山口拓朗公式サイト

No.14「戦場のピアニスト」

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 銀幕をさまよう名言集!  No.14  2008. 3.18発行 
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2002年/フランス・ドイツ・ポーランド・イギリス
「戦場のピアニスト」より
ナチス占領下のポーランドで生き抜いた、
実在のユダヤ人ピアニストをモデルにしたドラマ。
ロマン・ポランスキー監督の意欲作だ。
舞台は第二次世界大戦中のポーランド。
ドイツ軍の侵攻により街は占拠され、
ユダヤ人はゲットー(ユダヤ人居住区)へ強制移住させられる。
強制移住させられるだけならまだしも、
ナチスによる無差別な虐殺はヒートアップする一方。
とりわけ整列させたユダヤ人のなかから、
ランダムに人間を選び、
その頭を銃で打ち抜いていくシーンには、
戦慄以外の感想を何も持ち得ない。
ある冬の夜、
ひとりのナチス兵が、突然ユダヤ人を片っ端から殴り始めた。
そのナチス兵は、こう言った——
      規則を教えてやる、このブタどもめ。
      なぜお前らを殴るか分かるか?
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      大みそかを祝うためさ!                  
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この言葉は、ナチスによる虐待のすべてを表している。
つまり、狂気の沙汰である。
大みそかを祝うために、人を殴り、殺すのだ、彼らは。
せめて、
      憎いからさ! 
とでも言えばいいではないか。
それなら理由として成り立つ。
それを
      大みそかを祝うためさ!  
とは、何ごとだ。
それとも、虐殺者にとって、人を殺すということは、
ゲームみたいなものなのだろうか?
戦争というのは、それぞれが正義を主張して起こるものだから、
人を殺す側のロジックとしては、
“悪を成敗する”、ということになるのかもしれない。
ただ、だとしても、無抵抗な民間人に対して、
ここまで無慈悲かつ冷酷非道な言動、ふるまいがとれるものだろうか、と思う。
      なぜお前らを殴るか分かるか?
      大みそかを祝うためさ!
生命への尊厳を微塵も感じさせない言葉だ。
こんな言葉を聞かされながらなぶり殺されるくらいなら、
無言で背後から頭をぶち抜かれたほうがまだマシだろう。
まさしく、狂気の沙汰。
だけど、戦争という魔物に食われると、
ダレもが、その狂気に陥る可能性を秘めている。
それは私たち日本人とて例外ではない。
戦争は正義の基準をガラリと変えるから。
だから、戦争をしてはいけないのだろう。
身内(味方)が殺されると、
ダレもが常軌を逸してしまうから。
そう歴史は教えてくれている。
「戦場のピアニスト」という映画も、また。
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●編集後記             
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ロマン・ポランスキー監督の母は、
アウシュビッツでナチスに虐殺され、
ポランスキー監督自身も
「ユダヤ人狩り」から逃れるため各地を転々としたといいます。
その経験が、「戦場のピアニスト」という作品には
色濃く表れています。
同じ人間として、ただただ魂がふるわされ、
感動などという言葉ではとても言い表せない、
特別な感慨を抱かせられる映画です。
絶望と希望、そして人間の弱さと強さ。
そんなコントラストを鮮烈な映像と、
抑制をきかせた演出で見せていきます。
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■銀幕をさまよう名言集! No.14「戦場のピアニスト」
マガジンID:0000255028
発行者  :山口拓朗
●公式サイト「フリーライター・山口拓朗の音吐朗々NOTE」
http://yamaguchi-takuro.com/
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