山口拓朗オフィシャルサイト 「聞く」「書く」のプロ

山口拓朗オフィシャルサイト 「聞く」「書く」のプロ >

新 着 情 報

Page :

映画批評「永遠の僕たち」

2012.1.17 映画批評

movie.eiennno.jpg


公開中の「永遠の僕たち」。


監督:ガス・ヴァン・サント 脚本:ジェイソン・リュウ 出演:ヘンリー・ホッパー、ミア・ワシコウスカ、加瀬亮、シュイラー・フィスク、ジェーン・アダムス、ルシア・ストラス、チン・ハンほか 上映時間:90分 配給:2011年米/ソニーピクチャーズ


上映時間はわずか90分、5600秒。『ミルク』(2008年)のガス・ヴァン・サント監督は、この限られた時間に「生きること、愛することの尊さ」を密閉した。ぜい肉のない必要最低限の描写で、「死」というテーマと対峙した、世にも美しいラブストーリーだ。風変わりな脚本も、瑞々しい映像や繊細な音楽も、すべてがこの美しいパズルを完成させるために不可欠なピースである。 


交通事故で両親を失った少年イーノック(ヘンリー・ホッパー)は、高校を中退後、怠惰な日常を送っていた。彼の唯一の友人は、彼にしか見えない日本人特攻隊員の幽霊ヒロシ(加瀬亮)だけ。アカの他人の葬式に潜入する趣味があるイーノックは、ある葬式で少女アナベル(ミア・ワシコウスカ)と出会う。彼女は癌で闘病中だったが、ある日の検査で癌が再発していることが発覚し……。


続きを読む

映画批評「マネーボール」

2012.1.7 映画批評

movie.money_ball.jpg

公開中の「マネーボール」。


監督:ベネット・ミラー 原作:マイケル・ルイス 脚本:アーロン・ソーキン 、スティーヴン・ゼイリアン 出演:ブラッド・ピット、ジョナ・ヒル、ロビン・ライト、フィリップ・シーモア・ホフマン、クリス・プラット、ケリス・ドーシーほか 上映時間:133分 配給:2011年米/ソニー・ピクチャーズ


少しの疑いも持たないまま、常識、ルール、モラル、セオリー、既製のシステムなどを“最善”“最良”のものとして受け入れることに警鐘を鳴らした映画――それが『マネーボール』である。 


元メジャーリーガーのビリー・ビーン(ブラッド・ピット)は、アスレチックスのGM(ゼネラルマ・ネージャー)に就任する。チームは優秀な選手を雇うことのできない貧乏球団で、とてもワールドシリーズ優勝を狙える状態にない。ビリーは、データ分析能力に優れたピーター・ブランド(ジョナ・ヒル)をパートナーに指名し、野球というゲームと選手の評価基準を一から見直した。ところが、選手の獲得法や試合での起用法を巡って、球団スタッフや監督と対立することになり……。


続きを読む

映画批評「ツレがうつになりまして。」

2011.12.31 映画批評

movie.tsureutsu.jpg

公開中の「ツレがうつになりまして。」。


監督:佐々部清 原作:細川貂々 脚本:青島武 出演:宮崎あおい、堺雅人、吹越満、津田寛治、犬塚弘、梅沢富美男、大杉漣、余貴美子ほか 上映時間:126分 配給:2011年日本/東映


かつて花粉症がじわじわと国民病として台頭してきたように、近い将来、うつ病もまた国民病になってしまうのか? 


そんな推測すら「当たらずといえども遠からず」な気配が漂う今日このごろ、細川貂々のベストセラーコミック原作の映画『ツレがうつになりまして。』は、多くの人が漠然としか把握していない「うつ病」について、正しい情報を伝えるという啓蒙的役割を果たしている。


高崎晴子(宮崎あおい)は、まじめで完璧主義の夫のツレ(堺雅人)、そしてイグアナのイグと暮らしている。ある日、体調を崩したツレが病院でうつ病(心因性うつ病)の診断を受ける。ツレの変化にまったく気付かなかった晴子は、妻としての至らなさを反省する一方で、うつ病の原因が会社でのストレスにあったことからツレに退職を迫る。会社を辞めたツレは少しずつ体調を回復させているように見えたが……。


続きを読む

仕事を“もっと”呼び込むプロフィール作成セミナー 名古屋(11/19)、大阪(11/20)

2011.9.10.JPG

ソーシャルメディアをビジネス活用されている方にとって、自分のプロフィールというのは、おそらく皆さんが思っている以上に重要です。


なぜなら、インターネット上でモノやサービスを買うときに、お客さんは、売り手が「何者か」を購入の基準にするからです。


その売り手に「専門性はあるのか?」「実績は?」「信頼性は?」と考えるのはもちろんのこと、ときに「人柄は?」「ビジョンは?」「生き方は?」ということまで基準に含めるケースもあります。


続きを読む

映画批評「はやぶさ/HAYABUSA」

2011.9.29 映画批評

moovie.hayabusa.jpg

10月1日より公開される「はやぶさ/HAYABUSA」。


監督:堤幸彦 プロデューサー:井上潔 、宮崎大 、市山竜次 脚本:奥平綾子 、井上潔 協力:JAXA(宇宙航空研究開発機構) 出演:竹内結子、西田敏行、高嶋政宏、佐野史郎、山本耕史、鶴見辰吾、筧利夫、市川実和子、甲本雅裕、マギーほか 上映時間:140分 配給:2011年日本/20世紀フォックス映画


2010年6月、絶体絶命の危機を脱して帰還を果たした小惑星探査機<はやぶさ>。もしもこの探査機が完璧にミッションをこなして予定通りに帰還していたなら、あるいは日本列島を熱狂の渦で巻き込むほどの話題にはならなかったのかもしれない。


逆を言えば、<はやぶさ>の前に立ちはだかった障害――小惑星への不時着、交信途絶、燃料漏れ、イオンエンジンの停止など――があまりに大きく致命的だったといえよう。だから、彼(!)の帰還は“奇跡”と呼ばれ、人々に感動を与えたのだ。


本作のクランクイン前に、東日本大震災が起きたのはもちろん想定外だが、幾多の苦難を乗り越えた<はやぶさ>の実話に基づいた映画『はやぶさ/HAYABUSA』が、今このタイミングで公開されるのは、偶然の顔をした必然のように思えてならない。


奇跡の帰還を支えたプロジェクトスタッフの志と信念、そして飽くなき探究心に目を付けたのは、本作の発案者でもある井上潔プロデューサーの隻眼といえるだろう。井上プロデューサーは監督に『20世紀少年』シリーズの堤幸彦を招聘、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の全面協力、さらにはハリウッドのメジャースタジオ「20世紀フォックス」を巻き込んでの撮影をスタートさせた。


続きを読む

映画批評「コクリコ坂から」

2011.9.3 映画批評

kokuriko.jpg

公開中の「コクリコ坂から」。


監督:宮崎吾朗 企画:宮崎駿 プロデューサー:鈴木敏夫 脚本:宮崎駿、丹羽圭子 主題曲・主題歌:手嶌葵 声の出演:長澤まさみ、岡田准一、竹下景子、石田ゆり子、風吹ジュン、内藤剛志、風間俊介、大森南朋、香川照之、柊瑠美ほか 上映時間:91分 配給:2011年日本/東宝


スリル、驚き、爽快感、癒し、学び、悲しみ、喜び……。映画から与えられるものは作品ごとに異なる。


スタジオジブリの最新作『コクリコ坂から』から与えられたものは、ノスタルジー、つまり、郷愁である。


東京オリンピックを目前に控えた1963年の横浜。高校に通う海(うみ)は、毎朝、今は亡き父のために、港が見える丘の上にあるコクリコ荘から旗を揚げていた。研究者の母は海外出張中で、海は、下宿人を含め6人の面倒を見ている。


一方、同じ高校の新聞部に在籍する俊は、明治時代に建てられた由緒ある部室棟――通称「カルチェラタン」――の取り壊しに反対し、抗議活動を続けていた。ふたりは心惹かれ合うが、やがてお互いの出生の秘密を知ることになり……。


続きを読む

映画批評「BIUTIFUL ビューティフル」

2011.8.21 映画批評

movie.BIUTIFUL.jpg

公開中の「BIUTIFUL ビューティフル」。


監督・原案:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 脚本:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、アルマンド・ボー、ニコラス・ヒアコボーネ 出演:ハビエル・バルデム、マリセル・アルバレス、ハナ・ボウチャイブ、ギレルモ・エストレラ、エドゥアルド・フェルナンデス、ディアリァトゥ・ダフほか 上映時間:148分 配給:2010年スペイン・メキシコ/ファントム・フィルム


負の連鎖を描いた群像作品『バベル』の名匠アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督と、アカデミー賞に輝いた『ノーカントリー』で映画史上屈指の悪役シガーを演じたハビエル・バルデムがタッグを組んだ作品につき、少なからず期待(いい意味で、覚悟)をしていたが、結果は、いいほうに裏切られた。「少なからず」という気弱なエクスキューズなど付けずに、「大いに」期待しておけばよかったのだ。おかげで「覚悟」が足りず、ヒドい目にあった。エンドロールが消えてからも、しばらく席を立てないではないか。


続きを読む

映画批評「ミスター・ノーバディ」

2011.6.29 映画批評

moovie.mr.nobody.jpg

公開中の「ミスター・ノーバディ」。


監督:ジャコ・ヴァン・ドルマル エグゼクティブプロデューサー:ジャン=イヴ・アスラン 出演:ジジャレッド・レト、サラ・ポーリー、ダイアン・クルーガー、リン・ダン・ファン、ダニエル・メイズほか 上映時間:137分 配給:2009仏・独・カナダ・ベルギー/アステア


たとえば、あなたに好きな人がいるとする。しかし残念なことに、その人は明日旅立ってしまう。会えるのは今夜が最後。あなたは自分の気持ちを好きな人に伝えることもできるし、伝えずに立ち去ることもできる。


さて、ドウスル?


続きを読む

2011年1〜4月 「映画」プチ批評

2011.5.1


2011年1〜4月の作品を、一気にプチ批評!


「しあわせの雨傘」(フランス)
http://amagasa.gaga.ne.jp/

家族から“置き物”のように扱われていた妻が、雨傘工場の経営者である夫が倒れたのをきっかけに、経営者としての才能を開花させていく……。亭主関白の主人を(結果的に)出し抜いて、華やかな人生へと離陸する熟年女性の決意(開き直り?)が爽快。名女優カトリーヌ・ドヌーブを起用してフランソワ・オゾン監督が紡いだのは、豪華なビジュアルと軽妙洒脱な演出で観客を酔わせる愛すべき人生讃歌だ。ドヌーブとカラフルな傘たちのさり気ない共演は、名作『シェルブールの雨傘』へのオマージュだ。 70点


『僕が結婚を決めたワケ』(アメリカ)
http://www.boku-kekkon.jp/

ヒットメーカー、ロン・ハワード監督の最新作は、友人の妻の浮気を知った主人公が、真実を友人に話すべきか否かで葛藤。そうこうしているうちに、自身の恋人との関係にも疑心暗鬼になっていく……という恋愛コメディ。『僕が結婚を決めたワケ』というタイトルとは裏腹に、ドラマも重心は「恋愛」ではなく「友情」に置かれている。「素直さ」をキーワードに、人間心理の奥深くに切れ込んでいく展開が見事だ。 男優コンビ(ヴィンス・ヴォーン×ケヴィン・ジェームス)のコメディセンスが冴えまくる、笑えて心温まるオススメの1本。 85点


「ヤコブへの手紙」
http://www.alcine-terran.com/tegami/

舞台は1970年代のフィンランド。12年の刑期を終えて出所した女性レイラと、盲目の牧師ヤコブの交流を描いた作品。不信感の塊だったレイラが「赦し」と「愛」を得て、人生を肯定し始める希望の物語だ。登場人物はレイラとヤコブ、それにヤコブに手紙を届ける郵便配達員の3人。こんな小さな作品でも、人の心を打つことができるのかあ、と映画の魅力を再認識させてくれた秀作だ。不可解な行動を取る郵便配達員が、ちょっぴりミステリアスな雰囲気を醸す。 85点


「ハーモニー 心をつなぐ歌」(韓国)
http://www.harmony-movie.com/

実話から生まれた女子刑務所合唱団の物語『ハーモニー』は、「韓国で300人が号泣した」という宣伝文句に偽りなしのエンタテインメント。18ヵ月だけ刑務所で子供だけ暮らす事が許されている母親ジョンヘ(キム・ユンジン)のドラマもさることながら、この映画の“良心”とも言えるある死刑囚の身に待ち受けていた結末も号泣必死。孤独や絶望、罪悪感など、さまざまな感情を抱く受刑者たちが、心をひとつにして奏でる合唱を聴きながら、「この映画はズルすぎる!」と心で抵抗するのが精一杯だった。 70点


「ブローン・アパート」(イギリス)
http://blown-apart.com/

恋人との情事を楽しむその最中、息子と夫が爆破テロに巻き込まれて死亡……。大胆なシチュエーションから母親の罪悪感と喪失感を描こうとしたまではよかったが、テロにまつわる陰謀劇にまで手を広げたことで、テーマが完全にボケてしまった(恋人の取材活動もご都合主義)。主人公の母親を演じたミッシェル・ウィリアムズの美しい裸体も、脚本の失敗を補うには至らなかった。鑑賞後に残るのは、余韻ではなく痛々しさだ。 30点


「幸せの始まりは」(アメリカ)
http://bd-dvd.sonypictures.jp/shiawase-hajimari/

ソフトボールの女子全米代表チームから突然クビを宣告された31歳のリサが、恋という新たなフィールドで人生を模索する恋愛コメディ。リサが心惹かれるのは、人気大リーガーの肉食系マティと、誠実だが投資詐欺の容疑をかけられている草食系ジョージのふたりだが、三者のドラマ展開上の接点が少ないため、くり広げられるシーソーゲームがリアリティに欠ける。本来であれば作品を引き締めるはずのジャック・ニコルソンの存在も空転気味。「選択」や「決断」をテーマにするのであれば、ことさら感情の伏線が張りに力を入れるべきであった。 40点


「恋とニュースのつくり方」
http://www.koi-news.jp/

低視聴率情報番組のプロデューサーに採用されたベッキー(レイチェル・マクアダムス)が、体当たりの企画実現力で視聴率をV字回復させていくハッピームービー。失敗を恐れずに突き進む主人公は頼もしくもあるが、あまりに一本調子に突き進む姿は、少々、いや、相当に痛々しい。反目する大御所キャスターふたり(ハリソンフォード×ダイアン・キートン)の笑えるバトルが、ある意味、いちばんの見どころ。ベテランの活躍に救われた1本だ。 40点


「再生の朝に -ある裁判官の選択-」(中国)
http://www.alcine-terran.com/asa/

刑法改正のタイミングに起きたある窃盗事件の裁判で、被告に死刑判決を下したベテラン裁判官のティエン。彼はひとり娘を事故でなくして絶望の淵に立っていた。事件に関わるさまざまな立場の人たちが思惑を交錯させるななか、ティエンの気持ちに少しずつ変化が生まれる。そして死刑執行当日、彼はある思いもよらない行動に出るーー。失職覚悟の英断は、彼自身が再生を果たすためにも必要不可欠であった。抑制を利かせた演出が、ティエンの振幅する心情をまざまざと浮かび上がらせる。 60点


「アメイジング・グレイス」(イギリス)
http://www.amazing-movie.jp/


奴隷解放運動に生涯を捧げた政治家ウィリアム・ウィルバーフォースの半生に迫った秀作。既得権益を守ろうとする奴隷制擁護派から容赦ないバッシングを受けながらも、奴隷貿易撤廃への意欲を失わず、行動をし続けるウィルバーフォースの不屈の精神が、観る者に大きな感動を与える。彼を支えたのは、志を同じくする妻の存在と、師であるジョン・ニュートンが作詞した名曲『アメイジング・グレイス』であった。重厚な絵作りと英国屈指の俳優たちの名演が光る秀作だ。 85点


「大韓民国1%」(韓国)
http://www.alcine-terran.com/rok/

入隊率わずか1%の<海兵隊特殊捜索隊>に入隊した女性士官イ・ユミの奮闘を描いたエンターテインメント作品。スポ根ドラマにベタなユーモアを交えた演出は、まるで70年代のB級娯楽映画のよう。あろうことか、訓練中に北朝鮮領土に不時着する「トンデモ」な展開で、観客を唖然の極地へと誘ってくれる。主人公と対立するワン・ジョルパン下士(イム・ウォンヒ)が、敵意をむき出しに、次から次へと仕掛けてくる稚拙な妨害作戦が痛々しい。よくもまあ韓国軍隊のイメージダウンにつながらなかったものだ……。 50点


「ランナウェイズ」(アメリカ)
http://www.runaways.jp/

物語のモデルは1970年代に一世を風靡したガールズバンド、ランナウェイズ。彼女たちのデビュー前夜から悲劇的な空中分解までを赤裸々に綴ったビターな青春記だ。衝撃的な悩殺パフォーマンスで時代の寵児となったランナウェイズだが、祭り上げられた虚像の重圧にさらされながら、メンバーたちは迷い、傷つき、葛藤する。クリステン・スチュワートとダコタ・ファニングの全身全霊を捧げた演技が、偏見という荒波を切り裂いて時代を突き進んだランナウェイズの「熱」と重なる。 75点


「ショパン 愛と哀しみの旋律」(ポーランド)
http://www.chopin-movie.com/

繊細な楽曲を世に送り出した“ピアノ詩人”ことショパンの半生を描いた人間ドラマ。女流作家ジョルジュ・サンドとの出会いと別れ、息子との確執、娘との恋沙汰、自身の肺病など、さまざまなドラマが絡む激動の人生は、苦悩や挫折を創作の肥やしとする芸術家の宿命か。しかし、その本質は「放蕩」というよりは「純粋」で、誰よりも弱く傷つきやすい“時代の寵児”の素顔が浮き彫りとなる。急ぎ足の展開は賛否が分かれるところだろうが、世界的な演奏家が担当した音楽は絶品。クラシックファンには喜ばれるだろう。 60点


「台北の朝、僕は恋をする」(台湾)
http://aurevoirtaipei.jp/

名物の夜市やコンビニ、公園、地下鉄……等々、古きと新しきとが混在する台湾の街を舞台にした本作は、知り合って間もない若い男女が、さまざまな危険&トラブルを乗り越えながら、お互いの距離を少しずつ縮めていくコミカルなラブストーリー。生活感や活気、それに色と光にあふれる台湾の街並が存分に味わえる点はすばらしいが、ひょんなことからふたりが巻き込まれる裏社会の陰謀劇は、スリルやリアリティが「B級コント劇」のそれ。本格派のラブストーリーを期待すると肩すかしをくらうだろう。 35点


「木洩れ日の家で」(ポーランド)
http://www.pioniwa.com/nowshowing/komorebi.html

ポーランドはワルシャワ郊外の森。人生の大半をすごした木造の古い屋敷で、91歳になるアニェラは、愛犬のフィラデルフィアと静かに暮らしていた。大切な思い出と共に生きる彼女だったが、息子夫婦との確執や自宅の売買問題に直面する……。現実を憂いたアニェラが、人生の引き際に下した決断が静かな感動を誘う。気品漂う詩的なモノクローム映像と撮影当時91歳だった主演ダヌタ・シャフラルスカの人間味あふれる演技に注目だ。 65点


「ゲンスブールと女たち」(フランス、アメリカ)
http://www.gainsbourg-movie.jp/

1991年に急逝した芸術家セルジュ・ゲンスブールの破天荒な生涯に迫った伝記映画。酒とタバコと音楽と自由を何よりも愛し、美男子でないにも関わらず、独特の繊細さとダンディズムで世の美女を渡り歩いた鬼才の伝説的エピソードの数々を、人気のバンドデシネ(フランスのコミック)作家ジョアン・スファールが、色気のあるアーティスティックな映像で甦らせる。シャンソン、ジャズ、フレンチ・ポップ……等々、ゲンスブールが奏でる名曲と共に紡がれる物語は、エレガントにして情熱的。エリック・エルモスニーノの神懸かった演技も見逃せない。 80点


2010年下半期 「映画」未批評作品 後編

2011.4.1

批評し損ねた2010年下半期の作品を、一気にプチ批評!<後編>


「REDLINE」(日本)
http://red-line.jp/index.html

作画枚数10万枚を誇るアニメーション映画『REDLINE』は、独創性に富んだおどろおどろしい手描きの絵と、強烈なインパクトを残す奇想天外な舞台設定が魅力。繊細さと歪みを兼ね備えた手描きならではの映像が、CG映像とは一線を画す武器になっている。難点を上げるなら、主人公の「純愛」を際立たせるサブストーリーが弱かった点。木村拓哉と蒼井優が声優として新境地を開いた。 55点


「nude」(日本)
http://www.alcine-terran.com/nude/l

AV業界の第一線で活躍し続けてきたAV女優みひろが書き下ろした私小説を映画化。平凡な高校生がAV女優になるまでのプロセスを描くなかで、主人公みひろが直面するさまざまな現実的な問題、それに、内に秘めた不安や葛藤、野心などをリアルに描く。主演の渡辺奈緒子が、みひろの複雑な心情を繊細な演技で表現するほか、体当たりのベッドシーンでは美しい裸体も披露。意外に骨太な作品に仕上がった。 70点


「TSUNAMI -ツナミ-」(韓国)
http://www.mega-tsunami.jp/

高さ100m、時速800km/hのメガ津波が、韓国のリゾート地ヘウンデを襲う。ハリウッド式パニック大作の1/10にも満たない製作費ながらも、未曾有の災害にのみ込まれる韓国市民の日常と人間模様を仔細に描くことで、ハリウッドのヒーローものと一線を画す。巨大タンカーが空から降ってくる映像はすさまじいが、作品の主眼は、突如として死の恐怖に直面した人々が体現する、人間としての誇りや自己犠牲の精神(愛)などに置かれている。 55点


「冬の小鳥」(韓国)
http://fuyunokotori.com/

70年代の韓国を舞台にした感動作。大好きな父に捨てられて孤児になった9歳の少女ジニ(キム・セロン)が、現実に抗いながらも、少しずつ運命を受け入れていく物語。情緒豊かな演出で、少女の絶望と再生への軌跡を描く。父の迎えを待ち続けるジニのひたむきさが心を打つ。 65点


「ルイーサ」(アルゼンチン、スペイン)
http://www.action-inc.co.jp/luisa/

突然職場を解雇された還暦女性ルイーサが、盲人になりすまして地下鉄駅構内で小銭を稼ぎ始める……というストーリー。舞台は失業率8%超のアルゼンチン。倫理道徳もどこ吹く風、ホームレスや身体障害者になりすますルイーサは、社会の底辺で、失いかけた誇りを取り戻したうえ、社会や他者との“つながり”も再確認する。社会の厳しい現実と強靭な人間の生命力を、ユーモアを交えて描いた秀作だ。 85点


「エクスペンダブルズ」(アメリカ)
http://www.expendables.jp/

マッチョで命知らずの傭兵軍団が大活躍する本作は、プロジェクトリーダーのシルベスター・スタローンをはじめ、ジェイソン・ステイサム、ジェット・リー、ブルース・ウィリス、ミッキー・ロークら肉食系のスター俳優10名が勢ぞろいするお祭り筋肉作品(なんとシュワちゃんも登場!)。南米の軍事独裁政権を彼らだけで倒すというB級風のトンデモ展開ながら、彼らの筋肉アクションを見せるには格好の設定。 60点


「瞳の奥の秘密」(スペイン、アルゼンチン)
http://www.hitomi-himitsu.jp/

第82回アカデミー賞最優秀外国語映画賞受賞作品。舞台は独裁軍事政権下のブエノスアイレス。凄惨な殺人事件の謎を追うミステリーにふたつのロマンスを編み込んだ濃厚なドラマは、巧みのカメラワークや芸達者なキャストの好演と相まって、観客を気持ちをグイグイと引き込む。衝撃的な結末は、国家の都合により加害者に対する厳罰の機会を奪われた被害者遺族の「愛憎」を浮かび上がらせる。 90点


「アイルトン・セナ 音速の彼方へ」(イギリス)
http://senna-movie.jp/ 

“音速の貴公子”と呼ばれ、3度のF1王者に輝いたアイルトン・セナの生涯に迫った本作は、バブル期に空前のF1ブームを体験した世代に贈る珠玉の1本! 政治と金がモノを言うF1で葛藤を強いられながらも、レースに対する純粋な心と情熱を持ち続けた最速男の生き様がここに。「かなうなら、何の制約もなく、純粋にレースをしていた頃に戻りたい」と話すセナが印象的。1994年、セナが逝ったイタリア・サンマリノGPの衝撃的な映像が、F1ファンのやりきれない思いを痛切によみがえらせる。 80点


「隠された日記」(フランス、カナダ)
http://www.alcine-terran.com/diary/ 

古い一冊の日記に記された真実を通じて、絡み合っていた祖母、母、娘という3世代の「哀しみ」がほどけていく物語。テーマは女性たちの「愛」と「自立」。結末に用意したショッキングな真実は、女心の複雑さを示すメタファーか、あるいは、観客に「自立とは何か?」を問わせる手土産か。名女優カトリーヌ・ドヌーヴの存在感が際立つ。 65点


「ソフィアの夜明け」(ブルガリア)
http://www.eiganokuni.com/sofia/index2.html

2009年の東京国際映画祭でグランプリを受賞した本作は、ブルガリアを舞台に、格差社会の下層で生きる人間たちの葛藤と憤り、そして愛を描いたヒューマンドラマ。主人公のイツォを熱演したフリスト・フリストフの破天荒な生き方を下敷きに脚本が紡がれた(フリストは撮影終了間際に不慮の事故で他界)。ホロ苦い余韻とわづかな希望を残す叙情的な青春記だ。 70点


「パートナーズ」(日本)
http://partners-movie.com/

子犬のチエが盲導犬へと成長していく過程を背景に、チエに関わる盲導犬訓練士らの人間模様を描く。感動を安売りするステレオタイプな演出には到底賛同できないが、盲導犬とは何ぞや? を知るには適当な教材である。 30点


「リミット」(スペイン)
http://limit.gaga.ne.jp/

棺桶に閉じ込められたまま埋められた男が、唯一の命綱である携帯電話を頼りに、脱出を試みる究極のワンシチュエーションムービー。史上最小空間でドラマを完結させたアイデアは立派。政治的なアイロニーも込められているが、それより何より、見どころは脱出劇だ。あなたなら携帯電話やオイルライターをどう使う? 知らず知らずのうちに観客は絶体絶命のピンチを追体験させられる。 70点


「マチェーテ」(アメリカ)
http://bd-dvd.sonypictures.jp/machete/

鬼才ロバート・ロドリゲスがお見舞いする壮絶アクション作品は、設定もキャラもぶっ飛びまくり。 主演は“恐ろしい顔”の持ち主ダニー・トレホで、ミシェル・ロドリゲス、ジェシカ・アルバ、スティーヴン・セガール、ロバート・デ・ニーロらが脇を固めるというB級映画にはありえない豪華キャスト! このメンツでエロあり、グロあり、何でもありのアクション映画を作るあたりがロバート・ロドリゲスの真骨頂。不法移民問題もチクリ。 65点


「ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人」(アメリカ)
http://www.herbanddorothy.com/jp/

1LDKのアパートに4000点におよぶ現代アート作品をコレクションした老夫婦のライフワークを追ったドキュメンタリー映画。時間があれば作家のアトリエや個展に足を運び、その目で作品を確かめるのがふたりのやり方。他者(評論家や市場価値)の評価に依存しないふたりの鋭い鑑識眼に頭が下がる。芸術の真価について考えさせられる。監督は日本の佐々木芽生。 75点


「信さん 炭坑町のセレナーデ」(日本)
http://shinsan-movies.com/

昭和30年代、九州のとある炭坑町が舞台。炭坑の「繁栄→衰退」という時代の波に翻弄されながら、貧しくも明るく懸命に生きた人々の姿を描いた感動ドラマ。テーマは人間の絆、それに愛と友情だ。取り巻く環境やライフスタイルは異なれど、昭和30年代も今も「人が不安と悩みを抱え」ながらも「幸せを希求する」姿は変わらない。平山秀幸監督作品。 65点


「デイブレイカー」(アーストラリア、アメリカ)
http://www.daybreakers-movie.jp/

主演はイーサン・ホーク。圧倒的大多数のヴァンパイアが絶滅危惧種である人間たちを支配するという特異な世界を描いたSFスリラー。駅の売店で人血をブレンドしたコーヒーが売られるなど倒錯した世界を描いた序盤は、傑作の予感さえさせる出来映え。人間を食料としか見ないヴァンパイアたちの横暴さを通じて、人類のおごりを皮肉るあたりの批判精神も鋭い。ところが、中盤以降、展開もアクションも乱暴になってしまった。残念。 70点


「ベストセラー」(韓国)
http://enet-dvd.com/enet/sp/bestseller/

盗作疑惑をかけられたベストセラー作家が、人里離れた山奥の不気味な別荘で、奇妙な体験をしながら完成させた新作。が、再起をかけたこの作品に再び盗作疑惑をかけらて……という物語。22年前のある事件に端を発するミステリーの「タネ」は凡庸と言わざるを得ないが、スランプに陥る病的な女流作家に扮したオム・ジョンファの怪演が見逃せない。 30点


「エクスペリメント」(アメリカ)
http://www.experimentmovie.com/

70年代にスタンフォード大学で行われた心理実験を下敷きにした監獄実験スリラー。極端なシチュエーションに被験者たちを押し込めることによって、理性の奥に潜む人間の欲望や残虐性、それに、支配されてきた人間が支配する側に回る“支配の連鎖”をあぶり出す。エイドリアン・ブロディやフォレスト・ウィティカーを器用することで安定感は増したが、同じ心理実験をモデルにした2002年公開の『es[エス]』の二番煎じの印象は拭いきれていない。 60点


「ソーシャル・ネットワーク」(アメリカ)
http://www.socialnetwork-movie.jp/

天才デヴィッド・フィンチャー監督の最新作は、現代的なテーマに正面から挑みつつ、人間誰もがもつ「光と影(多面性)」をほぼ完璧に活写。知的で繊細で大胆で心躍る、映画的興奮が得られる傑作ヒューマンドラマだ。主人公のマーク・ザッカーバーグは世界最大のSNS「Facebook」の創始者。奇人めいた彼の内面を描きすぎないことにより、観客のあらゆる解釈の余地を残している。 95点


「デザートフラワー」(ドイツ、オーストリア、フランス)
http://www.espace-sarou.co.jp/desert/

世界的な黒人トップモデル、ワリス・ディリーの自伝本を映画化。ソマリアの貧しい遊牧民家庭に生まれたワリスの生命力あふれるシンデレラストーリーであると同時に、「女性割礼」の残酷さと危険性を告発する骨太な社会派作品でもある。彼女が3歳のときに受けたという割礼のシーンでは、思わず目を覆わずにはいられない。 90点


「きみがくれた未来」(アメリカ)
http://kimi-mirai.jp/

弟を亡くした兄が、新たに芽生えた愛を通じて、弟の幻影に別れを告げる成長の物語。非現実的な設定はいいとしても、底の浅いテーマとテンポの悪さが気になる。主演は「ハイスクール・ミュージカル」で一躍ブレイクしたザック・エフロン。深い哀しみと喪失感に満ちた難しい役どころをこなし、アイドルから本格俳優へと脱皮した。


「シュレック フォーエバー」(アメリカ)
http://www.shrek-forever.jp/

パラレルワールドを盛り込むことで、人気シリーズの続編にありがちなマンネリ気分を回避。それどころか、一から信頼や愛を勝ち取る難しさを通じて、主人公に日々のありがたさを痛感させる「気づき」の物語は、新味たっぷりで見ごたえ十分。シリーズのファンであれば、本作でしか拝むことのできない各キャラの変貌ぶりが楽しめるはずだ。 70点


「君を想って海をゆく」(フランス)
http://www.welcome-movie.jp/

クルド人難民の少年ビラルと水泳コーチのシモンの絆を描いた物語。イギリスで暮らす彼女への純愛を貫くビラルは、ドーバー海峡を泳いで渡って英国本土に上陸することを画策していた。一途なビラルに対するシモンの感情が、しだいに「打算」から「父性的」なものへと変化していくあたりが見どころ。理不尽で不寛容な移民問題に対する告発も兼ねた秀作だ。 70点


「Asahi Weekly」

2011.3.20

asahi.jpg

asahi1.JPG

週刊英和新聞「Asahi Weekly」で連載していました新作映画コラム「試写室より」ですが、2011年3月11日に起きた東日本大震災の影響にて、紙面の減ページが決定。現在、無期限休載中です。


【2011年】
1月16日号:「きみがくれた未来」
1月30日号:「僕が結婚を決めたワケ」
2月13日号:「幸せの始まりは」
2月27日号:「ショパン 愛と哀しみの旋律」
3月13日号:「ランナウェイズ」


【2010年】
1月17日号:「オーシャンズ」
1月31日号:「抱擁のかけら」
2月14日号:「ルドandクルシ」
2月28日号:「バッド・ルーテナント」
3月14日号:「時をかける少女」
3月28日号:「やさしい嘘と贈り物」
4月11日号:「月に囚われた男」
4月25日号:「運命のボタン」
5月16日号:「書道ガールズ!! わたしたちの甲子園」
5月30日号:「あの夏の子供たち」
6月13日号:「アイアンマン2」
6月27日号:「ガールフレンド・エクスペリエンス」
7月11日号:「シュアリー・サムデイ」
7月25日号:「小さな命が呼ぶとき」
8月8日号:「ようこそ、アムステルダム国立美術館へ」
8月29日号:「瞳の奥の秘密」
9月12日号:「TSUNAMI -ツナミ-」
9月26日号:「アイルトン・セナ 音速の彼方へ」
10月10日号:「ルイーサ」
10月24日号:「パートナーズ」
11月7日号:「ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人」
11月21日号:「デイブレイカー」
12月5日号:「エクスペリメント」
12月19日号:「デザート・フラワー」


【2009年】
12月27日号:「誰がため」
12月13日号:「アサルトガールズ」
11月22日号:「2012」
11月8日号:「脳内ニューヨーク」
10月25日号:「PUSH 光と闇の能力者」
10月11日号:「キッチン 〜3人のレシピ〜」
9月27日号:「空気人形」
9月13日号:「ドゥームズデイ」
8月30日号:「クリーン」
8月9-16日号:「ぼくとママの黄色い自転車」
7月26日号:「コネクテッド」


続きを読む

2010年下半期 「映画」未批評作品 前編

2011.1.5


批評し損ねた2010年下半期の作品を、一気にプチ批評!<前編>


「小さな命が呼ぶとき」(アメリカ)
http://bd-dvd.sonypictures.jp/papa-okusuri/

ブレンダン・フレイザーとハリソン・フォードが競演。難病の子供を救うために製薬会社まで起こした父親の実話を映画化。軸は家族愛と治療薬開発の裏舞台。官僚的な製薬会社の社員たちとエキセントリックな天才科学者の対比が興味深い。題材は真剣だが、演出は娯楽性を重視。社会派風を装ったエンターテインメント作だ。 45点


「ビューティフル アイランズ」(日本)
http://www.beautiful-i.tv/

南太平洋に浮かぶ小さな島国ツバル、海上都市ベネチア、アラスカ最西端のシシマレフ島という3つの島の日常を切り取りながら、環境破壊(温暖化)の実態を浮き彫りにした独創的なアプローチのドキュメンタリー映画。気候も文化も異なる3つの島で生きる人々の暮らしぶりにも注目だ。監督は日本人、海南友子。 60点


「シュアリー・サムデイ」(日本)
http://www.surely-someday.jp/index_pc.html

今をときめく若手俳優、小栗旬の初監督作品。荒唐無稽で荒削りで破天荒でご都合主義な青春映画。だけどやたらと「熱」だけはある。この「熱」こそが小栗旬の才能であり、可能性なのだろう。同時代の閉塞感を振り払うエネルギッシュで明快なメッセージは、小栗世代には突き刺さるのかもしれない。 35点


「告白」(日本)
http://kokuhaku-shimasu.jp/index.html

湊かなえの原作、中島哲也監督、松たか子主演。2010年度邦画No.1作品だろう。いや10年に1度の映画かもしれない。シュールで挑発的な映像と音楽を織り交ぜながら、現代の日本社会に巣食うジレンマ著しい難問に切れ込む。極端なストーリー展開がまったく気にならないのは、心情がリアルに描かれているから。 90点


「ようこそ、アムステルダム国立美術館へ」(オランダ)
http://ams-museum.com/

美術館改装工事を巡る人々の不毛な丁々発止、百家争鳴を追ったドキュメンタリー。館長や学芸員、建築家、市民団体らの主張と思惑が妥協点を見つけられぬままプロジェクトは大難航を強いられる。オランダ人の貪欲な民主主義精神は買うが、暗礁に乗り上げっぱなしの議論は滑稽そのもの。 65点


「グッドモーニングプレジデント」(韓国)
http://www.goodmorning-p.com/

『トンマッコルへようこそ』の脚本を手がけた奇才チャン・ジン監督&脚本作品。「公人」と「私人」の両面から3人の大統領の人間味あふれる素顔に迫った名作。風刺ありユーモアありのチャン・ジン節は、本作でも切れ味十分。愛すべき3人の大統領の一挙手一投足がほほ笑ましい。 80点


「パラレルライフ」(韓国)
http://www.parallel-life.jp/

クォン・ホヨン監督、チ・ジニ主演。<2人の人間が同じ運命をくり返す>=パラレルライフをテーマにしたミステリースリラー。入り組んだ展開と運命に翻弄される主人公に注目。一転二転三転の展開は緻密でスピード感にあふれるが、映画構造の「虚」に頼りすぎている観もある。 40点


「ヒックとドラゴン」(アメリカ)
http://www.hic-dragon.jp//

ドリーム・ワークスアニメーションのファンタジー大作。単なる気弱な少年の成長物語ではなく、少年の本質的な魅力に大人たちが気づいていくという側面をもつ物語。 不安と怯えを克服することから、真の交流がスタートする。その直球のメッセージは子供たちの心に響くだろう。ドラゴンの疾風のごとき飛翔スピードが痛快だ。 70点


「シルビアのいる街で」(スペイン、フランス)
http://www.eiganokuni.com/sylvia/index2.html

ホセ・ルイス・ゲリン監督。主人公の青年の主観的な視点と、彼を追う客観的な視点を通じて、風情漂うストラスブールの人と街を活写。光と音にあふれる美しいコラージュのような作品。“オブセッション”の恋をモチーフに、「音」と「視線」に重要な役割を担わせた斬新な手法に脱帽。 75点


「借りぐらしのアリエッティ」 (日本)
http://www.karigurashi.jp/index.html

スタジオジブリの最新作。外敵に怯えながらも、知恵を使って慎ましやかに暮らす小人家族の物語。魅力的な設定をもつ良作ながら、小人社会の歴史や実状、「絶滅危惧」というテーマの掘り下げが甘いために、心なしか不完全燃焼な印象を与える。近年の宮崎作品に共通する「死の気配」に対する賛否も分かれるだろう。 50点


「インセプション」(アメリカ)
http://wwws.warnerbros.co.jp/inception/dvd/

クリストファー・ローラン監督×レオナルド・ディカプリオ主演。現実と夢の重層世界を舞台にした、集中力を要する、しかしながら解釈のし甲斐のある1本。観客のIQを試すかのようなインテリジェンスなストーリーテリングは文句なしの一級品。『マトリックス』や『バタフライ・エフェクト』あたりの作品が好きな方にオススメ。 90点


「ヤギと男と男と壁と」 (アメリカ、イギリス)
http://www.yagi-otoko.jp/index.html

『実録・アメリカ超能力部隊』原作、ジョージ・クルーニーら豪華俳優陣出演。まじめに超能力開発に打ち込む米軍を小バカにしたおトボケ作品。常識から半音フラットさせたかのような笑いと、軽すぎるストーリー展開に脱力必至。ユーモア精神なき方は、くれぐれも鑑賞されませぬよう。 55点


「ベスト・キッド」(アメリカ)
http://bd-dvd.sonypictures.jp/bestkid/

84年の名作「ベスト・キッド」が北京を舞台にリメイク。弱気主人公が成長して強敵を打ち破る。そんな定番サクセスストーリーはオリジナルを踏襲しているが、随所に中国らしいエッセンスを添加。名子役ジェイデン・スミスの頑張りと、哀愁漂うジャッキー・チェンの存在感で勝負アリ。 65点


「シークレット」(韓国)
http://www.secret-movie.jp/

チャ・スンウォン主演。ある刑事が殺害現場に妻がいた痕跡を発見したことに端を発するミステリー&サスペンス。秘密を隠す妻と証拠を隠す夫の駆け引きと、伏線納得の二転三転が見どころだ……が、近年の韓国映画(サスペンス)の凝りまくった展開には「ついて行くのがひと苦労」という人もいるだろう? 55点


「メッセージ そして、愛が残る」(ドイツ、カナダ、フランス)
http://www.cinemacafe.net/official/message-movie/

死に直面した主人公が死を受け入れるまでの葛藤を描いた物語。ヒネリの利きすぎた展開がやや鼻につくが、「死」や「家族愛」といった普遍的なテーマと向かい合う姿勢は真摯。舞台がアメリカであるにも関わらず、主演のロマン・デュリスほかスタッフの多くがフランス人であるため、ヨーロッパ的な繊細さと湿り気を含んでいる。 40点


映画批評「食べて、祈って、恋をして」

2010.9.27 映画批評

movie.eat.pray.love.jpg

公開中の「食べて、祈って、恋をして」。


監督:ライアン・マーフィー 原作:エリザベス・ギルバート 出演:ジュリア・ロバーツ、ハビエル・バルデム、ジェームズ・フランコ、ビリー・クラダップほか 上映時間:140分 配給:2010米/ソニー・ピクチャーズ


「自分探しの旅」が、ザックを背負って貧乏旅行をする沢木耕太郎の『深夜特急』のイメージだといえば、若い世代に“きょとん”とされるだろうか?


国が異なるからか、時代が異なるからか、はたまた性別のせいかなのか。ハリウッドの大物女優ジュリア・ロバーツを起用して描かれる「自分探しの旅」は、平穏な結婚生活を送り、お金も十分にあるキャリアウーマンが主人公。家族や仕事を投げ出して旅に出る主人公のメンタリティは、なんとも理解に苦しむ。ハタチ前後の小娘でもなかろうに。とはいえ、物質的にも環境的にも満たされている彼女が、説明のつかない「虚しさ」に襲われる心理は、意外に少なくない「満たされない症候群」を病む女性にはピンとくるかもしれない。


続きを読む

映画批評「終着駅 トルストイ最後の旅」

2010.9.14 映画批評

movie.saigo-tabi.jpg

公開中の「終着駅 トルストイ最後の旅」。


監督・脚本:マイケル・ホフマン 原作:ジェイ・パリーニ 撮影:セバスチャン・エドシュミット 美術:パトリツィア・フォン・ブランデンスタイン 音楽:セルゲイ・イェチャンコ 出演:ヘレン・ミレン、クリストファー・プラマー、ジェームズ・マカヴォイ、ポール・ジアマッティ、アンヌ=マリー・ダフ、ケリー・コンドン、ジョン・セッションズ、パトリック・ケネディほか 上映時間:112分 配給2009独、露/ソニー・ピクチャーズ


スターやヒーローは、遠くの人には愛されるが、近くの人には恨まれる。よく耳にする話だ。肥大化しながら世の中を一人歩きする自分の虚像と、現実の自分(実像)とのギャップが生み出す皮肉のようなものである。


「愛」「非暴力」「道徳」を唱える理想主義者のトルストイ。冨も名声も手に入れたこの歴史的文豪の妻が、「世界三大悪妻(※)」のひとりだというのだから、神様も相当に高みの見物がお好きなようである。


続きを読む

映画批評「東京島」

2010.8.30 映画批評

movie.toukyojima.jpg

公開中の「東京島」。


監督:篠崎誠 原作:桐野夏生 脚本:相沢友子 撮影:芦澤明子 美術:金勝浩一 音楽:大友良英 出演:木村多江、窪塚洋介、福士誠治、柄本佑、木村了、染谷将太、鶴見辰吾、山口龍人、南好洋、結城貴史、清水優、阿部亮平、テイ龍進、趙民和、サヘル・ローズ、大貫杏里ほか 上映時間:129分 配給:2010日/ギャガ


簡単に筋を説明すると、無人島に漂着した22人の男と1人の女。さてこのあとどうなるでしょう? という映画である。「22人VS.1人」という確信犯的な設定からも察しがつく通り、ドラマのキーマンは、紅一点の主人公、清子(木村多江)である。もし桐野夏生の原作を未読の方であれば、鑑賞前に、彼女がこの過酷な状況下でどのように生き抜くのか、予測してみるといいかもしれない(ただしその場合、この批評は読まないほうが賢明です)。


続きを読む

映画批評「ザ・コーヴ」

2010.8.12 映画批評

movie.cove.jpg

公開中の「ザ・コーヴ」


監督:ルイ・シホヨス 製作総指揮:ジム・クラーク 製作:フィッシャー・スティーヴンス、ポーラ・デュプレ・ペスマン 脚本:マーク・モンロー 音楽:J・ラルフ 出演:ルイ・シホヨス、リック・オバリー、サイモン・ハッチンズ、チャールズ・ハンブルトン、ジョー・チズルム、マンディ=レイ・クルークシャンク、カーク・クラック、C.スコット・ベイカーほか 上映時間:91分/PG-12 配給:2009米/アンプラグド


アカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞し、日本では上映中止問題で話題となった「ザ・コーヴ」。和歌山県太地町のイルカ漁に反対するクルーが撮影したドキュメンタリーだ。


続きを読む

映画批評「トイ・ストーリー3」

2010.7.28 映画批評

movie.toy3.jpg

公開中の「トイ・ストーリー3」。


監督:リー・アンクリッチ 製作総指揮:ジョン・ラセター 製作:ダーラ・K・アンダーソン 脚本:マイケル・アーント 美術:ダイスケ・“ダイス”・ツツミ 音楽:ランディ・ニューマン 声優:トム・ハンクス、ティム・アレン、ジョーン・キューザック、ネッド・ビーティ、ドン・リックルスほか 日本語吹き替え版声優:唐沢寿明、所ジョージ、日下由美、勝部演之、辻萬長ほか 上映時間:109分 配給:2010米/ウォルト ディズニー スタジオ


おもちゃにとびきり魅力的な個性を与え、彼らの日常(人間の目が行き届かない時間帯)をユーモアたっぷりに描くピクサー製作の「トイ・ストーリー」(第1作は1995年/第2作は1999年)。そんな人気アニメシリーズが11年ぶりに送り出した第3弾は、持ち主アンディとおもちゃ、双方向の「卒業」を描いた物語だ。


続きを読む

映画批評「レポゼッション・メン」

2010.7.14 映画批評

movie.repo.jpg

公開中の「レポゼッション・メン」


監督・ミゲル・サポクニック 原作:エリック・ガルシア 脚本:エリック・ガルシア、ギャレット・ラーナー 撮影:エンリケ・シャディアック 美術:デヴィッド・サンドファー 音楽:マルコ・ベルトラミ 出演:ジュード・ロウ、フォレスト・ウィテカー、リーブ・シュレイバー、アリシー・ブラガ、カリス・ファン・ハウテンほか 上映時間:111分 配給:2009米/東宝東和


舞台は近未来のニューヨーク。世の中には人工臓器が普及し、誰もが「お金さえ払えば」人工臓器を装着することができる。心臓や腎臓、肝臓あたりまでかと思えば、人工臓器メーカーのユニオン社は、眼球や鼓膜、膀胱、関節までラインアップしている。なかには、体のありとあらゆる臓器を人工臓器に替えている強者も。それほど高度な医療技術をもつ医師がどれだけいるのか? 臓器移植による拒絶反応はないのか? そんな疑問に答える気などさらさらなく、映画は人工臓器ビジネスがスタンダード化した世界を描く。


続きを読む

映画批評「ガールフレンド・エクスペリエンス」

2010.7.6 映画批評

movie.girlfriend.jpg

公開中の「ガールフレンド・エクスペリエンス」。


監督・撮影:スティーヴン・ソダーバーグ 製作総指揮:マーク・キューバン、トッド・ワグナー 脚本:ブライアン・コッペルマン、デヴィッド・レヴィーン 音楽:ロス・ゴッドフリー 出演:サーシャ・グレイ、クリス・サントス、マーク・ジェイコブスンほか 上映時間:77分 配給:2009米/東北新社


「セックスと嘘とビデオテープ」(1989年)、「トラフィック」(2000年)、「オーシャンズ11」(2001年)シリーズ、「インフォーマント!」(2009年)などでおなじみのスティーヴン・ソダーバーグ監督が、主演に人気No.1ポルノ女優サーシャ・グレイを大抜擢した本作「ガールフレンド・エクスペリエンス」は、顧客に「恋人のようなひととき」を提供する高級エスコート嬢の日常を描いた物語だ。


続きを読む

2010年上半期 「映画」未批評作品

2010.7.4


批評し損ねた2010年上半期の作品を、一気にプチ批評!


続きを読む
Page :
 キーワードや文字列で当サイトを検索できます。
山口拓朗プロフィール
お問合わせ


山口拓朗/実績
ブログ書いてます
Twitterやってます
facebookやってます
「映画ジャッジ!」に寄稿中
「映画ジャッジ!」
Yahoo!カテゴリ 「映画評論家」
yahoo.logo.gif
映画批評
■映画批評(鑑賞順)
■映画批評・インデックス
■銀幕をさまよう名言集!
執筆アーカイブ
■執筆履歴
お仕事依頼
■「売れる」プロフィール作成
拙書情報
■イチジャイ本
■男の座右の銘
■メディアで紹介されました
リンク
リンク
サイト情報
相互リンクについて
管理者ページ
プライバシーポリシー
SPECIAL(妻のブログ)
momo-blog.jpg





RSS FEEDRSS FEED  記事一覧記事一覧  TOPPAGEサイトの最初のページへ  TOPページの先頭へ 
Movable Type(MT)無料テンプレートでクールでかっこいいWEB Copyright(C) 2002-2012山口拓朗オフィシャルサイト 「聞く」「書く」のプロ Allrights reserved.


ANAカード 賃貸マンション