもない異性によって露になっていく点が、この映画の泣けるところであり、美しいところである。
幽霊であるヒロシの可視化は、いかにも「映画(=虚構)」らしい演出といえよう。しかも、奇をてらった”お飾り”としてではなく、「戦死した特攻隊員」という設定を通じて、少しずつヒロシ自身の「無念さ」もあぶり出していく。哀しい最期を迎えたはずのヒロシ。彼はなぜイーノックに寄り添い続けていたのだろうか? 鑑賞後にそんなことを考えてみるのも一興だろう。
「死」を見つめることで「生」を考えさせる作品でありながら、このうえなく切ないラブストーリーでもある。ラスト3分のイーノック。彼の表情を見ていたら涙が止まらなかった。説明的になりそうな一歩手前で引く演出の鮮やかさが、生の息吹を引き立てる。イーノックがアナベルにもらった一番のプレゼントは「生きる喜び」だったに違いない。

お気に入り点数:90点/100点満点中

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